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第13話 速度アップ魔法『ブースト』

 俺は目を開ける。

 倒れた時に道場にいたから道場内かと思ったけど違った。

 この天井は見た事が無い。

 そして横を見てみると、俺の寝ているベッドにもたれかかってカナタが寝息を立てていた。


 するとカナタは目を覚まして俺の方をボーッと見た後、驚いて立ち上がる。

「大丈夫ですか!?」

 と大きい声を出すカナタ。いつもなら鬱陶しいくらいにしか思わないが、さっきまで倒れていたせいか、すごく頭に響く。痛い。

「と言うか、この状況はどうなってるんだ?」

 聞くとカナタは静かに説明しだした。

「私が詠唱をしているところにカラタさんが来ました。そこで手伝うと言って魔物の群れに突っ込んで行って無双してあっという間に全滅させれたんです」

 そうか……俺の願いを聞き届けてくれたのか……。──俺はそう思って安堵する。


 本当によかった。みんな無事で……。

「カラタさんに来た理由を尋ねるとカラタさんは『君のボーイフレンドに頼まれてしまったからね』と言ってました。私のボーイフレンドって自称してる人は誰なんでしょうかね? そんな人は私には居ないので見かけたら殴ります」

 カナタのボーイフレンドって……。それ俺の事じゃね? カラタさんにはそう見えたの? 俺、一度もそんなことを言った覚えもないんだけど?


 これ、俺が頼んだとバレた瞬間、ボコボコにされるパターンの奴だ……。カラタさん……なんて面倒なことを……。

「そして貴方が道場で倒れているという話を聞いて急いで回収してきました」

 そうか……やっぱりカナタがあの状態から助けてくれたんだな。

「それにしても、魔力が枯渇してましたが、何があったんですか? 貴方は使えないはずじゃ?」

「魔力?」

「魔力とは精神エネルギーの一種です。魔法を使えば減りますし、食べ物を食べたり分けてもらったら回復することが出来ます。それが極端に少なくなっていたんですよ。魔力は精神エネルギー。それだけに魔力が減ると精神的に疲れるんです。魔力を使いすぎると筋肉痛の魔力バージョンになって体に力が入らなくなったり」

 と言われても俺は魔法なんて使った覚えは無いんだけどな……。

 あるとしたら……どこでだ? もしかして……。走ってる時?

「もしかしたら逃げるために走っている時に無自覚で何か発動したのかも」

 そう言うとカナタは考える仕草をして手を叩く。

「もしかしたらそれはブーストと言う走るスピードを上げる魔法かも知れませんよ?」


 また新しい魔法が言葉にでてきた。

 スピードを上げる魔法。

 それだったらあの短時間で走れたのも頷ける。

 自分でもこのスピードはおかしいと思っていた。

「この魔法は魔法の中でも数少ない詠唱しなくても誰でも発動できる魔法です。その代わり魔力の消耗が激しいんです。その為、直ぐに枯渇してしまったのでしょう」

 説明してくれた。

 つまり、俺は無自覚に速く走りたいと願い、その願いが形となってものすごいスピードで走れるブーストと言う魔法が使えた訳か。

 それにしても、魔法……か。自分が使ったって自覚がまだ持てないな。

「でも良かったです」

「どういうことだ?」

「貴方が死んでしまったら私の苦労が台無しじゃないですか」


 笑顔で言ってくれるカナタは一切俺の事など心配なんかしていないとこの時悟った。

「そう言えば貴方が寝ている間に剣を取りに行きました」

 は? 俺が寝ている間に? 確かあれって一週間待たなきゃ行けないんじゃ──

「俺ってどれだけ寝ていたんだ?」

 そう聞くとカナタは直ぐに答えた。

「ちょうど一週間ですね。大変だったんですよ? どれだけ魔力を使ったらあんな状態になるんですか……。あ、それと宿泊、延長しておきました」

 カナタなりに気を使ってくれたのだろう。だけどカナタはそんなことを感じさせないような呆れの視線を俺に向けてくる。

 あの時は必死だったから自分の体に構ってる暇が無かった。ただそれだけだ。


「まぁ良いです。ヒロがカラタさんを呼んでくれたからこそ何とかなったと言っても過言ではありませんからね」

「そうかそうか……。ん? 今なんて?」

「ヒロが呼んでくれたんですよね? カラタさんの事」

 バレていた!

 さっきまでの口振りからしてバレていないかと思ったらガッツリバレていた!

「まさかバレていないとでも? カラタさんと直接話したのはあれが初めてなんですよ? なので私が一緒な所を見られたのは貴方だけなので直ぐに分かりました」

 そうだったんすか! そりゃバレるわ……。そうじゃなくて!

「お、怒っていませんか?」

 声を震わせながらカナタに聞いてみると「なんで怒らないといけないんですか?」とキョトンと首を傾げて不思議そうな目でこっちを見てきた。

「確かにこんなのとなんて嫌ですけども」

「いや、だから! こんなのって酷くね!?」

「あの人は話を盛る事で有名なのでスルーしておきました」

「ついでに俺の話までスルーするのはやめてくれないか!?」

 なんで復活早々会話を交わさなくちゃいけないんだよ。こちとら頭痛が酷いんだぞ……。

「でもまぁ、ありがとな。おかげで完全ふっか」

 俺は言いながらベッドから立ち上がろうとした瞬間、ふらついてベッドに倒れてしまった。

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