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147 クリスマスの料理

 年末のイベントと言ったら、クリスマスだ。

 今までは、単なる日常の1日だったが、今年からはちょっとしたお祝いをしようと思う。

 

 ウチの宗教的には関係が無いけれど、祝っている人がいるのだから便乗したって良いんじゃないだろうか。

 ハロウィンもそんな感じで楽しんだから、まあ今更かな。

 

 天狐の手の者の人達へは、人間用の農作物の他に、家畜の餌となる物も納めている。

 そして、それを食べて美味しい牛乳を出してもらったり、美味しい卵を産んでもらったりして、その1部をウチに納品してもらっている。

 

 ちょっとした外部委託っぽい感じだろうか。

 その伝手でもって、七面鳥を入手した。

 

 欧米ではクリスマスと言えば七面鳥だと聞くけれど、日本では鶏が多いよな。

 肉の入手性の問題もあるけれど、欧米の人がこれを見たらどう思うのだろうか?

 

 たとえば、年末の挨拶に塩引き鮭を送る事がある。

 これが、ブリだったらどうしようか?

 良い物ですけど、ちょっと違いませんか? って思いそうだ。

 

 日本でお祝い事だと、鯛とエビだ。

 それが、マンボウと食用ザリガニになってしまったら?

 珍しい物だろうけど、それじゃ無いよな。

 

 そういうわけで、今年のウチは七面鳥。

 

 塩水に1晩漬けて、お腹にジャガイモとニンニクとタマネギにマッシュルームを入れる。

 その野菜には、予め炒めて、若干の焦げ目をつける。

 

「マスター殿。鳥料理ですか?」


 イーズを始め、エルフ達がやってきた。

 

「今日はクリスマスってイベントの日だから、それ用の料理だ。皆も手伝ってくれ」


 エルフ達に頼み、他の七面鳥の下ごしらえをしてもらう。

 

 フライパンを振って野菜を炒めて、七面鳥のお腹に野菜を詰めたら、タコ糸で縛って閉じる。

 

「死してなお野菜をお腹に入れてもらえるなんて、この鳥も本望でしょう」


「異世界ではこういう調理ってあるのか?」


「エルフの間には伝わっていませんね」


「臭み取りに香草を入れる地域があるって聞いた事あるよ」


「でも、あの草は食べずに捨てるって話だよ」


「野菜は少なくても、どんぐりみたいな木の実はあるんだろう? そういうのは?」


「どんぐりは動物たちが真っ先に食べてしまいますよ」


「そうそう、動物たちが集めた物を見つけても手を出したらダメなんですよ。そうしないと、森の木が無くなっちゃいますから」


「地球のリスが木の実を隠した場所を忘れるから、木の芽が出るって話を聞いた時は、異世界と同じだなって思えてつい笑っちゃいました」


 そんなおしゃべりをしながら、七面鳥の下ごしらえをしてゆく。

 

「この後は、蒸すのでしょうか? 煮るのでしょうか?」


「今回は焼くぞ。特製のオーブンを使う」


 俺がそう言ったら、エルフ達は『おー!』と声をあげて拳を上へと突き出した。

 ……俺もやるの?

 うん、分かったから、そんな悲しそうな顔をしないでくれ。

 よし、これから焼くぞ、おー!

 

 エルフ達と一緒に拳を上げた。

 

 オーブンは250℃の温熱レンガで作った物だ。

 全体をそれで囲って、中に網を置き、その上に七面鳥を乗せて焼く。


 七面鳥には、表面にニンニクを擦り付けるようにして香りをつけ、塩や粗挽きコショウもまぶしておいた。

 

「マスター殿!」


「どうした?」


「これは、焼き上がってしまうと、非常にお腹の空く匂いになるのではないでしょうか!?」


 イーズが真剣な顔で聞いてきた。

 確かにそうだが、それだけでは無い。

 

「マスター殿? その、刷毛は何に?」


「ここに、摩り下ろしニンニクをオリーブオイルで溶いた物がある。塩入りだ」


「も、もしかして?」


「そう、焼きながら七面鳥の表面に、刷毛で塗る」


 手羽や足を縛った七面鳥を15分ほど焼いたら、それに摩り下ろしニンニク油を塗ってゆく。

 

「マスター殿ぉ。これはあんまりです」


「え!? 嫌いだったか?」


「良い匂い過ぎて、お腹が耐えられそうにないですよ~」


 とっても情けない声で嘆きだした。

 他のエルフ達も、眉毛を下げて情けない顔をする。

 

「えっと、これを15分置きに、あと6回するんだけど……」

 

「酷いですぅ」


 皆泣きそうになっている。

 そして、鼻をひくひくとさせて、匂いを嗅いだら、お腹を押さえていた。

 

「それじゃ、何か摘まむか?」


「……良いのでしょうか?」


「あ~、でも空腹は最大の調味料だからな。お預けで」


「やっぱり酷いです!」


 半泣きになりながらも、彼女達は七面鳥に摩り下ろしニンニク油を塗っていった。

 

 その甲斐あって、表面がパリッパリでお肉がしっとりジューシーに焼き上がった。

 

「マスター殿、どうですか? 我々が空腹に耐えきって、ここまで焼き上げたんですよ?」


「うん、偉いぞ。凄いな、よくやった!」


「ええ、そうなんですよ。我々はやればできるんですよ!」


 あまりにもお預けが効きすぎたのか、エルフ達は変なテンションになっていた。

 この前に、ガラテアとラキから褒める時はしっかりと褒める様に言われているので、全力で褒める。

 

 美味しい七面鳥と美味しいワインとで、楽しいクリスマスになった。


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