047 温泉セメントについて
魔法レンガと温泉セメントの相性と強度をテストしてみる事にした。
俺の身長程度の高さの柱を数本作る。
中までぎっしり魔法レンガと温泉セメントで埋めた。
温泉セメントの硬化時間は割合早い。
2時間も経過すれば、カチカチになる。
金槌で叩いてテストしてみた。
ガンガン叩くも、目に見えて亀裂が入ったりはしていない。
「込められた魔力が異常だもの。数千年は大丈夫じゃないかしら」
「流石にそこまでは無理じゃないか?」
「トラキスの宮殿でも、こんなに魔力のこもったレンガは使って無いもの。伝説級品と言えるわね。直ぐダメになる事なんて無いわ」
「レイナスの所のレンガって、みんな魔力があるのか?」
「万物に魔素があるから、レンガも魔力を感じられるわ。程度の違いはあるけれどね」
「それだと、こっちには魔素が薄いんだから、何か影響があるんじゃないか?」
「それでも影響がある程に魔力がこぼれ出るのに数千年はかかりそうって話よ。それを大量に集めて物をつくるなら、魔力的な劣化はもっと遅くなるわ」
「そうなのか。でも、えらく断定するんだな」
「ええ、沢山の迷宮を踏破したんだもの。遺跡型迷宮なんて周囲の魔素濃度と構造物の内包魔力で劣化具合を確認したりするわ。専門家なのよ」
そう言ってウインクするレイナスは可愛かった。
念の為、普通のセメントにならって、とりあえず丸1日時間を置いて更にテストだ。
今度はスレッジハンマーでぶっ叩く。
ガキンガキンと3回叩くと手が痺れてきた。
それでも柱は問題無い様子だ。
おや、スモモとキラリも衝撃テストをしてくれるのか?
それじゃあ、怪我しないように、お願いするよ。
すると2頭は、後ろ足で立ったかと思うと、前足をくるくると回しだした。
毛糸とかロープとかを巻き取ろうとするみたいな動きだ。
それで上半身をぐいんぐいんとスイングさせる。
ぴょこんと片足立ちになった。
可愛い。
それにしても、この踊りっぽい物は何なのか。
「マスターが渡してくれたタブレットで動画を見たのよ。色んな格闘技を調べているみたいね。その儀式を真似ているんじゃないかしら」
文字の勉強用にタブレット端末をレイナスに渡しているが、スモモとキラリも使える様だ。
タッチペンも器用に使うのか。
いずれ、専用に用意してあげた方が良いかな?
しばらく眺めていたら、2頭は柱を蹴り出した。
タスッタスンッと前足で数度叩くと、クルっと回って蹴りをドシンッ!
地面が揺れる程の衝撃だ。
これは……キックボクシング? いや、ムエタイかな?
流石はウチの子達、元気いっぱいだ。
前足アタックの後に強烈な蹴りという感じで30分程叩いてもらったら、そろそろ柱にヒビが入ってきた。
破片で怪我させたくないので、その辺で止めてもらう。
はい、おつかれさま、ありがとう。
怪我はしていないか?
大丈夫か、良かった。
そうか、粉々にするまでできるって?
それはまた今度にしような。
それで、どれ位の強さで蹴っていたんだ?
そうか、ゴブリンを瞬殺できる位の強さか。
はは、うちの子達はどこまで行っちゃうんだろうな。




