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030 異世界人に物価の説明は難しい

 レイナスの魔法で車内の寒さが一気に解消したので、車を走らせ服屋に到着。


 郊外型店舗の充実したファスト系ファッションショップ『ら・しーむ』だ。


 縫い目という英単語『seam』にフランス語の定冠詞『la』を付けてオシャレっぽさ演出しつつ、ひらがな表記で親しみやすさも出している。

 何よりも特徴は値段の安さ。

 元から値段のわりにそれなりに良い品質であるのに加え、地方店には旗艦店から流れてきた商品が大変お安くお求めになれる。

 売れ残り? 違うね、掘り出し物さ!


「つまり、その掘り出し物を見つけるのが目的なのね。ダンジョン探索みたいで面白そうだわ」


 理解が速くてなにより。

 入店する前に、レイナスが足を止める。


「ガラス……よね? こんなに使って強盗対策は大丈夫なの?」


「強盗とかはめったに出ないから問題無いぞ。流石に鍵をかけないと泥棒はあるかもしれないけど」


「そう、それにしてもこんなに透明度の高いガラスを使っているなんて高級店よね? そもそも掘り出し物なんてあるのかしら?」


「その辺はまあ、タイミングもあるかな」


 入店する時に自動ドアに驚く事は無かった。

 ダンジョンのギミックでそういうのがあるらしい。


 店内の様子を見るレイナスの瞳は、最初は観察的な鋭い物だった。

 その後すぐに驚きに変わり、そして困惑の色になる。


「服が沢山あるけど、どれも古着じゃ無さそうよね? しかも、同じ形の物も沢山並んでいるし、どういう事?」


「どれも新品だな。大量に作って値段を安くするって言うとわかるか?」


「剣や槍だとそういうのがあるって聞いた事があるわ。でも、それが服でもできるなんてね……」


 大量の既製品という物に触れて、レイナスは色々目移りして混乱気味だ。

 今までに無い形態の店を知って、どうしたら良いかわからないのだろう。

 たぶん、俺がオーダーメイドの服屋に行ったら似たような事になる確信はある。


「例えばなんだけれど、この服だと値段はどれ位になるのかしら?」


 そう言ってレイナスは釣らされていた服を適当に取る。

 花柄のロングワンピースで、お値段は1900円。

 さて、物価の違う国の人にどう説明したら良いものか。


「平凡な10代の子が2時間とちょっと働いたら買える位の値段だな」


「え? そんなに安いの? それじゃあ、これは?」


 労働の対価として話すと理解しやすかったみたいだ。

 値下げしましたコーナーの商品を手に取ると、それはパーカーで300円だった。


「それなら1時間働けば、2着買ってもおつりが出るぞ」


「それは……。国が動いているのかしら?」


 なんか、スケールの大きな感想が出た。




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