146 食べた分だけ動けば良い
現在、我が家ではなるべく皆が集まって食事をとる様にしている。
家を大きな城塞型に増築というか、新築した際に、食堂を作ったのだ。
百人以上は同時に座れるだけのスペースを確保した。
今までは、個別に食べたり部屋が別れていたりしたので、家族が一緒に食事できるのは良いと思う。
食事は、クリスタルゴーレム達が作ってくれた物を、それぞれが取るビュッフェスタイルだ。
食べ放題だから、バイキングスタイルと言っても良いのだろうか?
その辺の分類は俺には難しい。
席は基本的に自由なのだけれど、俺だけは専用の場所に座ってくれと頼まれる。
異世界でも座る順番の決まりとかがあるらしく、家長が座るべきポジションがあるようだ。
それで、俺の近くの席に座るのは、なにやら女性陣で順番を決めているらしい。
これは男が口出しをしてはいけない事のようなので、あるがままで受け入れる事にする。
基本的には公平になるように、順番を決めているそうだ。
スイーツの残りが少ない時は、皆で争奪戦をするので、かなり遠慮は少ないと思われる。
前に、それなら俺の分を食べなよと譲ろうとしたら、更に争奪戦が激しくなったことがある。
本当に欲しいと思う気持ちが半分に、皆でわいわいとするのが楽しい気持ちが半分って感じにみえた。
楽しい食事というのは大切だ。
そして、ウチの作物は非常に美味しいので、どれだけでも食べてしまう魅力がある。
更に言えば、女性陣にとって、甘い物は別腹である。
いくらでも入る。
しかし、そのカロリーは着実に蓄積されるのだ。
「ガラテアは問題ありまセン」
「妾もじゃの」
2人はまあ、事情が特殊だ。
ゴーレムだし、狐の神だし。
「食べたら動くと良いぞ」
「そうね、汗をかくべきだわ」
「「がんばります」」
異世界人勢が大変だ。
彼女達は、少ないカロリーでも最大限に吸収できるような体になっている。
長年の食料不足の影響もあるだろう。
そして、体型を維持するべく、いやもっと良くするべく、エクササイズに励む。
特に、冬の間は時間があるので、みんなが熱心に運動をしている。
戦闘訓練、マラソン、筋トレ、バランストレーニングなどなど。
けっこう、真剣だけれど和気あいあいとして楽しんでいる様子。
「マスターも一緒にするんだぞ」
俺も付き合わされるが、まあ、楽しいのでヨシ。
50人の若い女性達が運動をするとどうなるか?
当然お腹が空いて、また沢山食べたくなるのだ。
無限ループに突入する。
お豆類も沢山食べてもらって、糖の代謝が良くなるように気を配っているけれど、美味しい物や甘い物を食べる事は幸せな事なのである。
それに際限は無い。
そして、食べて運動すれば身体能力が向上する。
特に、エルフ達は絶好調の様だ。
「放浪していた頃とは大違いですね」
「食料を気にせず動けるというのは、素晴らしいです」
「そうだね、それはマスター殿が望んでいるって事でもあるんじゃないかな」
皆が飢えないようにとは思っているが、特別に運動する事を望んでいるわけでは無いのだが。
日を追うごとに、エルフ達は活動的になってきた。
それは良い事だと思う。
とは言っても、「地球に来た時よりも、これだけスタイルが良くなりました」と、逐一報告したりするのは、しなくて良いと思うんだ。
「女の努力は褒めてくだサイ」
「そうだぞ。たっぷり褒めてあげないと、伸びないんだぞ」
ガラテアとラキに注意された。
特にラキは沢山の家来がいるから、その経験があってのアドバイスだろう。
エルフ達に限らず、皆の事を褒める様に意識する。
まず、その注意をしてくれたガラテアとラキを感謝しつつ褒めた。
「当然の事をしたまでデス。けれどご褒美はたっぷり受け取りマス」
「そうか、マスター。じゃあアタシもご褒美をもらっちゃうぞ」
この場合、お金でご褒美は無しだろう。
物も微妙かもしれない。
なので、身体がご褒美になった。
▽▼▽
「ガラテアはもう足腰が立ちまセン」
「う~、アタシも限界だぞ~」
2人とも、手足を投げ出してぐったりしている。
俺も、流石に2人相手にはスタミナを全部消費した感じだ。
ガラテアとラキに身体でご褒美をねだられた。
全力で肉弾戦をして欲しいと。
コア達と同期した先読みをフルに使った、徒手格闘の組手をして欲しいと頼まれた。
打撃アリでは俺の方が1発喰らったらアウトなので、組技オンリーになる。
先読みで先の先を取りまくり、身体能力の差を崩しまくり、投げたり抑え込んだら、魔力放出でプレッシャーを与える。
そんな感じで組手をした。
ガラテアはコアと同期できても空間の把握程度だ。
先読みや未来予測は、まだできないとの事。
なので、精密な彼女の動きを如何に封殺するかが、勝負所となった。
ラキの方は、フィジカル全開だ。
抑えようとしても、力で跳ね返される。
なので、如何に力の方向を逸らせるかが、勝負所となった。
2人とも、俺との組手は満足できたようだ。
コアのサポート無しで全力となると、大技で大味な攻撃ばかりになるので、俺自身にも良い刺激になった。
「それじゃあ、次は私ね」
「レイナス、体力の限界が近いんだが」
「ハンデよ。がんばって」
とても期待された顔で言われると、断れないな。
やれやれ、ラキから強壮の丸薬を貰って、もう少しがんばるとするか。
はっはっはっ、エルフ達よ、そんなに並んで、覚悟する様に。
そして、最後尾に並ぶ双子達よ。
俺がスタミナ切れになって勝てると思ったかな?
覚悟する様に。
いつもお読みくださりありがとうございます。
ストックが無くなり、ペースが落ちてしまっていますが、なるべく投稿間隔が空かないように頑張りたいと思います。
よろしくお願いします。




