031 日本で金貨は、そのままでは使えない
レイナスに物価の説明をしたら、スケールの大きな感想が出た。
衣服の値段をコントロールする為に、国が管理しているのか? と。
何でもレイナスが居た世界で、小麦が安定して手に入らない国では、パンの製造販売を国が管理して、平民や貧民向けに助成して値段を抑えているのだとか。
そうでもしないと、暴動が起こって結果的に貴族も富豪も大打撃になるという。
実際にそれで壊滅した地域があるそうだ。
それと同じことを衣服で行っているのではないかと。
そういう難しい事になるとわからないので、安ければそれで良いじゃないかと言うと、納得した様子だった。
そして気が付いたのは、レイナスは日本円を持っているのかどうか? という事だ。
たぶん、持っていないと思う。
そうなると、ここは俺が『支払いは任せろ』とできる場面だ。
「レイナスは、使えるお金を持ってるか?」
「あー、両替が必要なのね。油断したわ」
そういってレイナスはジーンズのベルトにくくりつけていた小袋を取り出し中を見せる。
金貨と銀貨が何枚か入っていた。
「この金貨ならそのまま使えないかしら? 多少の両替損はこの際諦めるわ」
「いや、無理だから、ここは俺が払うから大丈夫だ」
「あら、ありがとう。お言葉に甘えるわ」
強気に出られるのも、『ら・しーむ』だからこそだ、ありがたい。
レイナスがどれくらいウチに居られるかわからないが、とりあえず1週間毎日違う服を着ても大丈夫な様に選んでくれたら良いと伝える。
どんなのを選ぶのかな? と見ていると、まずは値下げコーナーの物をどんどん手に取る。
「文字は知らない物だけど、この区画が安いんでしょ? まずはそれで数をそろえてから他を見たいわ」
うむ、中々の経済観だ。
というか、文字は読めないのか。
言葉が普通に通じるから、気が付かなかった。
漢字とかはいきなりだと難しいので、この場で数字だけ覚えてもらおう。
女性が服を選んでいる時は、男の出番などまず無いと聞く。
あったとしても『どっちが良い?』は『私の好みは把握してんだろうな?』のテストだとかなんとか。
怖い。
しかし、レイナスは聞いてきたとしても、俺が選んだ方を躊躇なくカゴに入れる。
純粋に、俺の意見を聞きたいだけの様だ。
助かる。




