033 ウサギ達におもちゃを作る
ある日の夕飯が終わった後。
「マスター、何しているのかしら?」
「ちょっと裁縫だ。レイナスは、その格好で寒く無いのか?」
上着はもこもこパーカーだが、下はルームウェア用のホットパンツだ。
それはもっと暖かい季節の物だと思うが。
「良いのよ。コタツに入るから」
なら大丈夫か。
「ほら、詰めて」
3面が空いているのに、俺の横に座る。
「ね? これで良いでしょう?」
「ああ、うん。すごく良いと思う」
「それで、それは何なの?」
「フットバッグだ。スモモとキラリのおもちゃにと思ってな」
蹴って遊ぶ、お手玉みたいなアレである。
遊び方の意図を説明して、さっそく使ってもらった。
2頭とも、とても上手だ。
けれど、流石にリビングでは狭いな。
どちらも、もっとダイナミックに動きたそうだ。
そして次の日。
「あ~、うん。気落ちする事は無いぞ。生地が弱かったんだから、仕方が無い」
2頭は外で思いっきりフットバッグをしたらテンションが上がってしまい、結果破れてしまった。
「まあ、こうなるわよね」
「デニム生地で作ったんだけど、もっと丈夫な物にしないとな」
「丈夫さって言ったら、今まで気にしない様にしていたけれど、ゴブリン・エンペラースキンの皮は剥ぎ取らないの? あれこそ最高級の耐久性よ」
「やたらに丈夫だって話だけど、流石に2足歩行の皮を剥ぐのは生理的に嫌じゃないか?」
「別に気にならないけど……。そんな事を言っていたら、探索者の装備なんて全然そろわないわよ」
ああ、まあそんな価値観の違いは出て当たり前か。
海外では生魚を食べるなんてあり得ないって所もあるわけだし。
「だったらSSにするだけじゃなく、素材も使えた方がいいかな」
「折角綺麗に倒せているのだし、その方が幅は広がるわね。でも、1匹処理するのに、剥ぎ取りナイフは最低でも100回は研ぎなおしが必要になるのが難点ね」
あ、それはダメだ。
そんなのメンドウくさい。
ゴブリン皮は諦める。
物置に小学校の頃に買ってもらったサッカーボールがあったのを思い出したので、持ってきた。
「あ~、うん。気落ちする事は無いぞ。古かったんだから、仕方が無い」
破裂してしまって、スモモとキラリはテンション下がり気味だ。
悲しませたいわけじゃ無かったのに……。
「もう、いっそうの事ゴブリン・エンペラースキンをボールにしちゃえばいいんじゃ無いかしら?」
いやレイナスさん物騒な事言うなよ。
サッカーしようぜ、ボールお前な! 的な事はダメだろうよ。
生活を守る為に殺すのは良いとして、殺した後で遊ぶのは抵抗がある。
せめて道具として加工しないと、精神衛生上良く無い。
「だったら、首を切り落としてそれで――」
この話、終了!
でも、いずれは何か良い物を入手したいな。




