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002 剣から斬撃が飛んだ

 ふにゃふにゃのウレタン棒が剣に変わって、ゴブリンの首を切り落とした。


 訳が分からない。


 剣を触ると、質感はふにゃふにゃなまま。

 試しに振ってみる。


 ッシュパァン!


 衝撃波が走った。

 木に当たり、大きな切り傷を付ける。


 剣から発生した様だ。

 この衝撃波が斬撃になって、ゴブリンを倒したのか。


 ヤバい。

 この現象に心当たりがある。


 何故俺が、スマホの他にウレタン棒を持っていたのか。


 それは、自作のARゲームのテストをするのに、必要な物だからだ。


 ウレタン棒はARマーカーになっていて、このAR棒を振る事によってアプリ内で魔法や斬撃を飛ばしたり、宝箱を開けたりといったアクションが行えるようになる。

 画面を見ながら振り回しても危なくない様に、柔らかいウレタンでできている。


 そう、スマホの中のAR棒は、剣に変化し斬撃が飛ぶのだ。

 その剣のデザインも、ゲームと手元の物がそっくり一緒だ。


 ってことは、ゴブリンもゲームから出てきちゃった系なのだろうか?


 それにも心当たりがある。


 俺が開発したのは、位置情報系のARゲーム。


 ここ『天樹の森キャンプ場』の敷地内に、モンスターやイベントオブジェクトを配置して、お客さんにキャンプ場全体を使った拡張現実空間を楽しんで頂くのがコンセプト。


 お客さんは、時に冒険者になってモンスターを倒したり宝箱を探したり、時に開拓者になって畑を作ったり建物を造ったり。

 どれも位置情報を利用して、アプリのカメラ機能ごしに3Dオブジェクトを配置して楽しんでもらう感じのゲームアプリだ。


 その名も『天樹の森ダンジョン』。


 このゲームにゴブリンも出てくる。


 ゲームのゴブリンはデフォルメされていて、さっき倒した物みたく生々しい凶暴さは無い。

 けれど、似てると言われれば、共通点は多い。


 俺の所為で、ゴブリンが現れてしまったのか?

 ゲームが現実化しちゃったのなら、大事になる予感しかしない。

 こうなったら、一旦消去しよう。

 危険な物は野放しにしちゃダメだ。


 事務所に戻ろうとすると、その先には、またゴブリンが。


 ……遠いな。

 斬撃は届くだろうか?

 魔法ならいけるかな?


 魔法を飛ばすアクションは……AR棒で円を描く様に回して、それに縦線を引くとファイヤーボールが出る。


 いやいや、待て待て。

 さっきのゴブリンは、錯乱していて正当防衛をせざるを得ない不幸な事故だったかもしれない。


 念の為、このゴブリンにも声をかけよう。


 魔法の準備はしつつ、不発なら斬撃を飛ばす心構えで。


「そこの緑の人! 道に迷ったんですか? 手助けは必要ですか!?」


 大声に気づいたゴブリンは、棍棒を2度地面に叩きつけて盛大な土煙を上げると、こちらに猛ダッシュしてきた。

 振りかぶってフルスイングの勢いだ。


 くそう、コイツもか。


 俺はダメ元で魔法の発動を試みる。


――ボワッ! ……ドカン!


「グギャー!!!」


 ……出ちゃったよ、ファイヤーボール。


 ゴブリンは炎にまみれて悶絶している。


 膝をついて、倒れて、動かなくなった。



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