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157 ニセコへ遊びに行こう

 ノーム達が育てている芽は、生育がゆっくりのようだ。

 とは言え、ウチの作物の成長速度が異常なので、感覚がおかしくなっているとも思う。

 

 先日、ワインを納入した分の代金が、卸し先のメーカーから振り込まれた。

 こちらは、翌営業月の入金だ。

 とても良い収入になった。

 

 それで、購入単価を上げるから、増産して欲しいと頼まれる。

 普通は、大量購入するから単価を下げてくれと交渉される場面かもしれないが、逆だった。

 

 どうやら、希少価値(プレミア)がついてしまって、儲けの機会損失が大きいと判断したみたいだ。

 転売の抑止の為に、勝負に出たいという。

 

 ウチとしては、まだ生産に余裕があるから、快く引き受けた。

 これからの収入の、太い柱の1つになるだろう。

 

 さて、どれ程良い収入になったかと言うと、色々と資金をプールしても、けっこう残る。

 なので、家族旅行の費用にあてる事にした。

 

 行き先は、南か北かで迷うところだが、今回は北国だ。

 前に、天狐とレイナスが雪見酒をしたいと言っていたので、そうする事にした。

 

 そうなると、具体的にどこへ行くか? だ。

 53人も居ると、あまり行き当たりばったりで行動できない。

 かなり悩んだが、俺の独断で北海道に行く事に決めた。

 その理由は、雪山で遊びたいと思ったからだ。

 

 雪山に、慣れていない者が無暗に入るのは、命取りだ。

 下手をすると、色々な人達に大きな迷惑をかける。

 そんな冬の雪山だけれど、初心者でも存分に楽しめる所が北海道にはある。

 

 ニセコだ。

 

 ニセコのゲレンデは、バックカントリーが盛んだ。

 バックカントリーとは、ゲレンデの外に出てスキーやスノーボードを楽しむ行為で、ニセコではそれが安全にできる様に工夫がされている。

 山の状況を細かく発信してくれて、絶対に入ってはダメな区域などがわかりやすいという。

 

 山暮らしは長いけれど、雪山は初心者な俺にとって、うってつけの場所だろう。

 

 北海道旅行の手配は、いつもお世話になっているバス会社にお願いした。

 とは言っても、全部が陸路じゃない。

 バス会社は、旅行会社としても営業しているので、そっちの方でお願いしたのだ。

 

 旅行の計画自体は前もって伝えてあったので、無事に日程も組めた。

 けっこう 立地の良いリゾートホテルみたいだ。

 

 期間は7泊8日になる。

 その間のお留守番は、主にコズミンに任せた。

 農作物やワインの出荷も、天狐の一族の人がクリスタルゴーレム達から受け取って貰う様に、品目などの日程を組んでいる。

 

「飛行機に乗るのよね。楽しみだわ」


「異世界だと、空を飛ぶ乗り物とかあるのか?」


「あるけれど、大規模輸送には向かないわね。上空で襲ってくる魔物も居るのよ。迎撃も手間だし、高速で振り切るのには速さが必要になるものね。狭いし揺れるし、落ち着いた移動になんてならないのよ」


 イメージ的には、たるの中に入って人間大砲みたいに打ち上げられて、魔道具で加速して現地に向かうロケットの様な物らしい。

 かなりワイルドである。

 

「まず、ハイジャックが起きた事を想定しましょう」


 エルフのイーズが、変な事を気にし始めた。

 

「相手は何故か銃を持っていて、こっちは丸腰なんだよね」


「魔法の使用制限はあるのかな? マスター殿、どうでしょうか?」


「いや、どうもしないぞ。……でも、もしもの場合は、相手の無力化が最優先だ」


 エルフ達と、綿密なシミュレーションを重ねた。

 そんな事を話している間に飛行場に到着し、無事に搭乗。

 フライトも順調で、新千歳空港へと到着した。

 

 つい、いつもの癖で魔法の鞄に荷物を大量に持って来てしまったのだけれど、荷物検査的にはどういう扱いだったんだろうか?

 ……あまり気にせず、旅行を楽しむとしよう。

 

「レイナス、飛行機はどうだった?」


「そうね、地に足が着いた空の旅は良かったわ」


「そうだな、そんなに揺れなかったしな」


「あれなら、ゆっくり寝られそうよね。機内でテントを張れないかしら?」


「ああ、テントで空の旅とか、憧れるな」


 コア達に頼めば、気球とか飛行船みたいにして運んでくれるだろうか。

 ……その場合は、航空法とかがネックになりそうだな。

 うん、難しい。

 

 空港からニセコへはバスに乗る。

 

 道を進むと、山の間隔や平地の間隔が広いと感じ、流石は北海道だと感心した。

 これだけ広いと、テントサイトを作り放題だろうなぁ。

 一面の芝生の上で、テントを張ってゴロゴロして、遠くの山々の間には、時おり雲が流れてゆくのが見えて……。

 

 ああ、でもその裏にはヒグマとのたたかいの歴史があるんだよな。

 住める環境を確保した開拓者は、すごいなぁと感心する。

 

 バスから景色を眺めていると、ウチも牧場みたいに広いフリーサイトを作ろうかなぁと気持ちがざわつく。

 それには、平地が足りないんだよな。

 ダンジョン改変で山を削るのは、なるべく小規模にしたい。

 そうなると、麓までの土地を買い占める、か?

 

 色々と妄想が膨らむな。

 

「マスター、また仕事の顔つきになっているわね」


「ああ、すまん。ちょっと妄想してた」


 レイナスに、俺が夢想していた事を話す。


「それもステキね。きっとマスターなら叶うわよ。そのためにも、休暇はしっかり楽しみましょう」


「うん、ありがとう。ちゃんと切り替えるよ」


 バスのシートにぐ~っと背中を押し付けて伸びをする。

 そうこうしていると、ホテルへと到着したみたいだ。

 

 さて、ホテルについたら何をするか?

 旅館なら、あのスペース(広縁)の椅子の座り心地などを確かめるが、ここはベッドルームだ。

 俺がするべき事は――

 

「あれ、マスター廊下で何しているんだ? 滑りに行かないのか?」


「ああ、ラキ。避難経路の確認だ」


「部屋の『しおり』にあったな。1回読めば十分な気がするぞ」


「待て、ラキ。災害時の避難だけじゃなく、もっと別のケースも考えた方が良い」

 

「マスター、いつになく真剣な顔だぞ。それは何なんだ?」


「……テロリストに占拠された場合を考えるべきだ」


「……成る程、面白そうだぞ」


 その後、ガラテアとエルフ達も合流して、対テロ対策を模索した。

 こういう、一見ふざけている様な事を真面目にやるのは、つい熱中してしまう。

 

「まったく、皆楽しそうで何よりだわ」


 レイナスにちょっと呆れられる。

 

「爆弾が仕掛けられているって想定は、何で出てこないのかしら?」


 その方向も踏まえて、盛り上がった。

 

 因みに俺達がこんな事をしている間に、アミリアとマミリアと天狐の3人は、セイコーマートに行っていたようだった。

 

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