082 ゴーレムと薪の生産施設を造る
クリスタルゴーレムに、仕事が欲しいと頼まれた。
どこかの狐とは大違いである。
「妾は十分働いておろうに。そもそも、この事の発端は妾じゃ」
「確かに。変に揶揄して悪かった」
「『まんごう』を干した物を所望するのじゃ」
「わかった、今度作ろう」
ゴーレム達を中心に、山を1つ拓いて、薪用の人工林にする。
彼らの労働力は、凄まじかった。
1体1体が、パワーショベルやブルトーザーの様に力がある。
それが数百体。
俺が手を出さなくても、山は一気に禿山になった。
速さで言えば、俺がダンジョン改変の力を使えば早いが、ここはゴーレム達に任せた。
俺も、人に仕事を任せる事を覚える時期にきたのかもしれない。
心成し、ゴーレム達は生き生きとしている様に見える。
伐採した木の運搬や薪割りはレイナスに監督してもらう事にした。
「ええ、指揮はまかせてちょうだい」
山の地下にトンネルを掘り、大規模な乾燥スペースとする。
こちらは、崩落の危険などもあるので、ダンジョン改変で一気に作った。
送風のトラップを応用して、空気の循環力を高めている。
禿山に木を植えるのは俺しかできない仕事だ。
耕して、種を召喚し、植える。
作った畑をダンジョン改変で移動させる事はできる。
けれど、その畑を作るのは、俺が手を動かす必要がある。
地道な作業だ。
両手にクワを構えて、ガシガシ土を耕す。
斬撃を強化した事と、毎朝の鍛錬の効果が出ている。
走る速さで耕せる。
今回植えるのは、松。
松の種は松ぼっくりの中にある。
種を召喚しようとイメージしたら、松ぼっくりごと現れた。
松ぼっくりを軽く握って崩し、空に投げる。
すると、翼の様なヒダの付いた種が、風に乗って舞ってゆく。
……楽しい。
何だか遊んでいる感覚で、種まきも終わってしまった。
自分の仕事が終わったので、レイナス達の様子を見にゆこう。
▽▼▽
「はい、次、87番」
レイナスが何やら数字を読み上げる。
そして、レイナスの前ではゴーレムが2手に分かれて、組体操の様に重なり塔を作っていた。
その片方の塔から1体が、のそのそと抜け出る。
巨体が動くからか、重なり合っているゴーレムもグラグラ揺れている。
「はい、次、4番」
レイナスが数字を読み上げれば、全体に緊張が走る。
先程とは反対の塔の一番下のゴーレムが抜け出そうとして動くが――
上手く抜けられずに周囲を巻き込み転倒、塔は崩れた。
「はい、西組の勝ち!」
勝者の名乗りを上げられたゴーレム達は、一斉に「ピーーー」っと音を鳴らして喜びを表現した。
って、何やってんの?
いや、ゲームしていたのはわかるけど、何でこんな事になっているの?
「あら、マスター。種まきは終わったの?」
「うん、さっき。レイナス達は」
「ずいぶん前に薪割りは終わったわ」
乾燥室の一画では薪が山の様に重なっていた。
「それで、今のは?」
「ゴーレム達が何かしたいって言うから、考えてみたのよ。最初は勝ち抜き戦の武闘会をしたがったのだけれど、止めさせたわ。いくら再生するっていっても、それはちょっと、ね? コレなら平和的でしょ?」
「確かに。というか、ゴーレム達は喋れないよな?」
「それは、ほら」
レイナスは渡しているタブレットを見せる。
成る程、タッチペンを使ってメモ書きをさせたのか。
ゴーレムが1体近づいてきて、タッチペンを取る。
『ますたーもごいっしょに』
はは、俺になら直接伝えてくれても良いのに、これはこれで楽しいコミュニケーションだな。
よし、レイナス組と俺組に分かれて勝負してみようか。




