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第114話 幻の街と死闘33

 俺はすぐに立ち上がり、背後に居るであろうオーライから距離を取る。

 なんだよこいつの動き、化物じゃねぇかよ。


「本当に君ら二人は僕を倒す気あるのかなぁ? ん?」


 オーライは俺をじろりと見ながら見下すような声で言ってきた。

 確かに俺ら一人一人の力は圧倒的に劣っているだろう。しかし、俺達は今この場に八人も居る。タダで負ける気は毛頭ない。

 それに俺とハルトはオーライを倒す気でもある。


「こんなんじゃダメだよな。やるっきゃない! ハルトっ!」

「んあぁ? こちとら頭、くそ痛てぇんだ。要件は簡潔に言えよ」

「あいつにスキルってかけられるか?」


 俺のアンチグラビティやフックアンドショットは自分よりも強すぎる相手には効果が無い。

 ハルトのスキルも似たような効果だ。相手にかけることが出来るって点で類似している。

 ならばハルトのスキルも強い相手には効果が無いって条文が着いていてもおかしくないと俺は考えたのだ。


「てめぇはどうしてんな発想に至ったのかは知らねぇが、多分お察しの通りだと思うぜ。俺はこの人にはスキルを使えない」


 やはりそうか。となると相手の動きを制限して戦う系のハルトにとっては不利な相手ってことか。

 かく言う俺も使える魔法が二つも制限されてしまってかなり不利な状況だ。相手の行動を制限出来ないのは少し辛いが、アンチグラビティとフックアンドショットを会得する前は無しで自分より強い相手と戦ってたんだ。


 巨大な蛇、キングスネークにミノタウロス。それにドラゴン状態のルルにヒューラー。どれも真っ向から戦ったら負ける相手だ。まぁ、ルルには勝てなかったんだが、それでも俺達は勝ってきた。

 思い出すんだ。


 あの時、どうやって戦ってた?


『カナタ、ユユ。配置につけ!』

『分かりました!』

『りょーかいです!』


 そうだった。いつも俺の隣にはカナタとユユ。いや、仲間が居たじゃねぇか。なんて愚かなんだ俺は! なんでこういう時だけカッコつけて俺だけで倒そうとしてんだ。

 かっこ悪ぃ。

 俺は勇者なんかでは決してない。俺にはその力は無い。アルケニアの精鋭部隊の一人、サキガヤ・ヒロトなんて――居ないんだ(・・・・・)

 だけど俺には仲間が居る。


「なぁ、カナタ、ユユ、ルル、サキちゃん、スイちゃん、パイプ。また俺に協力してくれるか?」

『今更ここまで巻き込んでおいて何言ってるの?』


 皆が声を揃えて言った。

 そうだったな。この件に巻き込んだのも俺だ。


 いつもいつも俺は自分が巻き込まれてるって思ってるけど俺が巻き込んでんじゃねぇか。

 笑えてくる。そうだった、いつも俺が巻き込んでるのに皆は文句一つ言わずに着いてきてくれてたんだ。


「そうか……んじゃあ、始めるか。ハルトはそこで休んどけ」

「そう……か。んじゃあ後は任せて俺は少し仮眠を摂るわ」


 そう言って瓦礫の上で仰向けになって寝始めるハルト。こいつもかなり肝が座ってるな。こんな所で急に寝始めるなんて……だが、休憩しろって言ったのは俺だ。今は寝かせといてやるか。


「それじゃあやるぞ! パイプ、火を放て!」

「ああ、――フレイムバースト!」


 俺が命令するとパイプはとりあえず周囲にばら撒くように火を放った。実際にはこんなに必要無かったんだが、無いよりある方がいい。

 何故火を出させたのかと言うと、退路を狭めるためだ。流石に化け物といえども火には近づけないはずだ。

 火に対する抵抗力と実力は関係ない。どんなに強くなろうとも熱いもんは熱いんだ!

 そして、


「カナタ! 多分あんまり効果は無いと思うが、やらないよりかはマシだ。あの出入口に高圧の檻を張れ」

「はい! ――高圧の檻!」


 多分、あの白衣によって壊されてしまうかもしれないけど、それでも念には念を入れて通り道を完全に封鎖しておいて悪いことは無いだろう。

 相手は同じ人だ。つまり俺がされたらうざいと思うような戦い方を実践すれば悪いことにはならないだろう。俺にとって退路を塞がれること以上にうざいと思う事は無い。


「そして、これで完成だ。ユユ、床を凍らせろ!」

「え、地面を? でもそれをやったら歩きにくく」

「いい、火の周りは仕方がないが、それ以外は凍らせろ!」

「……分かりました。絶対に溶けない特別性です!」


 するとユユは床を水操作ウォーターオペレーションによって床を凍らせる。

 少し足を動かすと簡単にツルッと滑った。まるでスケートリンクだ。これじゃあオーライは走ることは出来ないだろう。

 だけど、俺は違う。


「これで準備が整った」

「お前、何を考えてるんだ? こんなことしたらお前も動き(にくく)なるじゃないのかぁ? ん?」

「お前、何言ってるんだ? 動き難くなるのはお前だけだ」


 オーライらは歩きにくそうに慎重に歩いてるが、俺は普通に歩いていく。一切の歩きにくさを感じない。

 俺は一切何も小細工はしていない。靴も日本で履いてたものと同じものだ。


 だが、俺は少し違う。慣れているのだ。


「俺は元々雪国生まれの雪国育ちでな。雪の上と氷の上を歩くのには慣れてんだ」


 他のみんなは動きにくいだろう。だから俺は皆を歩きやすくする為に弱いアンチグラビティをみんなにかける。

 氷から足が少し浮くことによって滑ることは無くなっただろう。


「さて、この状況。お前ならどうするんだ?」

「……なるほど、考えたなぁ。それじゃあ、僕はこうしよっかなぁ」


 オーライはそう言うと宙に浮き上がった。

 これはジャンプブースト? いや、違う。全く魔力を感じない――って事は、これはスキル!?

 浮遊のスキルってことか?


「歩かなければいい!」

「やるしかない!」


 俺は剣を構え、オーライは白衣の内ポケットからナイフを取り出すと、それを構えて俺に突っ込んできた。

 作中の魔法名を叫んでいる時にある――は詠唱を表しています。

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