第343話 師匠6
「魔力というのはいわば精神力のようなものだ。それを消費して魔法は放つ。なので、使用後はかなり疲労感を感じてしまうかもしれない。まぁ、慣れてしまえばなんて言うことないんだが」
俺は話しながら二冊の魔導書を取りだした。
魔導書の表紙にはこの世界の言語で『光』、『闇』と書いてあった。光属性と闇属性は属性を持っていないと発動出来ない魔法だ。
なので、属性を持っているか持っていないかを確かめるには魔法を使わせるのが一番いい。
「とりあえず、なんの属性を持っているかを確認するぞ。じゃあ、まずはひか――」
「バイトくんは土ですよ」
「……え?」
キラさんからバイトの属性を伝えられる。
だけど、まだ魔法を使ったことないんじゃ……だったらどうして分かるんだ?
「私は鑑定の魔法を持っていますから」
そんなものがあるのか……。
となるともしかしてカナタは鑑定の魔法を持っていないのか?
俺の時も持っていればあんなに苦労することは無かっただろうに……俺は一か八かであの時、聖光の波動を撃ったんだけど……。
というか、そんな魔法があるなら早く知りたかったんだけど……。この魔導書を持ってくる手間を返して欲しい。
でも、お陰で一つ一つ魔法を試してみる手間が減った。
とはいえ、バイトの適性は土なのか……土なのだとしたらかなり面倒だ。俺は今でこそアンチグラビティーを使っているが、あれは簡単な魔法だからだ。
土属性は基本的に魔力消費量は多いし、なにより扱いが難しいので、かなり高難易度となっている。
となると基本の魔力消費量の少ない魔法を教えた方がいいのか? いや、でも土属性は一つくらいは覚えさせておきたい。
俺の普段から使っているアンチグラビティーなら魔力消費量もそんなにないし、なにより扱いやすいから大丈夫だろう。
ということで、まずはアンチグラビティーを教えることにする。
「今からとある魔法を教える。見ておいてくれ」
俺はパイプの方向に掌を向けた。
「重力の奇跡『アンチグラビティー』」
そして俺はパイプの寝ている真下に超強力な教えることに設置した。
その瞬間、ドゴーンっ! とものすごい音を立てながらパイプ早寝を突破って遥か上空に飛んで行ってしまった。さすがにこれはやりすぎたかもしれない。
でも、仕返しにこれくらいはいいだろう。普通なら死ぬが、あいつならこれくらいでは死なないだろうしな。
そして数秒後、パイプは降ってきた。ものすごい地響きを鳴らしながら隕石のように元いた位置に落下する。
しかし、床は全くの無傷となっていた。ビックリして外の地面を見てみるとしっかりと抉れていたことから、この床はパイプのように頑丈なのだろうと考え、思考を停止した。
「それにしてもよく寝ているな」
「いや、あれは寝ているんじゃなくて死んでいるんじゃ」
いや、あれは確実に生きている。なにせ、呼吸をしているのだからな。あいつは体が強すぎてかなりの衝撃を受けても気が付かないようだ。
そこまで行ってしまったらもう病気なような気がするが、気にしてはダメだろうか。
「まぁ、それはさておき、今のが土属性の魔法『アンチグラビティー』だ。これは土属性魔法の中では簡単な方なのだが、今のを見て分かるとおりに使えればかなり強い魔法でもある」
「あんなの生き残れるのはパイプだけなのでは?」
「まぁ、あんなの当たるやつは早々いない」
俺もあんまり当たらないもので、今の使い方は滅多にしていない。使うとしたらグラビティーアーマーだ。
でも、これはマスターしたらかなり使い道が増える魔法なので、使えるようになっていて損はない。
「で、魔法の使い方なのだが、意識を集中させるんだ」
「意識を集中……」
バイトは目を閉じて集中モードに入る。
魔法は集中していないと上手く発動できないこともある。なので、焦って発動しても魔法の発動をなれていないと不発に終わってしまったりとかはよくある事故のようだ。
そのため、まずは集中させるところから徹底させる。
「それから集中を掌に、そして撃ちたい方に集中をする」
この集中は精神力だ。精神力、すなわち魔力を移動させているということだ。
つまり、俺の今の説明を魔力に言い換えると魔力を掌に、そして撃ちたい方向に魔力を放つということだ。
「これでいいのか?」
「あぁ、それでもういいぞ」
果たしてアンチグラビティーは成功しているのだろうか。俺が被験体になって確認するためにその撃ったであろう方向に歩いていく。
アンチグラビティーは誰も見ることの出来ないわなのようなもの。なので、歩いていれば効果を食らうはず。
その瞬間、俺の左足が少しだけ弾き飛ばされたような感覚にあった。これはまさしくアンチグラビティーの効果だ。
「成功だ。あとは出力を上げていけばいいだろう」
「わかった」
そんな俺たちの様子をにこにこしながら見ているキラさん。次に、出力の上げ方を教えようとしたその時だった。
突然、騎士らしき人達が突入をしてきた。
「な、なんだ!?」
どうやら物音でパイプも目が覚めたようだ。
騎士たちはかなりの数で押しかけてきて、一枚の紙を突きつけてきた。
「王様が貴様らのことをお呼びだ。全員来てもらうぞ」
「え、」
『ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ』




