071 異世界の妖精種
キャンプ場に新規サイトを作る予定を立てる。
コンセプトは『妖精の隠れ里』。
異世界の妖精達が、人を避けてひっそりと暮らしている感じの森を演出したい。
花が舞い、草木が躍る、そんな感じで。
「それは……だいぶメルヘンね」
「良いだろ? メルヘン。メルヘンとかロマンとか、そういうのが人生を潤すのに大切だろ?」
「まあ、それは肯定するわ」
「ありがとう。そこで、実際に異世界の魔人であるレイナスに、妖精の暮らしについて教えてもらいたいんだ。良いかな?」
「良いけど、あまり参考になると思えないし、夢の無い話になるわよ」
それでも構わないので教えてもらった。
レイナスが来た世界には妖精種の人達がいるそうだ。
そう、妖精でも人だという。
ドワーフやハーフリング、エルフなどが居て、他の人種と交雑が可能だとの事。
そして、交雑が進んでいるから、どこの国のどんな地域にも、妖精種は居るという。
ハーフ、クウォーター、先祖返りとその濃さはまちまちの様だ。
けれど、そんな状況をエルフ種だけは良しとしなかった。
プライドが非常に高かったらしい。
良い意味で言えば高潔だが、それを他に押し付けたら高慢でしかないだろう。
それで、他種と交流を盛んにする妖精種を排斥しようとして(交雑したエルフも含んだそうだ)、逆に多種族連合を組まれて、エルフ達の住む隠れ里は虱潰しにあばかれた歴史があるという。
そんな過去があるので、妖精種は閉鎖的なコミュニティを作らない様に気を配り、怪しい地域があれば積極的に介入してゆくのだとか。
種族毎の特色は出しつつも、誰でも訪れられるオープンな里ばかりだそうな。
なので、妖精の隠れ里なんて物は存在しないらしい。
また、そんな経緯があるから、各種族毎に治める国はあるが、エルフが治める国だけは無い様だ。
更に騒動に発展したら大変だと、建国の機運が高まれば他のエルフたちが協力して未然に防いでいるのだとか。
多くのエルフは、様々な国で定住しているが、未だに他種族との共同生活を拒んで放浪しているエルフも居るらしい。
「ね? 夢が無いでしょ?」
「……うん、思ったより世知辛かった。もうちょっと異世界らしい夢のある話ってある?」
「そうねぇ……。夢のある話だと、ダンジョンから宝が出てきて一獲千金とか?」
「うん、夢があるね」
宝箱か。
何故かダンジョンにはセットで登場する宝箱。
その中に財宝や強力なアイテムがあったらと思うとワクワクする。
どちらかと言うと、それは俺が設置する側になるんだろうが……出せるのか?
コア達が、こんな宝箱はどうかと提案してきた。
そうか、出せるのか。
海賊の宝箱風や、お城にある豪華な宝箱風や、果ては古代遺跡の壺風と沢山ある。
入れるお宝は……自分で用意する必要があるのか。
回復薬で良いかな?
……ほう、設置して時間をかければ、周囲の魔素を取り込んで自動生成するのもある、と。
凄いな。
幾つか設置しておこう。
それと――
「マスター? キャンプ場の方は良いの?」
「あっ! 済まない。ダンジョンの宝箱があるって知って、そっちに気がそれた。今は新規サイトの事に集中しないとな」
「うふふ、そうね。話を戻すと、妖精の隠れ里をコンセプトにするなら、こっちの世界の映画とかゲームのコンセプトアートの方が参考になると思うわよ」
「そんな感じで良いのか?」
「私から見て幻想的だって思うもの。地球人の想像力は豊かね。良い事よ」
そういう事なので、変に構えず好きにやってみる事にしよう。
宝箱の方は、水晶のダンジョンの方に設置しました。




