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080 ウチの農作物を売り出す

 天狐がウチに住み込みで働く事になった。

 ……働く事に――


「……嫌じゃ、寝るのじゃ。妾の1日は3日寝る事から始まるのじゃ……っあ~! 起きるのじゃ。起きるから顔を掴んでいる手を緩めてたもれ!」


 働く事になった。


 狐の姿の時はヘラジカよりも大きいので、基本的には人間の姿になって生活してもらう事にする。

 身長はレイナスより少しだけ低い位かな。

 後で服の買い出しにも行こうと思う。


「天狐は何か得意な事はあるか?」


「そうじゃのう……働かない事かや」


「それ以外で!」


「そもそも、人間の仕事で何ができるか分からんのじゃ。主殿が見出してくりゃれ」


 そういう事で、色々させてみた。

 農耕を司るという事から、農作物の収穫は手際よく的確で速い。

 そして、帳簿を見せるとかなり理解が早かった。


「近頃は産業の神として祀られる事があるのじゃ。だからかの」


 サボり癖は強いが、基本的にハイスペックみたいだ。


 天狐の仕事は、ここで生活する事になった名目とおりに、収穫する農作物の管理を中心にする事になった。

 クリスタルゴーレムを数体、交代で彼女の部下として配置する。


「もう少し器用な者を付けて欲しいんじゃがの」


「全部任せるつもりじゃ無いだろ? 育ててやってくれ」


「そ、そんなつもりは無いのじゃ。しかたが無いのう」


 昼食を終えたタイミングで宅配のトラックがやってきた。


「ちわ~。フォックス便で~す。お荷物の回収に伺いました」


 10トンクラスの冷蔵冷凍車に3人の男が乗ってやって来た。

 どうやら彼らが、昨日天狐の親が言っていた手の者の様だ。


「こんにちは。そのトラックよく入ってこれましたね」


「いや~、ギリギリでしたよ」


「それで、オキツネ様からの依頼なんですが、お荷物はどちらに?」


「うむ、それは妾が案内しよう」


「! て、天狐様!」


 天狐をみると、3人の男達は平伏しだした。

 こういうのを見ると、天狐は崇められる存在なのかと実感する。

 こちらをチラチラ見てドヤ顔をしなければ、もっと神々しくなれると思うのだが。


「台無しね」


「テンコですカラ」


 ガラテア、ばっさり切るね。


 天狐の指示の下、3人の男達はテキパキと動き、予めまとめていた収穫物をトラックに積んでゆく。

 俺も手伝おうかと思ったが、積み込みのバランスとかがあるらしく、やんわりと断られた。


 集荷を終えた彼らに、一息入れるよう声をかけて、ウチのブドウジュースをふるまった。

 お茶うけに、塩もみしたキュウリを添える。

 自分たちが運ぶ物の味を知ってもらうのも良い事だろう。


「これ……こちらで採れた物なんですか?」


「ああ、美味しいでしょ?」


「いやぁ、凄すぎて言葉が見つからないですね」


「かのお方がこちらを大絶賛なさってたんで心構えしていたんですが、これは……」


 好評だ。

 3人のうち1人は、キュウリを一口食べだら目を剥いて固まっていた。


 今後の予定として、1日2回集荷に来る計画だそうだ。

 その際に、今来た3人のうち誰か1人は必ず同行するとの事。

 土地の性質上、あまり事情に詳しくない者を寄越すのはまずかろうという配慮らしい。


 助かる。

 トラックが通りやすい様に、道を整備する事にしよう。


 帰り際に銀色のクレジットカードとキャッシュカードを渡された。

 作物を売ったお金はそれらが使える口座に振り込まれるらしい。

 およそ3日後を目安に振り込まれてゆくとの事だった。


 ▽▼▽



 初めての集荷から3日経って、口座額を確認してみた。

 美味しいとは言っても極端に値が上がらないだろうから、数万円程度の取引なのかなって思っていたけど――


「いち、じゅう、ひゃく……マジか」


 残高には108万円と表示されていた。


 今日までの分が一気に振り込まれたか? と思って細かくみると、初日の分だけだった。

 初日だけ高値の付く作物に絞った訳では無いらしい。

 天狐の話しでは、偏りが出ない様に出荷物は調整していると言っていた。

 ……これは毎日100万円の収入があるって事か。


 マジか。


 税金対策、がんばろう!



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