095 皆で飲み会
鬼っ子のラキは、レイナスの安否を確認したいという気持ちで突っ走り、その後どうするとか考えていなかったらしい。
レイナスの家族から捜索を頼まれたのかとも思ったが、そういう込み入った事情も無いみたいだ。
「大人のする事だもの。家族はとやかく言わないわ」
「レイナスの父ちゃんは結構ぐちぐち言ってるぞ。アタシの父ちゃんが『うるせー』って怒ってたぞ」
2人は幼馴染だけあって、両親の交流もあるみたいだ。
ひょっとしたら繊細な事情があるかも? と思って、ガラテアと天狐には席を外してもらっていたけど、皆と一緒にお酒を飲む事になった。
ラキは見た目が120cm位しか無いけれど、れっきとした大人らしい。
そして、鬼人族は酒が大好きだそうだ。
乾杯の前に、ラキを皆に紹介する。
ラキは、ビールの入ったジョッキを掲げて堂々と名乗る。
「アタシはラキ! 天下に轟く大鬼人! 剛腕うなって暴れる金棒、屠る強敵八百万! 鬼人王国ベニアンの王位継承者にして、その頂点を掴む者! みんな、よろしく頼むぞ」
「ラキ、覚えまシタ」
「勇壮な女子じゃの。よろしく頼むえ」
「改めて、よろしくな。ラキは王位継承者って事は王女さまなのか」
「そうだぞ。空前絶後の王になってやるんだ」
ビールを一気に飲み干し、ぷはあと息を吐くラキ。
彼女が王族でその幼馴染となると、レイナスも良いところのお嬢さんなのか?
「……マスター、気になるなら、言ってちょうだい」
「レイナスも、貴族とかそういう家系なのか?」
「そうね。魔人帝国トラキスの皇女よ」
確か、魔人帝国と鬼人王国は隣合っていて、友好国って話だ。
そのトップ同士だから、幼馴染なのか。
皇女様かぁ。
レイナスは、俺と一緒に居て色々しているが……。
「色々大丈夫なのか? 俺は良いけど、皇女としての責任とかそういうのは?」
「問題無いわ。だからこそ、探索者をやっている面もあるわね」
つまり、政治的には動きませんってアピールを内外にしているのか。
「じゃあ、ラキは危険な事をして大丈夫だったのか?」
「ベニアンは一番強いやつが王様になるからな。冒険も一杯しなくちゃダメなんだぞ」
そういう事情もあるのか。
彼女達の本質が変わったわけでも無いのに、王女様と皇女様がここに居ると思えば、この場が高貴な空間に変わった様な気がしてしまう。
「神に類する妾もおるぞえ」
あ、普通な日常空間だったわ。
「まったく、無礼な主殿じゃ」




