表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

79/175

079 天狐がウチに住む事になった

 天狐の両親がやってきて、ウチで採れた作物を売ってもらう事になる。

 話しはまとまり、会談はお開きとなった。


「主殿よ。大変に馳走になった」


「ああ、お粗末様でした」


「して娘よ。励むのじゃ」


「おもう様、何を言うておるのじゃ?」


「我の元におれば、おぬしは怠けに過ぎる。主殿の元へ大使として駐する事を命じるゆえ、励むのじゃ」


「いや、待ってくれ。勝手に決められても困るんだが」


「主殿、手の者との仲介に、誰か駐する必要があるのじゃ。受け取る作物も偏りが出ぬように、予め知らせる必要があるでな。娘の事は一介の侍女と思うて使ってくだされ」


「そういう事なら仕方がないか」


 天狐が住むとなると、小屋を造る必要があるな。

 ヘラジカより大きいから、家には入れないだろう。


 天狐が後ろで「嫌だ、働かないのじゃ」とか言っているなか、天狐の両親は光の柱に乗って帰っていった。


「うぅ、天は妾を見放したのじゃ」


「天狐が天に見放されたら、単なる狐になるのか?」


「それは空狐(くうこ)じゃ。そこまで格を落とされてはおらんが、信仰の繋がりを切られてしもうた。これから妾自身で魔力を集めねばならんのじゃ」


「つまり、自立しろって事か」


「無理じゃ!」


「情けない事を堂々と言うなよ」


「うぅ、魔力が無ければ『すまほ』が使えん。待ち受け専用の文鎮になってしまうんじゃ。主殿、助けてたもれ。見放さんでくりゃれ」


 嘆いている原因は、すごくくだらない事だった。

 天狐の両親にはウチで預かる事を了承したし、いつまでもウジウジされるのも困る。

 どうせなら、積極的に働いてもらいたい。


「ああ、天狐がしっかり働くなら、何とかしてやるから、もう嘆くな」


「……よろしくお願いしますのじゃ」


「ねえ、マスター。私が言うのも何だけど、そんな約束して良いのかしら?」


「レイナスがって……。いや、相手は狐だぞ。アレは無い方向でソレだろう。もしもの時は、SS(スターストーン)を使えば何とかなるかもしれないしな」


「そうかしらね……。じゃあ、テンコ。いつまで地面に転がっているの? 貴方が降らせた雨で泥だらけになっているじゃない。温泉で流すわよ。ほら、マスターもガラテアも手伝って」


 そういう訳で、皆で温泉に入る事になった。


 裸の付き合いは大切だな。

 相手が狐だから、気兼ねしないでとても良い。


 これから生活を共にしてゆくから、ウサギ達やスライム達にも天狐を紹介する。


「よろしくお願いするのじゃ」


 彼らにも天狐は受け入れられた様だ。

 さあ、皆でわいわい温泉に入ろう。


 ……。

 ……。

 ……。


「これは私も予想外だったわ」


「まさに面妖デス」


「……俺は何もしていないぞ」


「ええ、わかっているわ」


「ほれ、洗うてくれるのじゃろう? 手間が減る様に姿を変えたのじゃ。よろしく頼むえ」


 洗い場の椅子には、和風な顔立ちで胸の大きな金髪美女が座っていた。


「もう、仕方ないわね。皆で洗い合いましょう」


「ボディーソープにハーブをブレンドしまシタ。試しまショウ」


 ……。


「マスター、諦めて」


「裸の付き合いは大切デス。マスターから教わりまシタ」


 この後、皆でもみくちゃになって盛大に洗いっこをした。

 この日、洗いっこ以上の事は無かったと、重ねて記す。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