007 ゴブリンは翌日も出た
ARゲームが現実化して2日目。
昨晩の酒が残る事も無く、スッキリと目覚めた。
早速畑を確認すると、作物はかなり成長していた。
これなら午後には収穫しても問題無いだろう。
体操をして身体をほぐしてから、キャンプ場の敷地を見回る。
ウチが経営する天樹の森キャンプ場は、親父が作った施設だ。
爺さんが早くに亡くなって遺産が入ったら、脱サラして土地を購入、キャンプ場開業という無鉄砲さあふれる経緯でつくられた。
丁度良い時期だったらしく、広大な土地を買えたとの事で、周囲一帯がウチの土地になる。
その分、現金はすっからかんになったらしいが、借金はしなかった様で、お袋と俺と家族3人で慎ましく暮らすには十分な稼ぎはあった。
俺は山暮らしが好きだから、高校を卒業したら親父と一緒にキャンプ場半分に林業半分といった生活をしていた。
男手が2つになったから、生活に余裕が出始めた所で両親は交通事故であっけなく亡くなってしまった。
自爆事故だったので、他の人に怪我をさせてしまう事とかが無かったのは不幸中の幸いだったかもしれない。
土地や建物の相続に予想外な費用がかかってしまい、俺の手には、わずかな生命保険だけが残った。
そんなこんなで、今この集落には俺1人しか生活していない。
限界集落というよりも、もう消滅寸前集落である。
1世帯しか無いから、『集落』では無いのかな?
でも、きちんと住所はあるし、郵便物も届くから、集落って言っても問題ないよね。
できれば、ここに移り住んで一緒に仕事をしてくれる人が増えないかな? なんて夢想する事もある。
けれど、遊びに来るのと暮らすのとでは全然違うから、そうそう上手くいかないものだ。
給料を満足に払えるかどうかもわからないのに、住み込みで働いてくれとかは、とうてい言えない。
だから、今の所は自分1人でもやれる事で、集客力をアップしたい。
そして、いずれは人手を増やしたいなと思う。
これはお嫁さん探しにも言えるな。
出会いはあるけれど、皆はお客さんだ。
最近はソロキャンプの女性もいるけれど、だからって変にアプローチしようものなら、その人のせっかくの休日を台無しにしてしまう。
遊びに来ているのに、生活を意識させるのはダメな気がするのだ。
適度な距離感はきちんと守らなければならない。
そして出会いと言えば、ゴブリンだ。
今日も居る。
適度な距離感を保ちつつ、今回は斬撃で相手してみた。
こっちに気づいて飛びかってきたが、2刀流の連撃で危なげなく倒す事ができた。
十字に剣を振るって、クロス・スラッシュ!
ゲームの方にそんな技は実装していないけれど、現実では再現できるので楽しい。
むしろ、無理やりにでもテンションを上げないと、やってられない。
もっと技を開発してみよう。
剣をAR棒に切り替えて、ゴブリンの死体をポンポン叩きSSを入手。
魔法や斬撃は嬉しいけれど、早くゴブリンに悩まされない生活に戻りたい。