神代に語るる英雄の物語【序章】 2
読んでくださりありがとうございます。
お気づきだとは思いますが、この物語は今後も会話のみで成立させていきます。
風景が変わらず、登場人物の入れ替わりも現状では通行人しかおりません。
ちなみに、奴隷生活を終わらせたあとの正伝のプロット(シリアス)も当然あります。
世界設定とか無茶苦茶考えております。
が、現状で書く気になっていません。
『おはよ~』
ん?神様起きたらしい。
「おはよ」
膝で口元を隠しながら朝の挨拶。
と言っても、前話から30分くらいしかたってないから、今は午後2時くらい。
『ごめんね~。転移させるのに結構体力使っちゃってさ~』
この神様、会話が軽いんだよ。無駄が多いし。
『悪いね。こんな性格なもんでさ』
「え?」
普通に声に出してしまった驚きの声に、通行人が3人くらい反応する。
いや、通行人はどうでもいい。
考えてる事がわかるのか?
『わかるよ~。まぁ、色々と制限はあるけど、目の前にいれば完璧に聞き取れるね』
まじか~・・・んじゃ前の説明の時に通行人から色々楽しい目線を受けてた俺の精神修行は何だったんだよ!
『精神鍛えられて良かったじゃん』
ふざけんな。最初にソコ説明しろよ。
『いやいや、僕が声を出してない段階で気づこうよ』
いやいや、神様と同じこと出来ると思う人間は中々いないと思うよ~?
『そうかな?』
そりゃそうだろ?
『えへへ~』
照れてんじゃねーよ。別に神様の出来ることを誉めてんじゃねーよ。説明しなかった事を責めてるんだよ。
『え~。でもさ~。あんまり人間の事を知らないんだよね~』
おい。なんで良く知りもしない人間を、ちょっとした思い付きで異世界送ってんだよ。
『いや~。人間の事を知ろうと思って、適当に人間が栄えてる世界で居候しながら見てたんだけどさ』
ふんふん。それで?
『ラノベにはまっちゃってさ。アレ読んで参考にすると余計に人間がわかんなくなるよね☆』
あ~~~・・・・そうなのか?
『いや、だって人間ってビーム出したりする機能ないじゃん?』
あるわけねー。
『でも、ラノベとかアニメの主人公って普通に出すじゃん』
出すね~。
『人間って空飛べないじゃん?』
飛べないね~。
『でも、主人公って何だかんだ無理やり理由つけて飛ぶじゃん?』
飛ぶね~。
『だから、それをしようと思って、この世界作っちゃった☆』
ん?
『ん?』
作った?
『うん』
世界を?
『うん』
そんな事の為に?
『正確には作ったっていうか、7億年ほど既存の世界を逆行させて、テコ入れしてから早送りした感じ?』
んんん~?
『なんか変?』
いや、神様の価値観がわからん。
時間って逆行できんの?
『できるよ?』
失敗したらやり直し!みたいな?
『うん』
んじゃ、やりなおせ!
俺を元に戻せ!
『それは無理かな~・・・』
なんで!
『だってさ~。君の居た世界の仲間から君を借りてるんだよ?』
それがどうした?
『せっかく借りたのに、まったく使わずに返すのって失礼じゃない?僕の立場も考えてよ~』
知るか!
まず被害者の俺の立場を考えろよ!
『ん~~~。でもさ、ちょっと考えてみようよ』
なにを?
『ラノベ主人公を生で見たくて用意したんだよ?』
だから何?
『ラノベ主人公みたいになりたくない?』
いい大人に何いってんだ?
子供の頃なら喜んでたかもしれないが、社会人になってソコソコ給料をもらうようになって、
彼女もできて人生これから!って所で異世界で子供になるってどうなんだよ?
『ん?』
ん? じゃねーよ。
『むこうで学生じゃないの?』
なんで俺を調べずに選んだ・・・
『調べたよ~。それで予定立てて、準備して。この世界の調整してそれから呼び出したんだもん。間違う訳ないよ?』
あのさ・・・
『何?』
この世界の調整と準備に俺のいた世界で10年くらいかかってんじゃないんですかね~ぇ?
『あ・・・ てへっ☆』
ふざけんなよお前!10年前なら喜んでたかもしれね~よ!
でも、いい大人がビーム出して喜ぶと思ってんのかよ!
あ、いや、一部では喜ばれるかもしれないけど・・・俺は普通に大人なんだよ。
ラノベとか漫画より、仕事にやりがい感じたり、彼女とデートしてるほうが楽しいお年頃なんだよ!
