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第334話 小さな剣と思い23

 数十分後、カナタたちが帰ってきた。そのため、昼食を摂ることとなった。


「起きたのね」

「良かった。ユキがいきなり気を失った男を連れて帰ってきた時はびっくりした」

「あはは、すみません」


 この二人はユキのご両親。

 母の方はユキにとても似ていて、父の方はとてもかっこいい。


 そして、ユキはそんな両親と再会できてとても嬉しそうだ。なにせ、もう二度と両親とは会えないと思っていたんだろうからな。

 それにしても、先程の感覚が忘れられなくて、俺はユキの両親の顔をまともに見ることが出来ない。

 あれはもしかしなくとも……キス、だよな。


 あれば俺の意思ではないにしろ、やってしまったことはやってしまったのだ。

 もし、娘とキスをしたという事がバレたらどうなってしまうんだろうか。この今の俺の状況だと、攻撃されたら即死必死だから穏便に解決したいんだが――


「そういえばヒロトくんだっけ?」

「はい! すみません!」

「なんであやまった?」


 しまった。後ろめたい気持ちが膨れ上がって思わず謝ってしまった。


「いえ、なんでもありません」


 そんな俺の様子をジト目で見てくるカナタとスイ。なんだかこの二人には全てを見透かされているようで、怖い。

 もしかしたらさっき、ユキとキスをしたのをバレてしまっているのではないだろうか。そう思ってユキの方を見てみる。

 すると、ユキの頬は少し赤らんでいるものの、様子はいつも通り。本当にあれで最後でいいと思っているのだろうか。


 俺は今までユキとルルの告白、求婚を断ってきた。しかし、ユキのことだけは事情を知ってしまっているし、ユキの優しい心遣いのせいで、はっきりと断ることが出来ない。というか、俺自身がどうしたいのかが全く分からない。

 そのせいでさっきから胸がもやもやしているのだ。


「まぁ、いいか。それよりも、君たちはレオン里長を倒してくれたんだよな」

「はい」


 もしかして、レオンを倒したことによって復讐をされたりとかするのだろうか。そんなことを思ったのだが、そんな考えは杞憂だった。


「ありがとう」

「はい?」

「実は、レオン里長には困っていたのだ。恐怖政治は当たり前、従わなければ殺す。そして、この世界を獣人で支配しようとする。私たちはね、人間が好きだから困っていたのだ」


 そういう事だったのか。

 確かにレオンとは戦っていて横暴すぎるとは思っていた。しかし、そこまでだったとは。

 ということは、この里の中にも反対派の人はいたって言うことか。だが、里長とはこの里で最強を意味している。この里の中で勝てる人はいなかったという事だな。


「ん? そういえばレオンを倒したんですが、そうなると次の里長はどうなるんですか?」

「まぁ、私たちとしては君くらいの実力の持ち主に里長を任せたいくらいなんだ。ユキも君が起きるまでずっと君の話をしていたくらいだしな」

「お、お父さん!」


 俺の話か……どんな話をしていたんだろうか。

 だが、あのユキの様子からして悪い話ではないんだろうと予想が着くのでいいだろう。


「でも、部外者に里長を任せる訳には行かない」


 そうだよな。だって俺はそもそも獣人ではないし、この里の人間でもないから里長にはなれるわけがない。

 となると、里長には誰がなるんだろうか。


 今回、俺らが協力してレオンを討ったわけだからこの里の獣人たちでレオンに勝てた人はいないんだけど……。


「ユキだ」

「「え」」


 ユキは静かに昼食を食べていた手を止めて驚きの表情で固まってしまった。

 俺とユキの声がハモった。もしかしてユキにもこの話をしていなかったのか? ユキが目を白黒させている。


「この里の会議で次の里長はユキがいいだろうと結論が出た。まぁ、調べてみればユキが最後のトドメを刺したようだからな。ユキが一番適切だと判断された」


 ユキが……里長に?

 俺はユキの方を見てみる。すると、ユキも俺の方を見てきていた。何やら俺の反応を見てみるように見えた。

 俺は少し不安だ。ユキの力はそこまで強いわけじゃない。だと言うのに里長なんて重要な役についても大丈夫なのだろうか。


 おそらく里長が最強なのは暗殺なんかをされないようにだろう。だが、ユキにはそんなに力はない。サポートはできてもそこまで自分の事を守ることは出来ないだろう。


「……少し考えさせてください」


 ユキは里長の打診を保留にした。

 確かにこれは今すぐに決められるような簡単な話ではない。もう少しゆっくり考えるべきだ。


 ☆☆☆☆☆


 食後、俺はカナタに呼び出された。

 この家の庭にて呼び出されて二人でベンチに座る。


 対面で座り、カナタの表情を見てみると何やら真剣な表情をしていた。もしかして俺はユキとキスをしたことがバレて愛想をつかされて離婚の申し出をされるのだろうか。

 そうだとしたら俺はもう立ち直れない自信がある。別に浮気をしようと考えていた訳では無い。あれはユキがしてきたことであって……。


 そんな感じで思考をぐるぐるさせていると、そこでカナタが口を開いた。


「ヒロ、ユキちゃんとも結婚してあげなさい」


 カナタの口から出たその言葉は俺にとっては驚きのものだった。

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