第30話 人生で一番めんどくさい
俺達三人はいつもの如く俺の泊まってる部屋にて話をしていた。
「ヒロさんはカッコイイです! なんかこう……大人びた雰囲気があります」
いつもの事だ。いつも隙があれば俺を褒めて褒めて褒めまくるユユ。それを華麗にスルーして紅茶を飲む俺とカナタ。いつもの光景である。
こっちの世界に来ての不安点は飯はちゃんと俺の口に合うかという点もあったんだが、それはもう気にならなくなった。カナタの料理の腕前もあるのかもしれないが美味い! とにかく美味い! よくもまぁスクの実だけであんなバリエーション作れるもんだなと感心してしまうほどだ。
「ヒロさん! はいあーん」
バスケットの中に入ってるお菓子を一つ取り出して食べさせてこようとする。あんまりお菓子でやるのは聞いた事が無いんだけど?
「いやいいよ。俺は自分で食べれるし」
そして俺は一つお菓子を取り出して口に放り込む。
チョコみたいな食べ物のチャストってお菓子だ。
確かに美味しいんだが、如何せん甘ったるい! 砂糖がチョコの数十倍入ってる位の甘さだ。
そして甘ったるいから俺的には連続で食べて美味しいと思えるのは2個までだろう。
甘さ以外はチョコだから惜しいんだよな。もう少し甘さ控えめならチョコだったのにな。
「むぅ……」
頬を膨らませてこっちを睨んでくる。理由は分かっている。あーんに応じなかったのがユユが怒ってる原因だって。
仕方ない……。ずっと睨まれるのも嫌だしな。
「ユユ。食べさせてくれるか?」
そう聞くとパァァっとと笑顔になってバスケットの中からチャストを取り出してきた。
「はいあーん」
「あ、あーん」
そして口を開けるとチャストを食べさせてくれた。
うん。くっそ恥ずかしい。あーんなんて初めてした。まさかこんなにもくっそ恥ずかしいものだとは……。
「お二人さん。今日もお暑いねぇ」
とちょっと強めの口調で言ってくるカナタ。アホ毛が暴れ回っていることからちょっと不機嫌だ。
「なんで不機嫌なんだ?」
「目の前でイチャつきを見せられて気分がいい人なんて居ないと思うけど?」
「おっしゃる通りです」
反論の余地なしだ。
俺はここでイチャついてはない! と言いたかったんだけどあーんは誰がどう見てもイチャつきでしかない。つまり反論できない。
「もう一個どうぞ?」
「あ、あぁ」
こんな感じでどんどん食べさせられて今のも入れて4個食べた時点で俺は胃の中のものを全てリバースした。
常人はこれ5個食べたら……出すよ?
ようやく復活した俺は元の席に座る。
「大丈夫ですか?」
「ああ大丈夫だ」
これからはチャストに気をつけなくては。そんな事を思っていたその時、
『街の皆さんは中央に集まってください!』
アナウンスがかかった。
何の用だ?
「とりあえず行ってみましょうか。今回は面倒くさがらずにヒロさんも」
面倒いんだが……。まぁしょうがない。終わったら部屋で平和な時間を楽しめばい──
「これから洞窟に攻め込む! 戦える者は着いてこい!」
中央につくや否や俺の耳はそんな言葉を聞いた。最悪である。これは強制的なやつじゃないですか!
「ヒロさん行きましょう! ヒロさんのカッコ良さを全ての人々に知らしめてやるんです!」
恥ずかしいからそんな事しないで!? 恥ずかしくて外に出られなくなっちゃう! まぁ、こっちの世界でも滅多に外に出てないけどな。
「ヒロ。諦めてください」
肩にトンとカナタに手を置かれた。
さすが一番長い付き合いなだけある(まだ二週間目くらいだけど)。俺の事を分かってらっしゃるな。
はぁ……ついて行くしか無いのか……。
かつてこれ程までに来なきゃよかったと公開したことは無いレベルだ。
「さぁ! 後に続け!」
とさっきから壇上で喋っていた男は降りて先導し始めた。
それに続いて剣士や魔法使いの皆さんが一斉に着いて行く。
すると急に肩を叩いて呼ばれた。
「よう。お前がサキガヤヒロトだな?」
「そうですが、あなたは?」
「俺はシュザ・レイト。あんたと同じ勇者さ」
って事はこの人は精鋭部隊のシュザーさん?
「あ、初めまして。咲ヶ谷裕斗です。シュザさんの噂は聞いていました」
「おー。嬉しいねぇ。だけど、俺の呼び方はシュザーで良いよ。同じ勇者同士仲良くしようじゃないか。あ、そうだったね君は勇者を拒否したんだったな。それこそ本物の勇者だな。普通は断れない。ハッハッハー」
とても気さくな人だ。しかも俺が断ったってのに一切怒りもせず笑い話に変えてくるあたりプロだ。
「シュザー。行くぞ」
遠くからそんな声が聞こえた。
「仲間に呼ばれたから俺は行くよ。じゃあな」
そう言って走り去っていくシュザー。
「おーい! ヒロ!」
「今行く」
呼ばれたから俺も行かなくちゃな。と人の流れに逆らわずに俺も歩いていく。




