表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

153/175

153 ウサギと精霊

 巣立ったウサギ達が帰ってきてくれた。

 ウサヒト、ウサジ、ウサミ、ウサヨ、ウサコ、お帰りなさい。

 皆、怪我とか病気とかはしてないか?

 ……大丈夫か、良かった。

 

 それで、パートナーを見つけてきたんだな。

 ウサギ達は、それぞれつがいとなる相手を無事に見つけて来れた様だ。

 

 相手のウサギは、土茶けた色で、保護色といった感じか。

 これは、餌を良い物にして、環境が変わると毛並みは違ってくるとの事だ。

 皮膚に近いアンダーコートの毛は、ホワホワな物が生えているので、持たせたニンジンをもらったみたいだ。

 

 生まれた時は、手の平にすっぽりと乗るくらいだったウサギ達が、パートナーを見つけて新しい家庭を築くとは、感慨もひとしおで涙がうるっときた。

 

 帰ってきたウサギ達、そしてこれからウチに住むウサギ達を、サスサスと撫でる。

 今日はニンジンパーティーだな。

 カボチャとパイナップルも沢山用意するぞ。

 

 さて、そうやってウサギ達と戯れているわけだが――。

 

「マスター、そろそろ現実を見てちょうだい」


「ああ、レイナス、待たせたな。それで、この子達をどうするか? だな」


 ウサギ達はパートナーだけではなく、小さな男の子を5人連れてきていた。

 見た目は4歳前後で幼稚園児のように小さい。

 服装が幼稚園児が着るスモックに似ているので、余計にそう見える。

 

 そして、彼等は人間じゃ無いらしい。

 魔物でも無いと、ウサギ達から説明も受けている。

 

 彼等は、精霊。

 土の精霊の『ノーム』だそうだ。

 妖精種では無いので、人とは交われない魔力的な存在だとか。

 どこからか子供を連れてきてしまったわけでは無いので、それは良かった。

 

「あのね、ウサギさん達とね、一緒にね、いたいんだ」


 たどたどしく訴えるノーム達に庇護欲がわいてくる。

 

「どうしてウサギ達と一緒にいたいのかな?」


「うん、ウサギさん達にね、僕達を守ってもらうの。そうしないとね、僕達ね、食べられちゃうの」

 

 いきなりヘビーな話になったぞ。

 

「誰がそんな事をするのかな?」


「エレメントシャーク。口が大きいの」


 それからノーム達に話を聞く。

 

 ノームは地中の魔力を操る事ができるそうだ。

 それで、特定の草などが育てやすい土地へと土壌改良ができるという。

 そうすることで、ウサギが好む牧草を育て、その代わりに外敵から身を守ってもらっている。

 

 その外敵が、エレメントシャークで、こちらも精霊の一種だとか。

 それは精霊としては力が弱く、魔力が高い者が攻撃したら、消失させられる。

 けれど、ノームは攻撃手段を持たないので、一方的に捕食されてしまうのだとか。

 

 ノームは、一時は絶滅寸前までいったが、ウサギ達との共生関係を築く事に成功し、なんとか現状維持ができているという。


「エレメントシャークはね、鼻も良いんだよ。ウサギさんの匂いがしないとね、バクってしに来るの」


「逃げてもね、ずっと追いかけてくるの」


「だからね、ウサギさん達と離れたらね、僕達はね、食べられちゃうの」

 

 なるほど、そういう事情があったのか。

 この事は、異世界出身の皆も知らなかったみたいだ。

 

「そもそも、精霊と話をする機会なんて、滅多にないもの」


「レイナスでもそうなのか」

 

「ええ、フィールド型のダンジョンで、精霊化したエルダートレントと話をした事があるくらいだわ。イーズ達エルフはどうかしら?」


「我々も会った事はありません。昔は沢山いて交信する事もできたと、幼い頃に長老からは聞いた事がありますが……」


 精霊と交流できるのは、とても貴重な体験の様だ。

 

 気になるのは、彼らが土地の状態を操れるという事だ。

 ひょっとしたら、異世界が長年不作に見舞われているのに関係があるのだろうか?

 

「そう単純じゃ無いかもしれないけれど、原因の1つではありそうね」


「そうなると、保護してあげたくなるな」

 

 このまま彼等を異世界へと帰してしまうと、たちまちエレメントシャークに食べらえれてしまうと言うなら、ウチに居てもらった方が良いだろう。

 

「よし、それじゃあ、ノーム達、ウサギさんと一緒にウチに来るか?」


「良いの? 一緒で良いの?」


「僕達ね、『ふつつかもの』だよ?」


「人間さんのね、食べ物はね、作れないよ?」


「ああ、構わないぞ。ウチでは食べ物は十分間に合っているからな。ノーム達は食事はするのか?」


「あのね、魔力がね、沢山欲しいの」


 そうか、魔力が必要か。

 はは、女性陣たちよ、変な目で見ないでくれ。

 コズミンだってブドウで魔力を補っているんだから、ノーム達だって方法があるはずだ。


「それじゃあ、魔石はどうだ?」


 以前、異世界から買い付けた魔石を、ノーム達に渡す。

 

「これだよ。甘いよ」


「美味しいの~」


「お口がね、幸せなんだよ」


 ノーム達は、雲の切れ間からお日様が覗いたみたいな笑顔になって、魔石をコロコロと舐めた。

 これで良かったらしい。

 いや、本当に良かった。

 

「そうか、うんうん、たっぷり食べてくれ」


 そう言って、俺はノームの頭を撫でた。

 

「ひゃぁ!」


 すると、ノームは悲鳴を上げて腰を抜かし、お漏らしをしてしまった。

 

 わ! ゴメン。

 でも、何で!?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