008 ウサギ達との出会い
朝の見回りでゴブリンを倒した後は、薪割りをして午前中を過ごす。
午後になって畑に行く。
するとそこは、スペースいっぱいに作物が育っていた。
ニンジンは葉っぱも元気で引き抜くと立派に育っている。
キャベツも大振りでしっかりとした重みがあった。
まる1日で収穫可能とか、凄いな。
ニンジンで、間引いた物と生えるに任せた方とを比べてみる。
収穫量はどちらでも同じ感じだった。
では、味はどうか?
ぱぱっと土を掃って生でかじった。
間引いた方は、甘みがある。
野菜スティックにできそうだ。
生えるに任せた方は、ニンジン独特のえぐみや苦みが強い。
滋養に良さそうだ。
ニンジンの味比べをしていると、足元からプイプイと音がする。
何だと思って見てみると、そこには2羽のウサギがいた。
片方は耳がピンと立っていて、シルバーグレイの凛々しい毛並み。
もう片方は耳が垂れていて、ゴールデンで豪華な毛並み。
俺が手に持つニンジンをジッと見て、口元をひくひくとさせている。
欲しいのか? まあ、欲しいんだろう、この欲しがりさん達め!
さあお食べとニンジンを向ければ、カリカリと食いついた。
どちらも良い食べっぷりである。
このウサギ達は、えぐみの強い方が好みの様だ。
クンクンと匂いを嗅いだら、まずそちらの方から食いついている。
可愛い。
小動物可愛い。
ウサギを眺めて思うのは、この山のウサギに、こんなに綺麗なのは居ないはずだという事だ。
耳が短めでくすんだ茶色のウサギしか見た事が無い。
今の時期はキャンプ場にお客さんが居ないから、誰かが連れてきたとは考えにくい。
そして何よりもこの子達には見覚えがある。
ゲームのペットシステムで出てくるウサギとそっくりなのだ。
もうね、この子達もゲームの影響の結果だよね。
ただ、念の為に彼らの意志を訊いてみよう。
ウチの子になるなら、何も持っていない左手に来てください。ニンジン食べ放題は約束します。
自由に生きて畑を荒らしたいのなら、好物のニンジンを持った右手に来てください。明日からは敵同士になります。
そのどちらも嫌なら、ここから出て行ってください。
そう問いかけてしばらく待つ。
一応、もし右手に来たとしても殺したり叩いたりとかはしない。
精々、家の中には入れて上げないだけだ。
出て行くにしても、たまには山の中にニンジンのおすそ分けを置いておこうと思う。
さあ、どうだろうか?
すると2羽ともが、プイプイ言いながら左手に顔を摺り寄せてきた。
ウチの子になるって事で良いんだね。
ふさふさ可愛い。
柔らこい可愛い。
さあ、ニンジンをもっとお食べ。
もう、おっちゃん張り切って畑を増やしちゃうぞ!
ニンジン帝国を作る勢いで開墾しちゃうぞ!
新しい家族の為に、午後はニンジン畑作りに精を出した