第224話 昇格試験6
「な、なんでひろ――ジャックが不合格なんですか!? まだ決闘すらしてないですよね」
興奮して裕斗と言おうとしたことはスルーすることとして、確かに納得がいかない。全く戦ってもいない、だと言うのに不合格だと言うのは少し理不尽じゃないのか。
確かに俺は昇格に興味が無いが、理不尽なのは納得がいかない。
「どういう事なのか説明してくれませんか?」
俺が聞くとギルドマスターは俺を睨みつけてきた。その時どうしてなのか、俺は何となく分かった。今までにも同じような目を見てきたことがあった。しかし、この人の目は根本的なものが違った。この目は俺を陥れようとしている目ではなかった。だから少しは聞いてみようかなと思えた。
「君は心当たりがあるのではないか? 君の仲間たちは君に尽くそうと頑張っていた。そこまでなら良かったが、その後が良くなかった。君の存在が仲間たちの負担になっているのだよ」
俺の存在が負担に? それってどういうことだ。今までみんなにもそんな事を言われたことはなかった。だからそんな事を言われるとは思わなかった。
確かに俺は仲間がいないと戦えない。だから負担になっているのかもしれない。だけどギルドマスターの目を見ていると言っていることはそういう事ではないと分かった。俺に怒っているのだ。
「君の力になりたい、そう考えたのだろう。それが君の仲間たちの圧力になっている。君の存在があるからこそユキくんは自滅魔法を使ってまで儂に勝とうとしたのだ」
まさか、俺の存在がユキを――仲間を追い詰めていたなんて……。ってことは俺はみんなと一緒に居ない方が本当は良かったのか?
俺はこの度の間、ずっとみんなを追い詰めて、そしてこんな行動を起こすまでに……そうだとしたら俺はどうしたらいいんだ? 今まで俺はみんなを守るつもりでいた。だけど、一番追い詰めていたのは俺だった。
助けたつもりで居たのは俺の独りよがり、自己満足だったのか。
「そうですか……ありがとうござ――」
「「「「納得できません!!!」」」」
俺が引き下がろうとしているとこの場に居るユキ、そして更に三人の声が重なって聞こえてきた。しかもこの声は俺の聞き慣れている声だった。
その声が聞こえた直後――控え室の扉が乱暴に開かれて三人の人影が飛び出してきた。
その三人とはサキ、スイ、マイの三人だった。三人は飛び出してくるなり部舞台に上がってきた。
「ジャックが私たちに圧力をかけていたですって? 勘違いも甚だしいわ!」
「そうです! 私たちはお兄ちゃんに助けられています!」
「そんなお兄さんを在任扱いですか? 幾らギルドマスターでも許しませんよ」
スイ、サキ、マイの三人がギルドマスターの言葉に意義を申し立てた。しかし、俺の頭からはギルドマスターの言葉が離れなかった。なので今この瞬間もこの三人に無理をさせているのではないかと思ってしまって気が気ではなかった。
なのでみんなを見た瞬間、俺は懺悔の言葉しか思い浮かばなくなってしまった。
みんなの目を見てれば俺のためにやってくれているってことが分かる。でもそれは無理をさせて居るのではないかと思ってしまった。
「守るが……。守るだけなら誰でも出来る。しかし、彼は君たちにとって負担になっているのではないか?」
「「「「そんなことない!」」」」
「あるんだよ。今の君たちを見れば」
みんなはまたギルドマスターの言葉を否定したが、ギルドマスターはそれを一蹴した。その事でみんなは不満を抱いたような表情をした。
「もし、だ。もし本当に負担がないと言うならばクラン戦にて危険なことはせずに余裕を持って相手を打ち倒して見せよ。この条件をクリアすることがなければ一緒にいるのはいいが、ジャックくんを冒険者として認めることは出来ない。故にランクアップも無いだろう」
クラン戦で? しかも余裕を持って倒せって……相手の力もあまり分からない。『ブレンド』のように大人数クランのことがある。その場合、『HOPE』のメンバーだけで余裕を持ってってのは厳しいかもしれない。やはりここは俺が引下がる方が……。俺はランクアップには興味無いしな。
でも負担なら一緒に居ない方が良いのではないか?
「みんな、負担なら俺と来てくれなくてもいいんだぞ」
「「「「その選択はありえない!」」」」
俺の提案は一瞬で却下されてしまった。その勢いに俺は少し気圧されてしまう。
でも俺の心配は尽きない。本当にこのままがみんなにとっては幸せになれるのか? アルケニア逃亡事件だって結果的にはサキやスイを巻き込んでしまったような結果になったし、ユキのことだって俺が剣の主人でよかったのか……。
その瞬間だった。ユキが急に抱きついてきたのだ。
「ジャックが主人じゃなきゃダメ。第一、ずっと一緒にいるって約束した。私はそうじゃないと嫌。寝ている間にどこかに雲隠れをしたとしても一生かけてでも見つけ出す」
ユキの強い意志を感じる。そう言えば絶対に離れないと約束したもんな。これはユキが望むならば叶えてあげないといけないな。
サキとスイに関してもずっと守ると決めたんだ。なら二人も無理をさせないくらいに一緒に居たい。
「分かりました。ではやってみせます。無理なく勝利してみせます」
「うむ」
俺の返事にどうやら納得した様子のギルドマスターは頷いた。
ランクアップなんてどうでもいい。だけどやるからには全力でやって合格してみせる。そして四人には絶対に無理はさせない。
この条件をクリアしてみんなに追いついてみせる。
「今度のクラン戦は夏に開催される。期間は二週間程度だ」
と言うと今は冬の終わりがけだから大体四ヶ月後くらいか。
それまでにハバロンさんに剣を教えて貰って魔法も特訓をしてみんなに無理をさせないように戦えるようにならないとダメだな。
絶対に合格してやる。
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