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第37話 気まぐれ勇者

 洞窟での騒動も終わり、やっと一息つくことが出来た。

 だが、洞窟での騒動は俺達に深い傷跡を残した。

 シュザーの葬式は直ぐに執り行われた。誰もが悲しみ、嘆いた。

 俺は涙は流さなかったものの、彼の勇姿は絶対に忘れないと心に誓った。


 帰る時に俺は無理を言ってユユを連れ帰らせてもらった。

 そして俺はユーさんに泣きついて、ユユに回復魔法をかけてもらった所、奇跡的に目を覚ました。その瞬間が人生最大の喜びだったのかもしれない。いや、もしかしたら初めて喜んだのかもしれない。

 俺はユユを抱きしめ、そして大粒の涙を流した。

「よかった……本当に……よかった……ありがとうユユ……」

 急に抱きしめられてお礼を言われたユユは困惑しながらも徐々に元の調子を取り戻し、喜び始めた。それでこそユユだ。

 今回の被害者は今言った人達だけでなく、もう一人……カナタの心にも深い傷跡を残して行った。

 敵がまさか実の父親だった事実。俺には耐えられないだろう。


 だが、カナタは数日家に引きこもっていたものの、今では──

「何やってるんですか?」

「い、いやぁー。これはこいつが勝手に潜り込んできて!」

「まぁ、知ってますけどね」

「知ってるのかよ! 心臓に悪いこと言うな!」

「あれ? 心臓にわるいって事は後ろめたい事でもあるんですか?」

 ニヤニヤしながら聞いてくるカナタ。

 そして焦る俺。


 今では冗談を言い合える所まで戻った、やっぱりカナタは強い。精神的にも、力量も俺より遥かに強い子だ。

 ウエランさんの願いは当分叶いそうだ。

 だが、魔王の話が耳に入った時には恐ろしい顔になるのを俺は見逃さない。


 カナタは一人暮らしをして居るらしいが、何をして金を稼いでいるのかと聞いたら集会所という所があってそこにやってくる依頼をクリアしたら報酬として金が貰えるらしい。

 そこら辺はゲームみたいだな。

 そして俺はコーズさんに頂いた硬貨で足りてはいるものの、カナタの手伝いとして俺も依頼を受けたりしている。


 ユユは命の危機に直面したと言う話を聞いたバンフーさんが暫く街から出るのを禁止したため、残念がっていたが今は行動してるのは俺とカナタだけだ。

 そして今日も依頼をクリアして帰ってくると……。

「ヒロトさんだ!」

 ヒロトさんという聞きなれない呼び方で呼ばれてしまった。

 そしてキャキャーとまるで俺がアイドルかのように騒ぎ立てる。

 なんなんだ? 一体……。そう思いながら歩いていると急に現れた男により、ぐるぐる巻きにされて拐われてしまった。

 それに気がついたカナタは俺を攫った男を追うが、なかなか追いつけない。


 そして街の中心まで拐われた俺は中心のステージに乱雑に置かれた。

 あれ? なんか嫌な予感がするぞ?

 ステージの周りには既にかなりの人が集まっていた。

 俺はいつぞやのことを思い出していた。

「さぁ! 来ました! この方が新しい精鋭部隊のメンバー。光属性の勇者。サキガヤヒロトだぁぁっ!」

 いつの間にか知らないうちに精鋭部隊に入れられてしまった。

 きっとあのウエランさんの件でだろう。こうなるんだったら自分の手で倒さなきゃ良かった。

 そして俺の縄は解かれて自由に動けるようになった。


 やっとカナタがステージの近くまでやって来た。しかし、流石のかなたでも唖然としていた。

「精鋭部隊に入れた気持ちは?」

 と俺に振ってくる。

 うん。正直言うと……。

「とんだ茶番だなという気持ちでいっぱいです」

 何だこの茶番は。本人の知らないところで重要な事を決めるな!

「おー! とても嬉しいということですね?」

 俺はそんなこと言ってねぇだろ! 耳大丈夫かこのおっさん!

 そして俺の意思関係なしに進行していく。


 カナタに助けを求めるも、ニッコリとした笑顔をしながら親指を立ててきた。

 何も良くねぇよ!

「それではお次は勇者就任式を始めます!」

「へ?」

 そして司会のおっさんはメダルを持ってきた。

 そこには勇者と書かれている。

「それでは新勇者の誕生です!」

 そして俺が唖然としている間にメダルをかけられてしまった。

「それでは一言!」

「勇者は……勇者は…………お断りですぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!」

 俺達の冒険はまだ始まったばかりだ。

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