『怒んないでよ~。たった10年じゃ~ん』
たったって・・・・長生きしても人生の1割以上だぞ。10年なめんな!
『そっか~。人間って大変なんだね~』
は~~~っ。もういい。
『何が?』
ちょっと真面目に考えるのがバカバカしくなった。
『え~。なんかそれヒドくない?』
お前の行動ほどヒドくねーよ。
『ほら!』
ほらってなんだ?
『神様をお前呼ばわり!さっきから扱い変わってる!』
敬ってほしければ敬われるほどの事をしてから言え。
『そんな~。こんなに頑張って世界を用意したのに~』
大体、奴隷がどうやって主人公っぽく活躍すんだよ。
誰かに買ってもらわないと何もできないだろ?
『でもさ、異世界もののラノベって奴隷多いじゃん!』
そうなのか?さすがに最近読んでないから知らないが、そんな事になってんのか?
『そうそう、王道でいうと主人公に見初められた奴隷が、買われてみると実はスゴイ!みたいな?』
おい。
『何?』
もう王道から外れてんじゃねーか!主人公が奴隷でどうすんだよ!
『いやいや他にもあるよ~。仲間や家族に裏切られて奴隷に身をやつしても、起死回生する!とか?』
それ・・・裏切られる部分が無いとダメじゃね?
『だから~。ちゃんと準備したってば~!』
おお!もしかしてこれから誰かが救いに来るイベントが用意されてるとかか!それならチョット嬉しいぞ。
『へ?』
へってなんだ?
『いやいや、未来を用意したら面白くないじゃん?』
なんだと?
『その体の子、奴隷に耐えられなくて死んじゃった瞬間に病気治して転移で入れ替えたんだけどさ~』
ほうほう。
『その子、隣の国の伯爵家の次男で、
出来の悪い長男を跡取りにするために第一夫人の策略で事故に見せかけて行方不明になった子なんだよね~』
お ま え な
『ん?』
「ソコを俺にやらせろーーーー!」
あ、声に出ちゃった・・・通行人がほぼ100%こっち見てる・・・見ないでくださぃ・・・
『いやいや、ソコはツライでしょ?長男と第一夫人にイジメられる部分だよ!』
いやいや、物語の大切な部分だろ!
なんであらすじだけで終わらせてるんだよ!
それがあるから家族への思いとか、理解されない事への悲しみとか、復讐を考えるとか、そういう物語になるんだろ!
『そうなの?実際に見てたけど、その子優秀だから最後に奴隷にされる所まで普通に対処できてたし、盛り上がりも無かったし』
いやいや、それスゲーだろ?
盛り上がりが無いように見えて、内心では色々な葛藤もあっただろうし、イジメを上手くかわしたり、色々してたと思うぜ。
『そんなの傍から見ててわかんないよ!』
あったりめーだ!他人が見ててわかるんだったら、世の中からイジメなんか無くなるわ!
だから主人公にして内情を語るんだろーが!
なのに、そんな人生を歩んだ少年が、今は中身が俺だぞ!
なんの恨みも悲しみも哀れみもないまま、中身が他人になっちゃったら、この子の必死に生きてきた部分が台無しだろーが!
可哀想だとおもわねーのか!
『ん~~~~~~~~。じゃ、引き継ぐ?』
引き継ぐ?何を?
『その子の記憶』
え?できんの?
『そのくらいなら普通に。神様だし』
えーーーー。
『引き継ぎたいならそうするよ~』
いや、まて!
『どうしたの?』
俺がイジメの記憶に耐えられない可能性が高い・・・
『そうだよね~。他人のイジメられた記憶なんてどうすればいいかサッパりだよね~』
ん?そろそろ時間か?
『時間って?』
俺の展示時間
『展示時間?』
いや、俺は商品だから。日が暮れる前に店頭から下げられるんだよ。
後ろの板を外すと店内に繋がってて、そこから住居の部屋に移される。
あとはメシとシャワーがわりの水浴びとトイレだな。
ゆっくり寝たら、明日のシフト次第でまた展示されたり、部屋で待機したり、客の前に呼ばれて並ばされたりだな。
そうやって日々を過ごしてる。
『あ~~~。奴隷って大変だね』
いやいや、下手なとこに買われるより、ある程度売れ残ってる方が幸せって話しだぞ?
『そうなの?』
変態貴族に買われたりしてみろ?最悪な未来しか見えねぇ。
『がんばってね・・・』
んじゃ、おやすみ