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第28話 好感度は下がりません

 俺はカーテンをバッと開けて外を見る。そこには衝撃的な光景があった。

 街の一部に煙が上がっていて、街が燃えていてどんどんと燃え移っていた。


 そして俺は嫌なものを感じ取った。なんとも言えないどす黒い何かだ。これは?

「凄い悪意のこもった魔力を感じます。ヒロさん、あの火は魔術です」

 聞きなれない言葉が出てきた。魔術?

「魔法じゃなくて?」

「はい。魔術は魔族が使う魔法みたいなものです。魔族は頭も良くて強いので、街の精鋭さん達が一斉にかかってもかなりの痛手を負うでしょう」


 冗談だろ? 俺は結構カラタさん達にはかなりの信頼を寄せてるんだぜ?

「街の精鋭ってどんな人が居るんだ?」

 すると少し上を向きながら指を折りながら一人一人言っていく。

「まずはカラタさんです。本名カイズ・クラタガさん。風属性の魔法剣士です」

 あの人の名前はあれあだ名だったのか。

「次にユーさん。本名ユージック・ロマンさん。木属性の魔法使いです。因みにユーさんまでがあだ名です」

「あれ? シュウじゃ無いのか? カラタさんのライバルだってから次に紹介すると思ってたんだが」

「シュウさん、シュージュ・ウランと言います。あの人はズルい手を平気で使う人なので間違っても堂々と精鋭とは言えないですね」

 あいつそんなやつなのかよ! 俺を攻める資格無いじゃないか!

「そしてジュマイさん。本名ジュキック・マイアーさん。水属性の魔法剣士です。私と違って水を生み出すタイプの魔法使いです」

 ここまでで三人。と言うか皆あだ名つけられてるけどこの街の人はあだ名大好きかよ!

「あと二人、勇者様ですね。一人はこの前のユナ・シューディです。火属性です。もう一人がジュザ・レイトさん。男性の勇者様です。属性は土ですね」

 後の二人はあだ名は無いんだな。

 でも何となくカッコイイ。精鋭って呼ばれ方が結構カッコイイ! でも自分ではなりたくは無い。何かと面倒くさそうだし。

「そいつ等でも結構やばいのか?」

「そうですね……シュザーさんなら一人で勝てるかもしれませんね」

「シュザー?」

「シュザさんのあだ名です」

 訂正。ありました。


「あだ名は名誉なんですよ? ヒロさんにあだ名が付いてるのが珍しいくらい」

 珍しかったんだ!? 俺はてっきりよく付けるのかと思ってた。

 だとしたら俺につけられたのはどうしてなんだ? まぁ、バンフーさんがふざけてつけた線もあるし。

「それよりヒロさん! こういう時こそ勇者様の出番です! さぁ! 行きましょう!」

 そう言われたが、俺は布団を被って寝転がる。


「寝るから勝手にやっといてくれ」

 転生者としてあるまじき言葉であるのは分かってる。だが、俺はわざとそんな言葉をスラスラと吐いていく。

「さすがヒロさんです! こんな時も平常運転なんて! 憧れます! なので私も二度寝を──」

「あんたは着いてきなさい。水属性の魔法を使える人は消火活動。それと、こんな屑の言動は真似しちゃダメ」

 ユユは一体何を目指しているんだ? 俺なんか真似してもいい事なんて一つもないはずなのに……。


「やっぱ俺も行くわ」

 そう言ってベッドから立ち上がる。立ち上がった俺はベッドの横に立てかけてある剣を手に取って背負う。

 カナタに「珍しいですね」と言われたが、これを無視したら平和なんて無くなるじゃねぇか。だから俺は戦う。この事を伝えたら不純な動機ですねと言われた。どこが!? この動機は100%純正の動機だっての!


 そんなやり取りをしながら外に出てみるとそれはそれは酷いことになっていた。

 街全体が燃えているように感じた。真っ先に感じたのは死の恐怖でも無く驚きでもない。落ち着きだった。冷静さであった。今の俺の感情を言葉に出すとしたら「あ、火だ」位の驚きしかない。これには俺も驚いた。驚きを一周して通り越し、冷静さに変わっている。そんな自分の冷静さに恐怖した。

 カナタのほうをみてみると青ざめていた。呼吸も何だか荒いし……。無理してるのだろう。一番辛いのは彼方なんだ。ならそのカナタの頑張りに負けないようにしなくては。


「大丈夫か? 辛いなら休んでいても──」

「私が休んだら他の方々はどうするんですか。私は行きますよ!」

 そしてカナタは空に両手を掲げた。その状態で詠唱を始める。

「雨乞い」

 その瞬間、空から大粒の大量の雨が降ってきた。

 これだけの雨があれば簡単に火は消えるんじゃないか?そう思ったが──。


「嘘……だろ?」

 火の勢いは留まることを知らない。寧ろ火の勢いは雨の力を持ってしても強まるばかり。

「この火を作り出した本体を叩いて! 私を気にしないで」

 そんな事を言ってきた。よくある俺を置いて先に行け的なニュアンスなんだろう。

「私はこの魔法をずっと使わないといけないから動けないんですよ」

「そうか……そういう事なら俺達で主犯を探し出して──」

「ここに居るよ」


 背後の宿屋の屋根の方から聞こえてきた。

 みてみるとそこには誰かが立っていた。いや、立っているんではない。少し浮いた状態で椅子に座っているかのように足を組んでいる。


 あいつ、どこかで……。あ! 思い出した。あの時、印象的で覚えていたけどあいつは宿屋の入口ですれ違った奴だ!

「あいつから嫌な魔力を感じますよ!」

 その瞬間、地面から土の手が出てきてユユをはたこうとする。

「水操作! 壁」

 そしてユユはその手を水操作で作り出した水の壁によって防ぐ。

 考えてみればこのフィールド環境はユユの有利な環境だ。

 水不足になる訳が無いし、そこらに水が落ちている。まさに絶好の環境。

「ほう……なら疾風の波動(エアブラスト)

 疾風。風である。この事から属性が予想できる。

「危ない!」

 俺はいつの間にかユユを庇っていた。

 そんな俺に奴の手から放たれた魔法。疾風の波動が直撃する。

「どうして」

「俺を勇者だと思ってくれてるんだろ? なら夢を壊さないように助けてやらなきゃな」

 ズキューン! と言う効果音が聞こえた気がした。好感度を減らすと言う当初の目的が全て無駄になった音が聞こえてきた。


「ひ」

「ひ?」

「ヒロさ〜ん!」

「お、おい! 今目の前に敵が居るから! 離れろ!」

 引っ付いてくるユユをて慣れた手つきで離した俺は奴に向き直る。

「お前が魔族か」

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