067 自意識を持つゴーレム
召喚した女性型ゴーレムが、コアを食べたいという。
ただし、現在稼働している16体じゃなく、俺が割ってしまった方だ。
だからコア達、落ち着くように。
それで、破片ならあげちゃっても大丈夫か?
稼働している君達には、手を出さないようにさせるから。
良いか、ありがとう。
「ダンジョンコアも良いみたいだから、使って良いぞ」
「ありがとうございマス。コアにも感謝ヲ」
ゴーレムはコアの破片を手に取ると、それを口へ運びガリガリと齧り始めた。
取り込むって、そういう直接的なやつなのね。
「へえ、ゴーレムが食事をするなんてね。味があるのかしら?」
「(もごもご)甘い味デス」
味が気になったから、小さな破片を舐めてみる。
痛い。
破片が鋭くて、口を切ってしまった。
「もう、マスターったら気を付けなさいよ」
レイナスに回復薬を塗ってもらった。
面目ない。
回復薬の効果は瞬時に出るので、傷は直ぐに塞がった。
だからレイナス、顔を撫でるのはそれ位にして欲しい。
「イヤよ。本当に元通りになったか、もっと確認させなさい」
それって、撫でられて照れてる俺をからかって楽しんでいるだけだよね?
……自分がするのは良いけど、される側になると凄く気恥ずかしいな。
閑話休題。
鋭いコアの破片も難なく齧るのは、やっぱりゴーレムならではなのだろう。
口の動きを見ても、ぷっくり柔らかそうなのに、不思議だ。
目元が隠れているから良く分からないが、何となく美味しそうな雰囲気を出しつつ、ゴーレムはコアの破片を食べきった。
大きなコアを全部食べたのに、お腹が膨らんだりはしていないので、実際の捕食とは違った行為なのだろう。
「それで、どんな能力が向上したんだ?」
「コアの機能を統合いたしまシタ。浮遊も可能デス」
そういうと、床を滑るように移動していたゴーレムは、ふいっと浮き上がった。
その周りを、コア達が取り囲む。
その見た目は、アクションとかシューティングのボスキャラっぽいな。
コア達によると、このゴーレムにもダンジョンの管理運営を補佐する機能が備わった様だ。
実際に、ゴーレムからイメージが伝わって来る。
『名前が欲しいデス』か、わかった。
人間と見まごう精巧さで、自我があるゴーレム。
連想される逸話は、ピュグマリオーンとガラテイアか。
「よし、今日から君の名はガラテアだ」
「はい、ありがとうございマス」
コア達は名前は要るか?
……要らないのか。
欲しくなったから考えるから、その時は遠慮しない様に。
ただし、センスの方は保証しない。




