第109話 幻の街と死闘28
「ヒロ!」
「ヒロト!」
俺達が到着するとカナタとルルが一斉に声を上げた。
少し見渡すとハルトの背後でパイプがのびているのが見えたが、あれはまぁ、ほっといても大丈夫だろう。あいつ、頑丈なのだけは取り柄だからな。
しかしまぁ、危ない所だったな。上で剣と剣がぶつかり合う戦闘音が聞こえると思って駆け上がってきてみて良かった。お陰でカナタを守る事が出来た。
しかし、相手はハルトか。確かにこう言う可能性は考えては居たが、実際にハルトが敵に回ると厄介極まりねぇな。
特に厄介なのは魔眼だ。彼の魔眼は圧力だって言うが、その圧力も全方向から受けると体がピクリとも動かなくなってしまう。どうにかして視線から外れるか目隠しでも出来たら良いんだが……。
視界から外れるだけならザ・ファントムCでなんとでもなる。しかし、それをやってしまうと俺も周りが見えなくなってしまうため、使い所には注意が必要だ。
となると目隠しだ。それか動かなくとも使える魔法を使うしかない。そしてこういう時に便利なのはアンチグラビティだ。受けた圧力に被せてアンチグラビティを使うとその圧力を相殺できるのではと言う考えだ。
まぁ、一番いいのは勿論あれだろうな。もう一回成功する確証は無いけどな。
「しかしまぁ、本当にあのアンデット達に勝てるとは思わなかったぞ? スケルトンキングもかなり強かっただろう」
「あいつはそんなことは無かったな。厄介なのは周りに居たマミー達で――」
「お兄ちゃん。誤解があるようで言っておきますが、あの状況でマミーの方がって言うのはお兄ちゃん位なものです。普通はスケルトンキングが一番厄介になるはずなんですよ?」
へぇ、知らなかったな。でも周りをうろついてたマミーの方が厄介だったのは確かだ。
スケルトンキングの回復は少し厄介だったが、それ以外はなんてこと無かった。
「んじゃ、とりあえず。ハルト! 俺はお前を連れ帰る」
「だからよぉ。お前は俺のなんなんだ! 友でも仲間っちゅう訳でもねぇだろ」
「知らねぇよ! 人助けなんて俺の性には合わない。だけど後々障害になりそうなものは潰しておいて損は無い」
強制スキル発現薬、これは潰しておいて損は無いだろう。体に負荷をかけるなんて碌でもない薬だ。
「障害ねぇ。確かにこの薬は碌でもねぇな。飲んだ瞬間から死ぬほど痛てぇ頭痛が襲いかかってくるし、体に色々なダメージを与えて来やがる。でもダメなんだよ……師匠、オーライには絶対に勝てない。あの人は魔人だ、強すぎるんだ。あの人に逆らった者は絶対に死ぬ」
ハルトは怯えていた。その気持ちは俺にもわかる。何せ一回あいつと対峙したことがあるからな。
オーライ。あいつは確かに化け物だと思う。更には何だかどこでも強そうな設定である魔人だと言い出しやがった。
「はぁ……。だからって何もしない理由にはなんねぇよ」
俺もここで剣を抜いた。
剣術では圧倒的にハルトの下を行くだろう。だから俺はもとより真っ向から斬り合おうなんて考えちゃいない。
魔法を駆使しつつ、みんなで戦えばギリ勝てるか位の実力差だろう。だから俺は慎重に動く。
「ち、面倒だ」
しびれを切らしたのか俺の方を向き、俺にスキルをかけてくるハルト。それによって俺は全く身動きが取れなくなってしまう。
現在俺達は円形にハルトを囲っている。その為、俺にスキルを使うと絶対に死角が出来る。
その為、背後に居るカナタとルルは詠唱を始めた。
そう、この布陣は魔眼潰し。どちらか一方にスキルを使えば後ろの奴らにやられる。魔眼対策としては完璧だ。
詠唱を始めた二人は同時に魔法を放った。
「エアスラッシュ!」
「エアブラスト!」
カナタは風の斬撃を、ルルは圧縮された空気砲を放った。
どんどんとハルトに近付いて行く。すると流石のハルトも苦い表情となった。
魔眼は視界に入ってなきゃ効果が無い。これこそが魔眼潰しだ。
「く、」
ダンっ! 地面を思いっきり蹴ってハルトは上にジャンプした。
そういう事か。空中に逃げ、見下ろすことによって俺達全員を視界に入れる気か。だけど逃がすもんか!
「来い! 《フックアンドショット》」
ハルトに手のひらを向けてフックアンドショットを放つとハルトは俺の狙い通りにこっちに引き寄せられてくれた。
さすがにそれは予想外だったらしく、目を見開いて驚くハルト。しかし直ぐに元の表情に戻り、地面を思い切り蹴った。
その直後、俺の真横をするりと抜けて行ってしまった。
「しまっ!」
「遅い!」
俺の背後に廻られたってことはこの円の外に出られたということ。円の中からだったら死角があるが、外からだったら円を全て見れる。
サキちゃんとスイちゃんは早口で詠唱して魔法を放つ。
しかしもう遅かった。
サキちゃんは『戦う植物』、スイちゃんは『水斬』を放ったものの、木の根が伸びた所で止まってしまい、スイちゃんも杖を横凪する途中で固まってしまった。魔眼の力だ。
「やっと捕まえた。後は殺すだけだ」
ハルトは余裕の笑みを浮かべてゆっくりとこちらへ歩いてくる。
これはやんなきゃダメなやつだな。スキルに対して効果があるか分からないけどやるしか無いよな。
「『上書き』」
その瞬間、俺の体を押さえ込んでいた謎の圧力が消え、自由に動けるようになった。
それは他のみんなも同じようで不思議そうにしていた。
「何故だ! 何故貴様ら動ける!」
「何故だろうな!」
俺はブーストの力を借りて全体重を乗せて斬り掛かる。
ハルトは俺の剣を咄嗟に剣を横向きにして受け止めるも、ブーストの力がかかっている俺を止めるのは厳しかった様で、押し負けてどんどんと背後に下がって行く。
このまま反対側の壁まで押し切ろう。そう考えたのだが、その前に嫌なものが見えた。
穴だ。さっきから各場所で戦っている。その衝撃で空いてしまったのだろう。
ハルトもこれには完全に予想外だったらしく、背後を一瞬見て青ざめた。
俺は止まろうとしたものの、ブーストの力のせいで止まるに止まれない!
「「うわぁぁぁっ!」」
そしてそのまま俺とハルトはその穴に落ちてしまった。




