041 スライムの食事事情
コズミンやスライム達が仲間になった。
今、ウチに居るスライム達は、汚水やコケ等を食べて生活するので、特別何かを用意する必要は無いらしい。
そしてコズミンは、増殖する自分を食べて生きて行けるので、食事は必要ないと言われた。
やだ、それ怖い。
「ここには魔力が希薄なのに、自己増殖が間に合うのかしら?」
そうだぞ、コズミン。
ここは魔力的に過酷な環境らしいから、遠慮しちゃダメだ。
そう言うと、『確かにそうかも?』と、ふるふる震え出して困惑の様子を見せた。
ドジっ子可愛いが、命に係わる事だ。
何か食べる物を用意してあげる必要があるだろう。
「魔力が豊富な物と言えば、そうね。作物全般に、魔法レンガ、それにSSとマスターの――」
「レイナス! ストップだ」
というか、クワモードで作られた作物にも、魔力は含まれていたのか。
うん? スモモとキラリ、どうした?
苦いニンジンが、一番魔力を含んでいるのか。
そうか、教えてくれてありがとう。
そう言う事だが、コズミンはこのニンジンを食べられるだろうか?
無理なら、甘いニンジンも用意できるが……。
苦い方を差し出すと、触手をうにょ~んと伸ばして体に取り込む。
もにゅんもにゅんと大きく体を動かすと、黒い中に紫の光がきらめいて、とても綺麗だ。
ニンジンを試した結果、美味しく食べられ活力もみなぎった様だ。
それは何より。
他にも、イチゴやキャベツ、メロンにじゃがいも等、色々と試してもらう。
結果、どれを食べても大丈夫だとの事。
それなら、他のスライムでも食べられる個体が出るかもしれないので、畑の拡張をしないとな。
希望の作物があったら、遠慮なく言ってくれ。
ブドウが気になるのか。
よし、さっそく作ろう。
魔力が豊富なブドウをイメージする。
俺も食べたいから、甘い方が良いな。
皮まで食べられるシャインマスカットも美味しかったな。
そんなイメージを膨らませて出た種を畑に植える。
そして、次の日、気が付いた。
ブドウって木に生るんだった。
更に4日じらされる。
燻製用のリンゴは5日目には落ちていたが、このブドウは瑞々しく実っていた。
マスカットよりも粒が大きく、梅の実ほどもある。
これは食べ応えがありそうだ。
収穫すると、爽やかで甘い香りが鼻を抜ける。
早速食べてみよう。
1粒取って口に含む。
プツンと皮が弾けて、じゅわっと果汁が広がる。
甘い。
さっぱりとした感じの甘さだ。
皮の酸味が、果肉の甘みを引き立てているのだろう。
苦味は無い。
噛もうと歯を立てれば、ホロホロと果肉が崩れる。
果肉ゼリーの食感に近い。
舌で転がすだけで溶けてしまいそうだ。
そして、種は無い。
皮ごと全部を食べられて、手間も無いなんて、これは凄いブドウだな。
コズミンの好みに合ったみたいで、キラキラと輝きながらモニュモニュとしている。
……レイナス、涙を浮かべて、固まっているけど、どうした?
「っは!? あまりの美味しさに我を失っていたわ」
「はは、大げさだな。けど、お口に合って良かったよ」
「ええ、とっても幸せな美味しさよ。でも、今は不幸だわ。いつの間にか手元から消えているのよ」
それは全部食べちゃっただけだろう。
……口を開けて催促するんじゃ無い。
「あ~……ん! うふふ。じゃあ、マスターもね」
俺は自分で食べるが……うん、恥ずかしいが、楽しいな。




