053 子ウサギも可愛い
キラリが無事に出産を終える。
母子ともに健康の様だ。
心底、ほっとした。
けれど、もうしばらくはそっとして欲しいとスモモにたのまれた。
そうか、今が一番繊細な時期なんだな。
「そうね、マスターはもうちょっと落ち着いた方が良いわ」
「そう思うんだけど、理屈じゃ無いだろう? こういう事って」
「時折マスターは言ってるでしょ? 『適度な距離感が大切』って。これもそうじゃないかしら」
「う~ん、そうは言っても家族だぞ?」
「家族だからこそ、よ」
レイナスに言われて気付いた。
確かにそうだな。
ウサギ達は感情豊かだ。
構って欲しくて甘えてくる時もあれば、気ままに自由にしたがる時もある。
意志や感情がしっかりとある。
増してや、今は親になったのだ。
気持ちの変化も大きいだろう。
彼らを見守るのは大切だな。
構いたい気持ちをぐっとこらえて、そっと見守る事、1週間。
キラリが子供達をお披露目してくれた。
白っぽい銀色の毛並が1頭。
白っぽい金色の毛並が1頭。
黒い真珠色の毛並が3頭の、合計5頭が産まれた。
はあ、可愛い。
小さくて毛が本当の産毛でホワっとしていて、可愛い。
皆まとめて両手で掬えそうな感じに、身を寄せ合っている。
もこっとスベスベで大福モチみたいだな。
耳がぴょこんとしていて、可愛い。
これから伸びて成長してゆくのかぁ。
名前は考えているのか?
……俺がつけても良いが、こういうのは両親がつけた方が良いんじゃないか?
なんだ考えているのか。
遠慮せず聞かせてくれ。
ウサヒト、ウサジ、ウサミ、ウサヨ、ウサコ……か。
銀色がウサヒトで、金色がウサジ、そして黒い3頭がウサミ、ウサヨ、ウサコで、産まれた順で名づけたのか。
前2頭がオスで、後3頭がメス、と。
……分かりやすくて良い名前だな。
何? キラリは、1号、2号、3号、4号、5号って考えていたのか……。
そういえば、キラリは体毛の色じゃ無ければ何でも良かったんだよな。
それをスモモが、こっちの方が呼びやすいんじゃないか? と。
そうだな、呼びやすいのは大切だな。
うん? キラリ、のっしりと踏ん張りだして、どうした?
……授乳の時間なのか。
ウサギは犬や猫みたく、横になってじゃ無く、牛や馬みたいに母親は起きて授乳するんだな。
なるほど、外敵に素早く対処できるようにか。
たしかに、無防備だもんな。
「そういう事よ。お披露目はそろそろ終わりにしましょう」
ああ! いけない。
また過干渉になる所だった。
『これだから男はデリカシーが無い』とか言われる所だな。
気を付けよう。
ウサヒト、ウサジ、ウサミ、ウサヨ、ウサコ、沢山お乳をもらって、健康に育って欲しい。
ウサギのホワモコ感は幸せな柔らかさですよね
話が気に入ってもらえたら、ブクマ・評価よろしくお願いします




