028 服を買いに出かけよう
午前中に、見回り・薪割り・道整理・山開拓・畑の世話と、手早くこなす。
できる範囲でちょろっとした程度だ。
今日は久しぶりに外出する。
野菜を自給自足できるようになったので、食材の消費スピードが遅くなった為に、買い物に行く頻度も減ったからだ。
けれど、そろそろ肉類が少なくなったし、なによりもレイナスの服が必要だ。
「このローブじゃダメなの?」
ミニのワンピースはローブだった様だ。
一枚しか無いらしい。
「魔力布で作った物だし、優秀なのよ」
「汚れたらどうするんだ?」
「私くらいになると、洗浄の魔法ね」
そういう魔法があるらしい。
生活魔法の様だが、1回使うのに非常に大量の魔力を消費するのだとか。
常に身綺麗にできるのは、大魔導士の証でステータスなのだという。
一昨日は魔力が枯渇していたから、薄汚れてしまっていたようだ。
「またそういう事があるかもしれないから、何着かあっても良いだろ?」
「でも、このエリアに商人が来るの?」
「いや、買いに行くんだが」
「出られるのね? 楽しみだわ」
魔女の装いで街に出られると悪目立ちなので、着替えてもらう事にする。
服は俺の物を貸した。
上着は身丈が長めだし、下はウエストがガバガバだ。
なのに、やっぱり足の丈は大丈夫なようで、女性のパンツスタイルにあるくるぶしが見える長さになっている。
俺にはかかとで踏む位の長さで裾上げしてもらったのに、解せぬ。
チェックのネルシャツにジーンズなのに、レイナスが着るとしっかりとした装いになるのは流石だと思う。
スタイルの差とは、かくも残酷なものなのか。
「もう、これで良いと思うんだけど」
「だめだ!」
「そ、そう?」
▽▼▽
街へ行くには徒歩では無理。
20km以上ある。
できない事は無いが、時間の無駄でしかない。
なので、車を出す。
軽トラだ。
スモモとキラリはお留守番になる。
すまない……。
後でケージを用意するから一緒にお出かけしような……。
「鉄の箱馬車? ……馬具を付ける場所が見当たらないわね。……魔道具、は無いのよね?」
軽トラのボディをペチペチ叩いて確認するレイナス。
外は寒いので、このダウンも着てくれ。
ガソリンという油で動いていると説明すると、こわばった顔で非常に緊張しだした。
「昔、油を使う機械を作れないかって試した技工士がいたらしいのよ。結果は鉄が脆くなって大火事。その区画が全焼したらしくて、それから油を使う機械は作られていないわ」
「それで、代わりに魔道具が発展したって感じか」
「そういう事ね」
自動車は、わざわざ燃やそうとしなければ燃える物では無いと説明して、しぶしぶながらも乗ってもらう。
走り出したら、走行感覚の面白さの方が強くなり、心配は無くなった様だ。




