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151 お餅をつこう

 コスプレのイベントから帰ると、一気に年の瀬だ。

 ウチではお餅をつくのが恒例だ。

 1人の時にもやっていた。

 

 お節は注文した物だったけど、お餅は焼いたら気軽に食べられるから、保存食としてついていた。

 

 去年までは、家庭用の餅つき機でついていた。

 都会ではどうか分からないけれど、田舎だとホームセンターや家電量販店で買える代物だ。

 

 機械がブルブルっと震えて、もち米がちゃんとお餅になる優れものだ。

 

 手軽に滑らかなお餅になるが、コシは弱い。

 そこがちょっと難点かな。

 

 けれど、今年はうすきねでつく。

 それも、クリスタルゴーレムちからでだ。

 

 さあ、ゴーレム達、今年最後の大仕事だぞ。

 宜しく頼む。

 

 ゴーレム達は、『マ゛ッ』のプラカードを掲げて気合を入れた。

 

 蒸したもち米が大量にあるダンジョン内は、凄く湿度が高かった。

 室内を乾燥させる事もできるが、お餅の表面の水分が飛んでも嫌なので、このまま蒸し風呂状態で作業を進める。

 

 身長が3mにもなるゴーレムサイズのうすきねとなれば、それだけで巨大だ。

 うすの方はどうしても動いてしまうだろうから、水晶のダンジョンの床をその形にした。

 これで勢いよくついても大丈夫だろう。

 

 きねは、丸太だ。

 杉の大木の丸太に、温泉セメントをコーティングして補強し、それでつく。

 補強無しで試してみたら、丸太が裂けるチーズ状になったので、補強は必須だ。

 

 業務用の炊飯釜で蒸かしたもち米を、どさっとうすに移す。

 それを上からねるようにして、ぐいぐいと杵で押す。

 ここでしっかりと米粒を潰すのがポイントだ。

 

 おっと、いきなり力いっぱいすると、もち米が零れちゃうな。

 まだふちの周りだから、そっと戻そうか。

 ゴーレム達は慎重にぐいぐいともち米を潰す。

 

 3体1組でしているが、押して力を入れる度に、徐々に足元の位置がずれるらしく、自然と時計回りになり始めた。

 ある程度潰れたら、ひっくり返してまた潰す。

 

 粘り気が出始めまとまりだしたら、一気につき始める。

 ゴッ! ゴッ! ゴッ! と豪勢な重低音が響く。

 

 しばらくついたら、ひっくり返し、また、しばらくついたら、ひっくり返す。

 つく音が、次第にベチベチと言うようになってきた。

 そして、ふっくりモチモチなお餅になった。

 

 ゴーレム達、やってみてどうだった?

 ……スライム達がここに居なくて良かったって?

 そうか、形が似ているから、怖がらせちゃうかもしれないな。

 皆、優しいな、ありがとう。

 

 家に移動して、早速つきたてのお餅を食べてみよう。

 

 まずは、おろし大根と醤油だな。

 

 大根の辛みと醤油の風味とがお餅に絡まり、主食たりえる味になる。

 お餅のコシは強く、柔らかいのにしっかりと千切れる食感だ。

 デロンとしただらしない伸びは無い。

 おろし大根で少し温度が下がって、適温になったからという事もあるだろう。

 

「お米を潰すとこうなるのね」


 レイナスは、モグモグと食感を楽しみながら食べている。


「そういった種類の米だぞ。いつも食べている物とは違うんだ」


「うふふ、よく噛めばこうなるってわけでも無いのね。あっさりサッパリしていて美味しいわ」


 おろし大根には納豆を混ぜても良い。

 納豆の糸がお餅の滑りを増して、のど越しが良くなる。

 また納豆の味でコクが出る感じもするかな。

 旨味が増している。

 

 次は、きな粉で食べてみよう。

 そのまま、きな粉だけでも良いし、砂糖をまぶせばもっと美味い。

 更に、砂糖醤油をかけても良いな。

 

「あ、ガラテア、お茶を用意してくれるか?」


「ハイ、かしこまりまシタ」


 ラキが頬っぺたを膨らませてモグモグしているので、そろそろ詰まらせかねない。

 

「んぐっ!」


 あ、案の定だ。


「ラキ、どうゾ」


「ごく、んぐ、はぁ。びっくりしたぞ。ガラテア、ありがとうな」


「ゆっくり味わいまショウ」


 ガラテアはラキの背中をさすった。

 きな粉は水分を吸って、喉に張り付きやすくなるんだよな。

 

「餅って危ないぞ。大丈夫か?」


「ゆっくり食べれば問題無い。何だってそうだろ? なあ、アミリアとマミリアも」


 双子も口に押し込む様にして砂糖醤油のお餅を食べていたので、落ち着くように注意する。

 

「「自制は難しいかと」」


「ほら、口の周りがベトベトよ」


「レイナスさん、申し訳ございません」


 レイナスは双子にウェットティッシュを渡す。


 双子は、異世界だと立場があるだろうが、ウチに居る時は皆を『さん』づけで呼んでもらうようにした。

 名前だけで呼び合っても良い気がするけれど、流石にそこまでは無理な様だ。

 けれど、皆との距離感は縮まっている感じだ。


 皆でわいわいと、つき立てお餅を楽しんだ。

 

 そして、今年は使っていない家庭用の餅つき機。

 どうなったかと言うと――。

 

「マスター殿、皆気持ちよさそうですね」


「プルプル震えて和みますよ」


「手を入れて触らせてもらっても大丈夫かな?」


 スライム達が入って、プルプルマシンとなった。

 何体かが一緒に入って震える物だから、その揺れっぷりが面白い。

 エルフ達はその様子を眺めるのが気に入ったみたいだ。

 

 ブブブブっと小刻みに振動している中に、そっと触ると気持ち良い感触になっていた。

 そして同時にペチペチと上下にひっくり返すような動きもあるから、スライム達はご機嫌だ。

 

 コズミンによると、うすきねでお餅をつく場面を見せても、新しく仲間が生まれたって思うだけで怖がらないだろうとの事だ。

 そして、お餅を食べる事も気にしないとの事。

 

 これは後でクリスタルゴーレム達にも教えてあげよう。



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