063 温泉型ダンジョンの需要は
新たなダンジョンコアを出す事に成功し、俺は名実共にダンジョンマスターとなった。
それで把握したのだが、この水晶のダンジョンでは浅層に沢山の探索者が侵入している。
彼らに実りを与えず引き上げてもらう為に、ゴーレムは深層へ移動させその周辺だけを警護させる事にした。
それと、俺たちも帰ろうと思ったら、転移ゲートの前にワープしてしまう。
これもダンジョンコアの機能の様だ。
他にも色々とできそうなので、家へ帰る前に試してみる事にする。
まず、内部構造をいじれる。
手始めに、中層域をコピペして5倍以上長くした。
これで、ゴーレムが居なくなった事で進行スピードの上がった探索者たちも、引き返す者が多くなるだろう。
「地味だけど、その分厄介ね」
「しかも、コピペ4回目は、左右を反転させた」
「同じ事の繰り返しと思った所で変化をつけるのね。これは心が折れそうね」
「危ないトラップを仕掛けるよりは良いだろう?」
「確かに、余計な敵愾心を稼ぐよりは良いと思うわ」
内部構造をいじる延長で、設置物の移動も楽にできた。
なので、致死性の高いトラップは排除して、ベタベタするのとヌルヌルするのを沢山設置する。
ダンジョンに入った当初に、試しに作った畑や温泉にテントは、問題無く残っていた。
それらも、まるでタイルをスライドさせるみたいな感覚で移動させる事ができた。
やはり、トラップの一種という扱いだったのか。
ちなみに、畑ではちゃんとニンジンが収穫できた。
苦味が旨い。
さて、テントや畑は気軽に作れたりするから気にしていなかったけど、温泉は作るのも手間があったから、移動が簡単になった事で新しく何かができそうな予感がする。
広くしたり深さを変えたりできるだろうか?
イメージしてみると、できた。
1人がやっと入れる大きさから、数百人規模の大浴場まで自在に変えられる。
ダンジョン内の構造を変えたら、もっと大きな物にもなりそうだ。
「温泉型ダンジョンって需要あるかな?」
「良いと思うわ。でも、鬼人王国と少し衝突するかもしれないわね」
この水晶のダンジョンは、レイナスの故郷の魔人帝国と、その隣の鬼人王国との境界域に出現したらしい。
両国は友好国だが、風呂の入り方に関して時には対立するそうだ。
魔人帝国側のトラキス式は、個人で入るか家族とゆったり静々と入る。
対して鬼人式は、飲んで食べて大騒ぎしながら皆で入る。
魂が解放されるべき入浴において、その方法が真反対なら対立するのもうなずける。
「そうは言ってもレイナスは、風呂で食事も平気だよな」
「ええ、殆どの人達はどちらも楽しむのだけれど、口うるさい原理主義者がいるのよ。あと、その日の気分で違う事もあるわよね」
なるほど、保守は良いけど、それを押し付ける人が居ると厄介だろうな。
「更に言えば、こっちで言うスチームサウナじゃないとお風呂じゃ無いって言う国もあるわ」
異世界お風呂事情も多彩な様だ。
大浴場と、個別の家族風呂って感じにすれば受け入れられるかな?
はっはっはっ、異世界の女性の裸を見たいって事じゃ無いぞ。
ダンジョン内の構造が手に取るようにわかるけど、邪推はよすんだ。




