第18話 青い少女
そして暫く歩くと一部的に木々の葉が少なくて光が届いている場所があった。
そこに近づくと俺とカナタは目を見開いた。
何故ならそこの中心には日本で言うと中一位の小さい女の子が倒れていた。
水色の髪……。なんか引っかかるような……。
するとカナタは駆け出して行った。──倒れている女の子を助ける気か?
「待て! 罠の可能性も!」
言ったが既に遅かった。カナタは真ん中の女の子の所へ行って、そして──囲まれた。
魔物に四方八方、カナタは囲まれてしまった。
こいつは後先考えずに……。
そう思っているとカナタは地面に手を向けた。そして空いている手で女の子を抱えた。
そして詠唱を始める。そんなカナタに向かって行く魔物達。まずい! そう思った次の瞬間、俺は驚いた。
「ジャンプブースト!」
飛んだ! カナタがものすごい大ジャンプを見せた。
森の木々の高度をゆうに超えて小さいビル位の高さまでジャンプした。
あいつは風属性の魔法使い。空くらい飛べるってか? そりゃすげぇ。
そしてジャンプしたまま街の方まで飛んでいくカナタに置いていかれないように走る。
あの時の感覚を思い出して走る!
すると俺の足が急に早くなった。あの時は変わったのに気が付かなかったけど日本の車より少し速い。次々に視界が変わってくから乗り物酔いがしやすい人は直ぐに酔いそうだ。
カナタは下を向かないけどきっと俺が着いてきてるって信じて飛んでいるんだ。なら俺もその期待に答える義務があるんだ。
そしてさらに走る。
確かにこの疲労具合いはかなりのものだ。これは得意属性の人専用魔法なんじゃないかと言うくらいの疲労だ。
しかも魔力だから肉体的にだけではなく精神的にも疲れてくる。
でもここで負けたらダメだと思って必死に走る。
しばらく走ると漸く街についた。そしてカナタも地上に降りてきた。
「さすがにあの距離飛行するのは疲れました。ブーストよりも消費魔力は多いのであまり使えませんねこれは」
それでもあの位置からここまでずっと飛んでくるなんてさすがカナタだ。
「それにしてもこの子は誰なんでしょうか?」
と抱き抱えながら言うカナタ。すると
「う……ん?」
目を開けた。
しばらくすると青い瞳をうるうるさせて怯え始めた。
それもそうだろう。彼女にしてみれば目を覚ましたら急に目の前に知らない男女が居たんだから。
徐々に女の子の顔が絶望に染まっていくのが分かった。
「お、お願い……します……命だけは……」
相当怖い目にあったのだろう。体が震えている。
その恐怖を緩和しようと話しかける。
「俺達は別に悪い奴らじゃ」
「水鉄砲!」
と女の子は手を銃の形にしてこっちに向けると水が出てきた。これは魔法だ。指先から急に水が出るなんてありえない。水属性の魔法、水鉄砲か。
そしてカナタにも水鉄砲を発射するとカナタは怯んで手を離してしまった。
その隙に女の子は街と反対方向に走っていった。
カナタは目に水が入ってしまったようだ。
「痛い。この水、ただの水じゃない。普通に威力が高い上に、目に入ったら凄い痛い……」
もうカナタの行動は期待できない。
ったく……面倒事をこれ以上増やさないでもらいたい。
そして俺は結構前にカナタに貰ったリラックス草を齧る。結構苦いがこれを食えば魔力が回復するらしい。まぁ確かに精神的な疲れは無くなったような気がする。
そして俺は走る。
しかし以外にもあの子の足が速くて中々追いつけない。それかただ俺の足が遅すぎるだけだ。
すると女の子の前に魔物が立ち塞がった。
「ひっ!」
怯えた声を出す女の子。
「やっぱり私には冒険家なんて無理だったんだ」
と敵が目の前にいるというのにしゃがみこんで頭を抱える女の子。
ったく……自分から他人を助ける趣味なんてないのによ……。なんでこういう事ばかりする羽目になるかな!
そして俺はブーストを発動させる。
そして攻撃しようとしている魔物に突進する。
すると魔物は一撃でダウンした。──やはりそうか……。ブーストでかなりのスピードが出た状態で体当たりしたら相手にかなりのダメージが入るみたいだ。だが、致命傷には至らない。
だから俺は──
「ちゃんと捕まってろよ」
と言って女の子をお姫様抱っこで抱えてブーストで元来た道を駆け抜ける。
すると何故か女の子は俺の事を恍惚とした表情で見つめてきた。一体どうしたんだよ。