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第112話 幻の街と死闘31

「やっと上に来れた!」

「ち、あいつ。絶対あいつは俺の手で殺す!」


 俺は上に登ってこれたことによって疲労による脱力感でその場に仰向けに倒れ込んでしまう。

 ハルトも登ってきたら相当疲れたようで膝をつき、オーライへの殺意を露わにしている。

 俺達が登ってくるまでかなりの時間がかかってしまった。

 時間がかかったことで少し心配になって来て転移石を取り出した。ここならば魔法が使える。飛べるのではと考えた。

 しかし、俺の行動はハルトによって止められてしまった。


「んなタイミングで使うんじゃねぇ。時間がかかり過ぎた。あいつらも移動しているだろうよ。こんな時に使ったらどこに飛ぶか分かったもんじゃねぇ。もうちょい慎重になれ」


 確かに。言われてみればそうだ。少し気が動転していたようだ。

 今からあいつらを探しに行くことになるが、その過程で石を使い、もしあいつらが危険な目にあっている所に飛んだら助けることも出来やしない。

 って事は足で探すしか無いのか。急いでいるってのに……。


「なぁ、ヒロト」

「あ?」

「てめぇは前に出るな、後ろを見てろ。戦う時もだ。分かったか?」

「ん? ああ、まぁ分かったけど」


 何故俺が後方なんだ? でも何か考えがあるんだろう。俺は素直に従うことにしてハルトの後ろに入った。


「んじゃあ行くぞ」


 歩き出すハルト。俺はそれについて行く。

 敵は何処から現れるか分からない。念の為に俺とハルトの体にアンチグラビティを設置しておこう。


 しばらく歩く。するとさっきまで居たところまで辿り着いた。

 しかしそこには既に誰一人として居なかった。だがまぁ、ここまでは予想通り。問題はどこへ行ったのかだが、パイプが若干血を出していたので血がぽたぽたと続いている。

 それを見てハルトは渋い顔になった。

 更に辺りを見回し、確信をしたようだ。


「何かわかったのか?」

「……これから何を見ても取り乱すんじゃねぇぞ」


 それだけ言うとハルトは再び歩きだし、血の跡を辿るように歩いていく。俺もそれについて行くが、どんどんと不気味な道へと変わっていく。

 真っ直ぐに歩いているだけなのに景色が森、海底、火山など摩訶不思議に次々と変わっていく。

 ハルトは全く何も思ってないのだろうが、多分取り乱すなってのはこの事なのだろう。


「ち、面倒な展開だな。ヒロト、マジで取り乱すなよ。取り乱したら……殺す」

「わぁってるよ」


 そこまでの事なのか? よく分からないが、ハルトはここの事をよく知ってるっぽいし、何だかやばそうな予感はする。

 ゴクリと喉を鳴らす。そして気を引き締め、足に力を入れて大地に立ち、心の準備を済ませる。


 そこで俺は目を疑う光景が映し出された。

 ハルトは剣を取り出し、戦闘態勢に入る。だが、俺は呆然としていた。動けなかったのだ。

 目の前にいるそいつは唸り声を出しながらゆっくりと俺の方へ歩いてくる。


「ヒロト惑わされるな!」


 その声は俺には届かない。目の前にいるそいつの事がショックすぎて周りの声が耳に入ってきていないからだ。

 なぜならそいつは――カナタの姿のゾンビだったからだ。


「あ、あ……」

「ちっ! めんどくせぇなぁッ!」


 ハルトが走って来て俺の正気を取り戻そうと俺の目の前に居るゾンビを斬り倒した。

 それによって俺も漸く正気を取り戻す。


「よく見ろ。これは幻覚だ。幻覚で普通のゾンビがお前の仲間に見えてただけなんだよ」


 幻覚?

 そう言われた瞬間辺りの森が消え失せ、代わりにいつもの壁が出現した。

 今までのも全て幻覚だったのだ。恐らく、何も知らないでこっちに来るとこのような幻覚が見えるようになるトラップでも仕掛けられていたのだろう。


「なんちゅー嫌がらせだ。ここで精神的に殺すって事か?」

「気をつけろよ。あと少しで俺はお前を殺すところだった」


 ハルトはあれか? 発狂している人を見たら殺さなくてはならない病にでもかかっているのか?

 でも発狂している人を連れていても邪魔なだけだしそれがいいのかもしれないな。ましてや俺とハルトはお互い、オーライを倒すって目的だけで繋がってるだけだからお互いに殺しても別に何のデメリットも無い関係だ。


「気をつけないとな」


 精神が今は不安定になっている。そこを攻撃されたらたまったもんじゃないもんな。


「さてここだ。ここの部屋に血痕が続いている」


 ハルトはとある部屋を指さす。

 そこの看板には処刑場と書かれていた。嫌な予感しかしない。自然と無言になり、俯いてしまう。


「ヒロト?」

「ん? ああ、行こう!」


 そうして俺とハルトは同時に扉を蹴り破った。


 ☆☆☆☆☆


「ここは?」


 カナタは目を覚ました。

 目を覚ますと手も足も錠で柱と繋がれており、身動きが取れない状態だった。

 少し見回してみると他の面々もそこに居た。

 カナタが一番最初に目を覚ましたので他の面々はまだ眠っているが、目に見える位置に居た事が少し安心した。

 だけど不安要素が無くなることは無い。なぜならみんな柱に繋がれているからだ。


 そこへ一人の男がやって来た。


「お目覚めですかぁ……。早いよねぇ」


 そいつはオーライだった。その姿を見てカナタは身構える。

 カナタはここに来てから一度もオーライの姿を見ていない。だが、以前会った時、薄れゆく意識の中にハッキリと記憶として残っていたので忘れるはずが無かった。


 そこで他のみんなも次々と目を覚まして起き上がる。

 そしてカナタと同じく周りを見渡し、目の前に居る男を見つけて身構えた。

 でも錠で繋がれているため、動けない。

 みんなはここで死ぬのだと覚悟した。


「さてさて、お楽しみタイムと行きま――」


 ドカーン。その時、扉が吹っ飛んでオーライにクリーンヒットした。


「何してんだお前」

「殺す!」


 裕斗とハルトだった。

 オーライはだるそうに二人の方向を一瞥すると体もその方向に向けて高笑いを始めた。


「血気盛んだねぇ。しかし早かったね……今度は殺してあげるよ」


 ついに最終決戦だ。

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