055 転移ゲートを発見する
異世界からの転移ゲートの捜索に集中し始めてから幾日。
前方にキラキラと輝くガス状の何かを発見した。
遠くに見える雲の塊が、ぎゅっと小さくなって地上に降りてきた様な印象をうける。
そして、それ自体が虹の様に光っていた。
「やっと見つけられたわね。あれが転移ゲートよ」
レイナスが言うには、転移ゲートとはダンジョン内の隔絶された空間を繋ぐ不思議な現象だとの事だ。
転移ゲートを抜けた先には希少なお宝があったり、強大な魔物が居たりするらしい。
その現象の解明は進んでおらず、自然現象なのか意図して設置された物なのかも解らない様だ。
レイナスの持論では、ダンジョンを造った者が設置した装置という事だったが、地球に飛ばされて俺と出会った事でそれも揺らいでいるらしい。
魔力的特異点を繋ぐ自然現象と思った方がつじつまが合うのだとか。
「って、この辺の土地に魔力は少ないんだろう? 魔力的特異点って何だ?」
「貴方よ、マスター。本来なら周りに満ちるべき魔力が凝縮されたかの様な存在なんだもの。特異点以外の何者でもないわ」
そう言われると、そんな気がしてくる。
ちょっと前に街へ食料の買い出しに行った時に、魔法が使えるか試してみた。
結果、問題無く使えた。
なので魔法が使える様になったのは、土地に何かあったからでは無くて、俺自身に変化があったからだと思っている。
けれど、その魔力の特異さとかはよくわからない。
レイナスは魔法を使えば魔力が減ってゆく事を実感できるらしい。
けれど、俺はどれだけ魔法を使っても何か減っている気はしない。
腕を振る程度の疲れはあるから、精々、腹が減るくらいか? ってそういう話じゃ無いよな。
脱線した。
自分がどうこうよりも、目の前のゲートをどうするのか? が問題だ。
「それで、俺は転移ゲートって初めて見るから、何をどうしたら良いかわからないんだ」
「マスターが気にしている事って、ここを通じてモンスターが迷い込んで来るかどうかよね?」
「1番はそれかな」
「そうなると、来る前に駆除するか、来てから駆除するかよね」
「それじゃあ、中に入って適当にモンスターを間引いたら良いのかな」
「こちらで罠を張っても良いけれど、それも良いわね。でも、ちょっと待って。中に入るなら最低限の準備はしないとダメよ」
少なくとも、1週間分の水と食料は持って行った方が良いとレイナスに言われた。
何らかのアクシデントで、直ぐには戻ってこれなくなるかもしれないからだ。
山に入る時は、どんなに慣れた場所だとしても、ちょっとした携行食は持っているが、迷宮はもっと用意が必要な様だ。
なので、1度戻ってその準備をする。
備蓄をチェックして、必要なら買い出しにも出ようか。
そうしたら、ダンジョンアタックだ!




