027 トラップ
レイナスにAR棒を渡しても、魔法や斬撃は打てなかった。
農業のクワモードや、建築のトンカチモードも機能しない。
けれど、建築チケットは使う事ができた。
「これである程度の予想がついたわ」
「何の、どんな事が?」
「マスターの魔法は、魔法の様で魔法じゃ無いのよ。斬撃もそうね」
「とんちか?」
「謎かけじゃ無いわ。マスターが起こす現象はダンジョンのトラップに似ているのよ。あれもスイッチやトリガーにわずかな魔力があるから察知できるけど、発動するまでどれだけの魔力が込められた物なのかはわからないもの」
なるほど、剣やワンドを振るのはトラップ設置のアクションで、それが即時発動している感じなのか。
そう言われると、そうかもという気がしてくる。
まあ、それで良いか。
となると、ウチの敷地から出てしまったらどうなるんだろうか?
ゲームの方で機能する範囲は敷地内に限定していた。
外でも魔法は使えるのかな?
気になったら試したくなる。
けれど、今日は外出はダメだ。
昨日の作業が全然できていないから、2日続けてはこの後が心配になる。
焦る事は無いけれど、後回しにし過ぎると億劫になる作業って結構多い。
なので、出かけるのは明日にして、その分、今日はがんばろう。
レイナスと一緒に薪割りや野菜の収穫をしたら、すこぶる効率が上がった。
何だ、特別な事をしてもらわなくても、手が2人になればそれだけで十分に助かるじゃないか。
長年、探索者として活躍しているだけあって、レイナスは力が強く足腰がしっかりしている。
重い物を運ぶのに、苦にした様子が無かった。
「お役にたてたかしら?」
「ああ、とっても」
今日の午後は予想以上に仕事がはかどったので、明日は気がねなく外出しよう。
▽▼▽
その日の晩。
「あっ!」
「どうした?」
「いえね、日中の回復薬なんだけど、しっかり効果が出ていたわ」
「そうか、それは良かった。でも、何で今頃になって?」
「ええ、アレがね、回復していたわ」
「アレ? あぁ、そうか。……止める?」
「昨日でどれ程かわかったわ。平気よ。続けて」
「ア、ハイ」




