062 異世界でキャンプと言うと、難民キャンプの事らしい
SSを握りしめて願ったら、新しいコアが出た。
念の為、AR棒で突いてみると、このコアの使用権限は俺に設定される。
すると、このコアを介して何ができるのかが、色々と分かった。
割れた方だと、具体的な事は全然分からなかったのだ。
分かる事は、設置可能なトラップや、呼び出せるモンスター。
このダンジョンの全体的な広さや、各階層の様子等。
浅層では多くの探索者がゴーレムと戦っているが、この深層までは他に誰も来ていない様だ。
この事から、レイナスが優秀な探索者だとも分かった。
ただ、もっと時間をかければ浅層の探索者も、いずれはここへやって来るんだよな。
そして、転移ゲートの先にも。
どうしよう? まだウチのキャンプ場には、そこまでの受けれ体制が整っていないぞ。
レイナスに意見を求めてみる。
「ここのダンジョンは実入りが少ないから、早々に帰るんじゃないかしら? それに、ここまで来られる探索者なんてあまり居ないわよ」
「お客さんとして来てくれるなら、俺は歓迎したいけど、その辺はどうだ?」
「キャンプは手段であって、目的にはならないと思うのよ」
異世界人で賑わうキャンプ場っていうのも楽しそうだと思ったけど、文化の違いはどうしようも無いかな。
犬耳や猫耳の獣人が芝生の上でゴロゴロしていたり、有翼人がハンモックにゆられてくつろいだりとかは、まだまだ遠い夢なのか……。
「街壁の外には流民が集まっている地域もあるし、タープやテントを張ると、そっちを連想しちゃってイメージは良く無いわね。社会全体の生活にゆとりがなければ、キャンプは楽しめないわよ」
もっともな意見だな。
ダンジョンマスターになった事で、ゴーレム達の管理権限も獲得した。
探索者がゴーレムと戦って死亡者が出ても嫌なので、ゴーレムは深層まで移動させる。
そして、転移ゲート周辺の警備にあてる事にした。
もし他のモンスターがやってきそうになったら排除してもらう。
レイナスが言う通りに、探索者にしても何日も潜っても何も無いとなれば、そのうち引き上げるだろう。
それでもやって来る様な奇特な人が居れば、持て成そうと思う。
モンスターが転移ゲートを通って日本側へやって来る事は心配いらなくなったので、俺達も帰る事にした。
そう思った刹那、俺達は転移ゲートの前に居た。
ダンジョンコアがあると、こんな事もできるのか。
そして、移動させたゴーレム達が整列している。
お前達も、転移して移動したんだな。
例えば、ロボット掃除機は見ていて可愛らしかったり和んだりする事がある。
それは、ゴーレム達にしても、そうだ。
さっきまでは敵対していたけど、ぎゅうぎゅうに身を寄せ合って整列している姿には愛嬌を感じる。
あまりのみっしり具合で、何体かは手足のポジションが悪いらしく、位置の調整をしようともがいているのもコミカルだ。
だからなのか、これから仲間になると思ったら、今まで倒しまくっていた事に罪悪感を覚える。
「気にしても仕方が無いわよ。戦争で敵地を併合したら、昨日の敵兵は今日の領民よ。これから大切に扱ってあげたら良いんじゃないかしら」
そうだな、そう思う事にしよう。
レイナスが言うには、ゴブリンの場合はどうあっても相いれないが、ゴーレムなら普通に使役している所もあるそうだ。
スライムと一緒で、条件が合えば人種と生活を共にできるモンスターなのだとか。
とりあえず、彼等には解散してもらって、周辺の警護に当たってもらう事にする。
指令を伝えると、一瞬目が光って、のそりのそりと移動して行った。
さて、直ぐにでも帰ろうと思ったけど、ダンジョン内で転移できるとなると、他の事も気になってきた。
帰る前にダンジョンマスターとして他に何ができるか、もうちょっと確認をしてみよう。




