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第211話 『HOPE』11

 俺とマイは帰ってきた。

 帰ってくるとサキ、スイ、ユキが家の中でお茶を飲んでいた。その様子を見て俺は思わずポカーンとしてしまった。

 さっきまで入口に居て入ってこようとして居なかったのに俺たちが出ていった少しの間にいつの間にこんなに打ち解けたんだ?


「あ、ジャック。おかえり」

「お帰りじゃねぇ……いつの間に打ち解けてんだ」

「うちの外に居たから入ってもらったわ」

「おかぁさん……」


 マイも呆れてしまっている。家の外に居たから上げるって危機感が薄すぎじゃ無いか? まぁ、今回はユキ達だったから良かったけどな。


「それで和解できたの?」

「えぇ、まぁ」


 この条項は気に食わないけど一応和解出来たと思う。マイもさっきまでは泣いていたが、家に近づくと泣き止んで何故か手を握ってきた。これは和解しないとしないことだろう。っていうか普通はそんなに手を握ったりとかはしないはずなんだけどな。でもマイが嬉しそうだからこれでいい。


「お兄さん、そう言えば何の為に来たんでしたっけ」

「お兄さん?」


 全員が不思議そうな顔をした。もちろん俺も困惑、固まってしまった。多分そのお兄さんってのは俺の事だと思うが、今まではジャックさんと読んできていたはずだ。なのになんでこんな急に呼び方を変えてきたんだ?

 別にお兄さんと呼ばれるのが嫌な訳では無い。しかし、少し気になったのだ。


「お兄さんが言ってくれたじゃないですか。お兄ちゃんの代わりになってくれるって」

「そうは言ってないけど似たようなことを言ったような気がする」

「ダメですか?」


 でもそれでお兄さんと呼ばれるようになるのは予想外すぎる。マイってもしかして以外と天然子だったりする?

 マイはうるうると今にも泣きそうな表情になる。その目はずるいと思うんだけど……。こんな目をされたら断れる人なんていない、居たらそいつは非人道的だと思う。まぁ、元から断る気なんて無いけど。


「いや、それでいいよ。マイの呼びたい呼び方で」

「やった!」


 マイはとても嬉しそうに笑った。それを見ながらやれやれと肩を(すく)めて俺はみんなの元へ向かう。


「サキ、ライバル出現ね」

「な、何いきなり!? 私は正妹ポジだからいいもん。スイちゃんこそライバルが多いんじゃ無い?」

「なんで私? 私はあいつの事が好きなんかじゃ」

「……」


 よく聞こえないがサキとスイが会話している。まぁ、そんなことはどうでもいいけど。


「そうだ、お兄さん方。今日は晩御飯、食べて行ってください」

「ん? こっちとしては嬉しいが、いいのか? 迷惑なんじゃ」


 マイの提案に少し迷惑になるかもという抵抗があったが、サチさんは直ぐに首を振った。


「迷惑なんてことはありませんよ。どうぞ食べて行ってください。そうだ、皆さんは旅人なんですよね。でしたら、今日は泊まって行ってください。マイも皆さんの事を気に入っているようですし」


 サチさんは快く了承してくれた。更に、俺とマイが出ていっている間にみんなが旅をしているって事をハバロンさんとサチさんに話していたようで泊まっていけとも言われてしまった。

 確かに俺たちは今日も宿に泊まるつもりだったから止めてもらえるのはありがたいが……。


「お兄さんは嫌ですか?」


 目を潤ませて聞いてくるマイ。そういう女の子の仕草ってずるいと思うんだけど……。そんな表情をされたら断れない。


「よろしくお願いします」

「決まりですね。じゃあ、私は晩御飯を作ってきますので皆さんは適当にくつろいでいてください」


 サチさんはそう言うとキッチンの方へ向かって行ってしまった。

 くつろいでいてくれと言われたものの俺は他人の家でくつろげるほど神経は図太くは無い。だから出してもらったお茶を少しづつ飲みながら魔導書を開いた。光属性の魔導書だ。

 これはアルケニアから持ってこれた数少ないアイテムの一つだ。最近は体術だったり剣の修行ばかりで魔法に全然触れることが出来ていなかった。これを肌身離さず持っておいてよかった。


