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145 『すまほ』を具現化

 スモモとキラリが変身ヒーローのコスプレをする。

 フリフリの可愛い変身ヒロインの方はどうだと訊いたら、却下された。

 カッコいい方が良いらしい。

 可愛い中にもカッコいい魅力はあると思うが、方向性が違うとか。

 ちょっと残念。

 

 そんな事もありつつ、年末に向けてゆっくりと時間は過ぎる。

 

 ある日、思う所があって、天狐に訊いてみた。

 

「天狐の『すまほ』って結局何なんだ?」


「むふぅ、何じゃ主殿? 女子おなごの秘密をあばきたいのかや? なら見てみるのが良いのじゃ」


 そう言って天狐は『すまほ』を取り出すと、胸の谷間に挟んでこっちへ向けてきた。

 ひょいっと取り上げて、確認してみる。

 

 持った感じはちょっと大きめのスマホと変わらない気がする。

 背面が黒光りしていて、そこが特徴的かな。

 建物で『定礎ていそ』って掘って磨かれた石みたいな光り方だ。

 

「こりゃ、主殿よ。事も無げに取るでない。つまらんでは無いか」


 手元から、シュッと『すまほ』が消えて天狐に回収されてしまった。


「驚いた方が良かったか?」


「そうでは無い。もうちっと、こう、恥じらいを持つのじゃ」


「天狐が言うなよ」


「何じゃ! あるじゃろう? こう、男子おのこ女子おなごに触れがたく思う、少年の様な初心うぶなわびさびがの?」


 『の?』って小首をかしげて言われてもなぁ。

 今更な感じがするけど、ドキドキ感を出せって事か。

 

「じゃあ、やり直すよ」


「うむ、そうするのじゃ」


 天狐はまた『すまほ』を取り出し胸に挟む。

 俺は、それをチラチラっと見て視線を外しながら、見てませんよ気にしてませんよって感じで意識して、恐る恐る『すまほ』へ手を伸ばした。

 

 すると天狐は身をよじって、俺の手を胸へと当てさせようとする。

 すかさず『すまほ』へ軌道修正すると、また天狐は身をよじる。

 どうやら「何処触っているのよスケベ」的な事をしたいらしい。

 

 よし、コア達、集中。

 未来予測を頼む。

 

 天狐が身をよじる動きを先読みし、彼女の身体に触れる事なく『すまほ』を取る事に成功した。

 

「つーまーらーんーのじゃー。主殿はもっと妾をかまうべきなのじゃ」


 天狐は頬を膨らませて、そんな事を言いだした。

 これはちょっと珍しい。

 色々と何かを溜め込んでいるのかも。

 だから、もうちょっと付き合ってあげよう。

 

 『スマホ』を天狐に返す。

 彼女はまた胸へとそれを挟んだ。

 

 さて、ダンジョンの中は自由に転移ができるので、敷地の中はどこへでも瞬時に移動できる。

 天狐も一緒に部屋の壁際へ転移。

 

 天狐を壁に寄りかからせて、俺は手を壁にドンとつく。

 

「おお、そう来るかや?」

 

 そして天狐の顎をクイっと上げる。

 

「むっふぅー。妾はどうされてしまうんじゃろうな?」

 

 指先で顎のラインをなぞり、喉へと指を走らせ、鎖骨、胸骨となぞって『すまほ』を取った。

 

「むぅ、70点じゃ。もっと、こう、大胆にせい」


「恥じらえとか大胆にしろとかどっちだよ」


「両方じゃ」


「無茶言うな」


 ウチでは、日中でも多少のスキンシップは良いけれど、濃いめな物は日が沈んでからと決めている。

 リビングに設置した黒板に、その日と翌日の『日の出』『日の入り』の時間が書き出されるくらいだ。

 まだ昼間なので、いちゃつくのはこれ位にして、改めて『すまほ』について訊いてみる。

 

「神通力は魔力の消費が多いでの。人間どもの概念を利用し、具現化した物なのじゃ。『おーえす』は林檎もからくり人形もどちらも使えるぞえ」


「かなり高性能なんだな。魔法が使えれば誰でも使える物なのか?」


ことわりを修められればの。高い魔力も必要じゃ」


 可能性があるとの事で、天狐に教えてもらい他の皆にも試してもらった。

 

「うーん、魔力の制御に無駄が出るわね。余計な魔力が垂れ流しになってしまうわ」


 レイナスは『すまほ』の具現化に成功した様だ。

 ただ、魔力の消費が激しいみたいで、常用は難しいとの分析だ。

 

「2台持ちも可能デス」


 ガラテアは、コア達と同期する事で繊細な魔力制御を実現したみたいだ。

 1台を俺に渡してくる。

 

 すると、ブルっと震えた。

 メッセージが届いたみたいだ。


『壁ドンの取り扱いはデリケートな問題です』


 ガラテアからだった。

 うん、『五月蠅いぞ、ドン』の方もあるから気を付けるようにしよう。


「「通話とショートメッセージは可能なようです」」


 アミリアとマミリアは、アプリを使うまでは再現できなかったみたいだ。

 それでも自在に使えれば便利だと思う。

 

「文字だけしか送れないみたいです」


「まって、数秒なら音声も送れるみたいよ」


「でも、一方通行みたいだね」


 エルフ達は、手の平サイズの文字を送れる物を具現化していた。

 双方向の同時通話はできないみたいだけれど、数秒なら音声メッセージもやりとりできるみたいだ。

 

 ポケベルと無線機がハイブリットになった感じだろうか?

 

「う~ん、煙しか出ないぞ」


 ラキは、魔力量は豊富だけれど、魔法が苦手だ。

 どうやら、狼煙を具現化したみたいだ。

 煙の色は、自由に変えられるらしい。

 

 スモモとキラリがラキに頼んで、色煙を出してもらう。

 そして、この前に作ってもらった変身ベルトを使って、かっこよくポーズを決めていた。

 

 興味本位でしてもらったけれど、様々な結果になった。

 因みに、俺は無尽蔵とも言える魔力と、コア達と同期する事で、ハイスペックな『すまほ』を具現化できた。

 

「うぅ、べんちまーくで倍の差をつけられたのじゃ」


「まあ、俺1人の力じゃないから。個人だと天狐のが一番高性能なんだろ?」


「むぅ、それでも悔しいのじゃ。どれ、貸してたもれ。……早う、するのじゃ」


 普通に手渡そうとしたら、天狐は受け取らない。

 えっと、天狐が胸に挟んだみたいな事を、俺にもやれと?

 どうやって?

 

 そう頭をひねっていたら、ガラテアからメッセージが届く。

 ……そんな感じで良いのか?

 

 俺はガラテアのアドバイス通りに、スーツに着替えてネクタイを締めて、ジャケットの内ポケットに『すまほ』を入れた。

 

 天狐は、「ほほぅ、わかっておるのじゃ」と鼻息を荒めにして喜んでいたから、良いか。


 その後、他の皆にも同じ事をするはめになったのだった。

 

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