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162 のんびり滑り台とスラックライン

 楽しい北海道旅行から帰ってきて、日常に戻る。

 その日常には、シリコロカムイという新しい仲間が増えた。

 

 彼女は儚げな佇まいの女神で、大地を司るとか。

 そして、樹に顕現するようなので、ウチの環境は過ごしやすいのではと思う。

 

 今のところは、大切なお客さんと言うか、ホームステイに来ている外国の子って感じだろうか。

 現在は畑の山の一画の樹に宿ってもらい、のんびりとしてもらっている。

 

 この前、彼女が佇む場所へ様子を見に行ったら、ノーム達に囲まれていた。

 

「あのね、お姉ちゃんとね、遊んでいるの」


「お姉ちゃんね、面白いの」


「ウサギさんもね、一緒なんだよ」


 そうノームがお話ししてくれるので、彼女の方を向いたら、恥ずかしそうに顔をそらされた。

 男性に慣れていないのだろうか?

 奥ゆかしい。

 

 慣れない土地で大変な事もあるだろうけれど、皆とも仲良くやっていってもらえると良いな。


 さて。

 北海道という大地を堪能して、施設を充実させる意欲が上がっている。

 少しずつ、試し試しで手を入れていたが、今回大きく改変する事にした。

 

 まず、静かなエリアと賑やかなエリア、コンセプトエリアの3つをはっきりと分ける。

 

 管理棟を中心として、3方に分かれる感じにした。

 

 まず、静かなエリアを新しく作る。

 こちらはシンプルに、そして広々に。

 区分けをしっかりとして地面の水平を保ったサイトと、自由にテントを張れるフリーサイトを作る。

 川砂利を敷いて水捌けを良くして、直火もオーケーにした。


 これで、静かでシンプルなテントサイトは完成。

 色々できるからって、何でも足したら良いって事も無いだろう。

 

 次に、賑やかなアクティビティサイト。

 こちらは、従来のテントサイトを中心として広げていった感じだ。

 この中心となっていたテントサイトを、少し変える。

 

 全面を芝生にするのだ。

 

 今まで、俺が召喚した芝生だと、1晩で膝丈以上に大きく育ってしまう物だった。

 だから、キャンプ場の方では木登りのクッションとしてしか使えないと思っていたけれど、これは思い過ごしと気が付く。

 

 10cmも伸びない芝生を召喚すれば良かったのだ。

 従来の芝生は、種を召喚できると知った初期の頃の物だったから、先入観が強く残っていたのだ。

 

 長く伸びないで色の良い芝生の種、出てこいって念じて召喚したら、上手くいった。

 簡単な事だった。

 

 フカフカでかつ、柔らかくも腰が強いので、ゴロゴロすると気持ちが良い。

 魔法のレンガで作った区分けもそのままにしてあるで、地面も平らに保たれる。

 テント泊に慣れていない人も、地面の変化が気にならずに寝られるんじゃないかな。

 

 次に、ローラーコースター改め、のんびり滑り台。

 全長を300mにして、ゆったりとカーブを繰り返す作りにした。

 滑る床の罠を駆使して、進むスピードをのんびりにしているから、小さい子でも怖がらずに遊べる作りになっている。

 

 山の斜面にそって、地面のすれすれを滑り下る感じなので、大人からすれば小動物の視点で楽しめるのではないだろうか。

 

 ウサギ達が、12頭でトレインを組んで滑り降りてきた。

 その姿が、とても和む。

 

 なに? この姿を動画に収めて、宣伝に使ったら良いって?

 それは凄く良いアイデアだな。

 

 よし、撮りまくろう。

 

 他の皆にも協力してもらって、たくさん動画を収録した。

 

「もっとスピードが出た方が面白いと思うぞ」


「ラキのイメージしているのは、ジャンプ台だろ? スキーの競技のやつの」


「うん、やってみたいって思ってるんだぞ。マスター、作ってくれないかな?」


 腕を掴んで、胸を押し当てつつ、小首をかしげておねだりするラキ。

 俺に効果抜群である。

 

「水晶のダンジョンの方で良いか?」


「うん、そっちでも良いぞ。ありがとうマスター!」


 骨がきしむほどに強く抱きついてきたので、とても喜んでくれたみたいだ。


 ニセコでスキーをしたら、ウチの皆はすごく気に入った様子。

 テレビやネットでスキー競技を見ては、次はアレがしたいと言い合っている。

 

 流石に天樹の森で雪を降らせるわけにはいかないので、水晶のダンジョンの方で、ちょっとずつゲレンデを作っている。

 現時点で、5コースある中規模ゲレンデと言える程になった。

 

 リフトを設置するのが大変だったので、滑る床で登るようにしてある。

 ローラーコースターを作った経験は、こっちの方で活かされた。

 

 って、天樹の森の方の改変をしているのに、脱線してしまった。

 軌道を修正。

 

 ゆったり滑り台の他に、スラックラインのポイントを沢山作った。

 スラックラインは、綱渡りのロープが幅広のベルトになった感じの物だ。


 地面は柔らかく砂状にして、木の幹には保護を。

 お客さんが自由に使えるように、ポイントには分かりやすいマーカーを設置した。

 

 ウチの皆で試して遊んでみると、エルフ達が結構上手だった。

 

「森の中を移動するのに、色々と身に着けましたから」


「ロープ移動も得意ですよ」


「急流をやり過ごすのに、こういうのはよくしました」


 彼女達の生活に根付いたテクニックだったようだ。

 慣れてくると、トランポリンみたく飛び跳ねて遊びだす。

 

 こらこら、誰が最後まで残るかの揺らしっこは、危ないから止めなさい。

 

 これは、地面をもっと柔らかい物にした方が良いだろうか。

 マットを敷くのも考えたが、コア達からアイデアが届く。

 

 それは、跳躍抑制トラップを使ったらどうだとの事だった。

 

 跳躍抑制トラップは、ジャンプして障害を乗り越えたりできないようにするトラップだ。

 これは、飛び跳ねようと地面を蹴った衝撃を、瞬時に吸収してしまうトラップらしい。

 なので、発想を逆にすれば、落下の衝撃も瞬時に吸収してくれる事になる。

 

 試しに、設置してみると地面に変化は見られない。

 見た目が変化しないのは、トラップがあるとバレないようにする特性か。

 魔力を感知できない人には気が付かないようになっているのだろう。

 

 ボールを落としてみると、跳ねない。

 卵で試すと、殻も割れず、その後に手で割ってみると、黄身も無事だったので、内部に変な衝撃が来ている事もなさそうだ。

 

 スモモとキラリが飛び跳ねようとするも、屈伸をしているだけになった。

 トラップに負けた事に、怒りの足ダンダンをしようとするも、これも吸収されて、屈伸の繰り返しになる。

 

 相当に、衝撃吸収力が高いとわかる。

 

 俺も試しに、離れた所から助走をつけてジャンプし、トラップの上で着地をしたら、全然衝撃が無かった。

 前に進む慣性は吸収されていないので、少しよろけるくらいか。

 踏ん張る程度は普通にできるので、歩くのには支障がない。

 

 スラックラインの下の地面を、跳躍抑制トラップに設定して、また遊んでみる。

 スラックラインの感覚は変わらず楽しめて、なおかつ落ちても安全な物になった。

 これは凄い。

 

 よし、これは木登りできるミニバオバブの下にも設定するとしよう。

 

 本来なら、探索者を邪魔するはずのトラップが、お客さんの安全を守るものに活用できる事がわかって、とても嬉しく思えた。


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