「魔導書ですか? あれ、この辺では見ない魔導書ですね。お兄ちゃん、これは何の魔導書ですか?」

「ん? ああ、これは光属性の魔導書だ」

「光属性ですか? 聞いたことがありません」


 光属性の事を知らないのか? 確か公に知られている属性って火、水、木、土、風、光、闇だったはずなんだけど、マイは知らない様子だ。


「バスタガ王国は魔法の文化よりも化学を先行してきた街なのよ。確かにこの街にも光や闇の適性者は居るけど、それを知っているのはギルドくらいなものでほとんどの場合、適正無しとして扱われるのよ。この国で公にされているのは火、水、木、土、風よ」


 スイが説明をしてくれた。

 なるほど、ここは魔法よりも化学を選んできたからこんなに電気とかの文化が進んでいるのか。逆に化学ばかりに力を入れすぎて魔法の文化が遅れているとも言えるわけだな。

 でも現代日本から来た俺は化学が進んでいた方が過ごしやすくていい。確かにアルケニアにも電気はあったが暗くてとても快適なものではなかった。更に冒険時には光属性のライトという魔法があるせいでランプとかの冒険アイテムがなかった。あそこは魔法の文化が進んでいるから作れないってのもあるだろうし、必要なかったってのが本当のことだろう。

 だから今日商店街に行った時にランプがあったのは驚いた。この街では光属性はないことになっているし、作れる技術があるからあるんだな。


「へぇ、例えばどんなのがあるんですか?」


 初めて聞く魔法に興味津々の様子のマイ。聞いてきたがどんな魔法を見せるべきか悩んでしまう。正直言って光属性や闇属性って気軽に見せるには向いていない魔法が多いんだよな。

 となると何を見せるべきが……。

 そうだ、ライトだ。薄暗くなってきたし、この魔法が丁度いいかもしれない。


「暗闇を照らしだせ『ライト』」


 俺が魔法を使った瞬間、薄暗かった室内が一気に明るくなった。

 この魔法を見てマイは目をキラキラと輝かせる。今まで暗闇を照らす方法がランプしか無かったからだろう。


「凄いです!」

「ありがとうな。解除」


 俺が解除というとライトの効果が消えて再び薄暗い室内になった。

 それを見るとサチさんは電気をつけてまた明るくなった。


「これが光属性の魔法だ」

「凄いです!」


 とても慕われているみたいで少し気分がいいな。ユユのようにべったりって訳では無いが、ユユと重なって少しこの感覚が懐かしく思う。カナタとユユは何をしているんだろうか。

 アルケニアを出て数カ月が経った。多分あの二人なら死ぬことは無いと思っている。でも心配だな。


「お兄さんの話、もっと聞きたいです!」

「んー、そうだな。その前にサキとスイに聞いておきたいことがあるんだ」

「なんですか?」「なに?」


 今まで自分たちに会話を振られていなかったから油断していたのだろう。少し驚いた声色になっていた。


「俺のクラン、『HOPE』に入ってくれないか?」

「いいですよ」「いいわよ」

「結構軽い感じで入るんだな。入ったら強いクランと戦わなくてはならないぞ?」

「そんなの今更よ。それよりも私たちは命のかかった戦いを何度もしてきたじゃ無い。そんなのから比べたら死なないクラン戦なんて怖くもなんともないわ」


 確かに、今までスイたちとはオーライ戦から始まって数々の命のやり取りをしてきた。つい最近もダークドラゴンや、デスワイバーンとの戦いなどもあったから何度も命のやり取りをしてきている。

 なら死なないクラン戦なんて怖くはないよな。


「じゃあ、明日登録しに行くか」

「話が纏まったなら冒険談、聞かせてください!」


 マイは以外とせっかちのようだ。

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