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086 スモークウッドは好評

 今日来る予約のお客さんは落ち着いたので、受付を離れる事にする。

 サボるのでは無い。

 燻製でもって侵攻の狼煙を上げるのだ!


 という気合を入れて、バーベキュー家族の所へ向かう。


 燻製をするのは、段ボールで作ったスモーカー。

 それに温泉セメントを塗って硬くしている。

 こうすれば燃える心配が無くなる。


 スモーカーの一番下に金属トレイをセット。

 スモークウッドを載せて、火を付けたら後は放置。


 扉部分はガムテープ固定。

 アウトドアの工夫は簡単シンプルでオーケーだ。


 1時間もすれば、お手軽で美味しい燻製がお愉しみいただける。


「――そんな感じで、試しに作ってみたんでモニターお願いしていいですか?」


「いいですけど、段ボールにセメント塗ってるんだよね? ポロポロ崩れないの?」


 おっと、お父さんはDIYの経験がおありかな。

 普通のセメントならそうだけど、温泉セメントは魔法の硬さだ。


「特殊なやつで、衝撃にも強いんですよ」


 ペグハンマーを取り出し、バコバコ叩く。


「へえ、凄いね! このセメント買えるの?」


「あ~、日本ではライセンスとかで販売できないみたいですよ。新しく入った子達の伝手でちょっと使わせてもらっただけなんで」


 見る人が見ると、温泉セメントに食いつくな。

 これを売るとなると、面倒の方が増えそうなので誤魔化した。


「ぎゃは~、おもしろーい」


 家族のお父さんと話している間に、お子さんがスモーカーをポコポコ叩いていた。

 小さい手で叩くからか、高い音がする。


 後は、スモーカーが風で飛ばない様に周りにペグを打って固定してもらうようにして、バーべキュー家族の下を離れた。



 ▽▼▽



 日が沈んだ頃。

 バーベキュー家族がスモーカーを事務所に戻しに来た。


「燻製どうでした?」


「煙モクモクで匂いプンプンしたー」


「そうかぁ、モクモクしたんだねー」


 子供の率直な感想が可愛い。


「やった事無かったから、どうかと思ったけど、凄く美味しくなったよ。そのまま入れられるのがソーセージしか無くてさ。これならもっと別の食材も持ってくればよかったよ」


 確かに、野菜は慣れないと戸惑うし、チーズやゆで卵は予め用意していないと持って来ないだろう。


 このお父さんは、焼いた肉を串に刺して燻製し、その後塩コショウで食べたみたいだ。 

 そういう工夫も面白い。

 

 ついつい食べ過ぎたと、お腹をぺしぺし叩いていた。

 お母さんの方は、お腹のリミッターを解除したらしく、現在は車のシートでぐったりしているそうだ。


「煙のやつって買えるの?」


「スモークウッドですね。作り始めで数が無いけど、少しなら大丈夫ですよ」


 今の所用意できるは、サクラとクルミとリンゴの3種類だ。

 お父さんは1本ずつ全種類買っていった。


 ふふふ、計画通り。

 これであの家族は、最低でももう1回は燻製をするのに、キャンプ場に出かけるだろう。

 ウチに来てくれれば良し。

 別の所に行っても問題無い。


 あの味になるスモークウッドはウチに来ないと買えないのだから。

 燻製は手軽にできるが時間もかかかる。

 1度ウチに来て他へ移動とか考えたら、そのままウチを利用するのがマストだろう。


 こうして、地道にウチへの依存度を高めてゆくのだ……っ!


「あら、マスター、悪い顔ね。世界征服でも企んでいるの?」


 うん? レイナス、ひょっとしてキモイ顔になっていたか?

 じゃあ、変顔しよう。


「これは?」


「ぷふっ! 良い顔ね。好きな顔よ」


 その後、にらめっこになった。


 優勝はガラテアになったけど、反則じゃないか?


「ガラテアはゴーレムですカラ」


「くははっ、かように面妖な顔になるとは、ガラテアはなんとも愉快な女子おなごじゃのう。これ、寄せるで無いわっ、ぷふぁ」


 天狐は笑い過ぎて、その晩はぐったりしていた。



溶接作業の時の仮止めにガムテープを使う事があるのですが、意外と熱に強かったりします。

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