022 美人にウインクされると顔は赤くなる
レイナスの話だと、発見されたばかりのダンジョンに、一番乗りをあげて突入したら、思いのほか探索に難航してしまい、やっとの思いで外に出たらウチの山という事だそうだ。
「マーカーの魔法を打ち込む度に拡散しちゃうのよ? フィールド型ダンジョンでそんな事になるのが、これほど厄介とは思わなかったわ」
マーカーの魔法とは、多数設置する事で、その範囲内の地形や自身の位置関係を把握できるものらしい。
それが働かず、更には方向の感覚が一歩進む毎にぐるぐると変わるので、実質遭難状態で山中を放浪していたのだという。
自分がもし、土地勘の無い山に入ってGPSが機能していないと知ったら、絶望しか無い様に思う。
それに、LEDのライトとかガスストーブも使えないとなったら、死を意識してしまうかもしれない。
そう思えば、レイナスの絶望感たるや、壮絶な物があったのではと身につまされる。
「魔法が使えないって言うのが、どれ程かは想像しかできないけど、今まで当たり前だった事が突然無理になるって恐ろしいだろうな」
「ええ、まったくよ。でも、こうやってお風呂に入れて美味しい食事ができて、結果が良い方に落ち着いたのだもの。そう捨てた物じゃ無いわ」
「はは、前向きだな」
「ええ。ダンジョンは前に進まないと踏破できないものね」
そう言ってウインクするレイナスは、とても魅力的だった。
命をかけてまで達成したい事がある程の情熱を持った女性は、すごく美しくみえる。
はは、俺の顔は真っ赤になっているだろう。
飲みすぎたかな?
話題を変えよう。
「レイナスは自称大魔導士だって事だけど、どんな魔法が使えるんだ?」
「自称じゃなくて、実際そうなのよ」
「でも、今は魔力切れで使えないんだろ?」
「うぅ、そうよ。不覚だわ……。まあ、魔法は一通り使えるわよ。分析も得意だし、ある程度の魔道具も自分で作れるわ」
おお、魔道具か。
それを使って見せてくれたら、彼女が異世界人って確信が強くなるかもしれない。
「魔道具自体も魔力切れで、どれも今直ぐには使えないわ。それよりも、マスターの魔法はおかしな発動の仕方をしたと思うんだけれど、どういった理論を構築しているの?」
え? 魔法に理論とかあるの?
今まで意識した事無いぞ。
ゲームの方にしたって、基本の魔法エフェクトの数値をいじっただけだ。
どんなプログラムが走っているのかまでは分からないし、それが現実化したとなったら、尚更わからない。
「使えるけど、何でなのかはわからないからなぁ。知識も無いんだ」
「そうなの? なら、ちょっと使って見せてよ。このレイナス様がまるっと調べてあげるわ」
せっかくだし、見てもらおう。




