017 不思議な美女を倒してしまったので
山道で出会った女性を倒してしまった。
話が通じなかったから、仕方が無かったんだ。
彼女は恰好の色合い的には迷彩だけど、とても山に来る様な人には見えない。
すごく怪しい。
だからと言って、山の中で放置するわけにもいかないので、背負ってキャンプ場まで運んだ。
芝生のエリアでシートを敷いて横にさせている。
事務所や家に入れるのはちょっと躊躇した。
また暴れられて、家具でも壊されたらかなわないから。
その分、日よけのタープを張って、暖かブランケットをかけてあげている。
天気が良くても、寒いからね。
……パンツが見えてしまうからね。
ブランケットをかけてあげざるをえない。
彼女が気付くまで離れるのも何なので、レンガを生み出しながら待つ事にした。
レンガはどれくらい消えないで残るのかわからないが、とりあえず何かを作ってみる予定だ。
スモモとキラリは、前足を器用につかってレンガを積み上げている。
どちらがより高くなるか競っているらしい。
こらこらキラリ、足でドンてして邪魔しちゃ反則だろ?
はは、そんなイジワルするから、自分の方が崩れちゃうんだ。
仕方ない、どれだけ高く積めるか一緒にやろう。
▽▼▽
レンガの塔を築いていると、緑の女性が気付いたようだ。
「暖か~い。柔らか~い。気持ち良~い」
「起きたんなら、ちょっと話をしてくれないか?」
そう声をかけると、緑の女性は勢いよく飛び起きてブランケットを跳ね除ける。
そして飛び起きた勢いが強すぎたので、タープに絡まりミノムシ状態になってしまった。
「っく! 負けて虜囚の身になるなんて……。女を捕縛するなんて、たいした趣向ね。お次は生きたまま腸を引き出すのかしら?」
「いやいや、だからね、話をしましょうって言ってるの。それに、縛られているんじゃなくて、貴方が勝手に紐に絡まってるんだよ? お腹を切るとか、物騒な事も言わないでね」
「くぅ、良いわ。私を打倒した程の階層主が、どれほどの者か。冥土の土産に聞こうじゃない」
うわ、また物騒な事を言い出した。
かなり不思議さんだ。
けれど、話をする意図はあるみたいだから、このまま続けよう。
「えっと、ここへは迷って来ちゃったんですか? 何処から来たんですか?」
「……新しく発見されたダンジョンの探索をしていたら、ここに着いたのよ。ダンジョン名はまだ決まっていないんじゃ無いかしら。ちなみに、私の拠点はトラキスよ」
トラキスとは知らない地名だ。
検索してみると、古代ギリシアにそんな場所があるのだとか。
そっち方面の人なのだろうか?
前世の聖戦士が云々かんぬんみたいな。