第213話 剣の達人2
次の日、俺は知らない部屋で目を覚ました。でも少し昨日のことを思い出してみる。
「そうだった。昨日はマイの家に泊めさせて貰ったんだっけか」
昨日は食事した後、風呂を借りてその後すぐに寝てしまった。疲れていたのもあってか久しぶりに熟睡してしまった。
なんか昨日は色々あったから疲れが異常に溜まっていたもんな。でもおかげでマイを助けることが出来たしいい疲れ方をしたと言えるだろう。
「と、今日からだな。剣術の修行」
ハバロンさんに今日から剣術の修行をつけてもらえることになっている。そのため、気合いを入れ直して布団から出る。
そういえばこの家には沢山空き部屋があるらしいが女子陣は仲良く一緒の部屋で寝たそうだ。マイに呼ばれて少しマイの部屋に行ってみたんだが、マイの部屋で四人も寝るのは少しきつい様な気がしたが、それでも何とか布団を敷いて寝たらしい。
部屋から出てリビングに行くとそこにはハバロンさんがいた。コーヒーらしきものを飲んでいて、それを見ているとハバロンさんに見つかった。
「そこで何をやっている? こっちに来たらどうだ?」
「じゃあ」
ハバロンさんに誘われたのでハバロンさんの向かい側に座る。
「お前も飲むか?」
「はい」
マイのお父さん、更にその雰囲気から緊張気味に返答をする。完全に一言間違ったら殺られそうな雰囲気を纏っている。でもこの人にこれから剣を習っていくんだからこの雰囲気に慣れていかなきゃならないな。
するとハバロンさんは立ち上がってキッチンに向かうとカップをもう一つ取り出してコーヒーらしきものを淹れ始めた。
そのコーヒーらしきものを淹れ終わるとそのカップを俺の前に置いた。
「ラクムだ。少し苦いかもしれないが眠気覚ましには丁度いいと思う」
この世界でコーヒーはラクムと言うらしい。
ラクムからはいい匂いが漂ってくる。この世界に来てから紅茶を飲んでいることが多かったが、それはアルケニアにコーヒーがなかったからだ。
本当は久々にコーヒーを飲みたいと思っていたので、この一杯はとてもありがたかった。
「ジャックくんだっけか。起きたなら早速鍛錬を始めようと思う」
「はい! よろしくお願いします!」
俺はラクムを飲んでいた手を止めて頭を深く下げた。その俺の態度に納得が言ったのか「うむ」と頷くとハバロンさんは再び立ち上がった。
「来い」
そのハバロンさんの言葉に従って付いていくと途中でハバロンさんが壁に着いていたボタンを押すと急に壁が左右に開いて地下へ続く階段が出現した。
その階段は結構長いようで一番下がかなり遠く見える。
「ここから地下に入る。この階段は魔法無効化エリアになってるから踏み外したら命は無いと思え」
つまり落ちたからと言ってアンチグラビティーで助かることは出来ないというわけか。確かにこの長さの階段を上の方で落ちたら命はなさそうだな。良くて瀕死の重傷と言ったところか。
でもこの階段はなるべく落ちにくいように作られているようだ。手すりこそないものの、一段の幅が広い。これなら安心して降りられる。そう思ったのだが、ハバロンさんが一歩踏み出した瞬間、目の前から消えた。
「ハバロンさん!?」
びっくりして階段ルームに入るとなんと一段一段の高さが俺の身長の二倍になったのだ。
しかも階段の幅もさっきの何倍にもなっている。……もしかしてこれって俺たちが小さくなっているって事か? この世界だ。こういう事が起きてもおかしくないだろう。もう何も驚かない。
でもこの高さを降りることを繰り返して足腰を鍛えるってことか。もう既に修行は始まっているってことだな。やってやろうじゃないか。
意気込んで俺も一段降りる。すると着地した瞬間、足に結構な衝撃が走った。これは鍛えられるな。
この調子でずっと降っていく。
約30後、漸く一番下に辿り着いた。
「遅いぞ」
「す、すみません!」
ハバロンさんは何分も前に辿り着いていたらしく、かなり待たせてしまった。
「じゃあ、この部屋で鍛錬を始める」
そう言ってハバロンさんが扉を開き、見えた部屋は――とても天井も高く、かなりの広さがある闘技場だった。
一家庭の地下に闘技場? 驚いちゃダメだ。これはこの世界では普通だ。そう思わないと色々なことがありすぎて頭がおかしくなりそうだ。
しかもご丁寧に観客席まである。一家庭にこんなのは要るのか?
「まずは俺と手合わせをしてようか。力を見せてくれ」
「はい!」
ハバロンさんの剣術。めちゃくちゃ興味がある。
「これを取れ」
そう言って渡されたの刃を落としてある剣だった。そしてその剣を受け取るとハバロンさんも同じ剣を手に取った。模擬戦形式ってことだな。
「さぁ、かかってこい」
「では、遠慮なく」
俺はハバロンさんに向かって剣を構えて走り出す。その俺をハバロンさんはじっと見つめて動きを観察しているようだ。
そして俺が剣を振り下ろすとハバロンさんは半身になって俺の剣を躱すと自身の剣で俺の剣を弾き、俺は右腕を衝撃で上にあげてしまった。
「好きだらけだ」
ハバロンさんはそう言うと剣を逆手に持ち、腕を自身の背後に来るくらいまで振りかぶった。
この一撃はまずい! 咄嗟にそう思った俺はバックステップをした。しかし、そんなこと関係ないとばかりにハバロンさんが剣を横凪すると、風が斬れる音がした。
嫌な予感はした俺が体をのけぞった直後、俺の上スレスレを斬撃が通り過ぎていき、背後の壁に見事な斬り傷をつけた。
「豪王英斬だ。風をも断ち切る斬撃」
これがハバロンさんの斬撃か……凄い。
俺はこの技を見た事によって更にやる気が出てきた。
「さて、見せたいものも見せれた。続きは朝飯を食ってからだ」
「はい!」




