141 滑る床でローラーコースター
キャンプ場のアクティビティを考えてみる。
今の所、全高3m程のミニバオバブでの木登りとロープでブラブラ遊びがある。
それと、浅い滝でのチャプチャプ遊び程度か。
滝の方はアクティビティと言えるのかどうか、ちょっと保留。
それ以外は、お客さん自身で楽しんでもらいたいってスタンスだった。
けれど、来年度からは、もうちょっと充実させてゆきたい。
大人も子供も楽しめて、安全で簡単で楽しい物はあるだろうか?
基本的には、子供が楽しめる物を全力で大規模化した物は、大人も楽しめると思っている。
『駆けっこが楽しい』はマラソン大会になるし、『自転車が楽しい』はサイクルスポーツとして様々な物がある。
それではまず、童心に帰って、遊んでみようと思う。
かくれんぼをやってみた。
「マスターが鬼だとダメよね?」
そうだ、ダンジョン全体を手に取る様にわかるから、すぐに見つけてしまう。
なので、誰が俺を1番早く見つけるかってルールになった。
「見つけまシタ」
あ、ガラテアもコアと統合しているから、ダンジョン内の事がわかるのか。
じゃあ、ガラテアと一緒に隠れて――
「ずるいぞ! ずっと2人きりとか。あと鬼人のアタシはどうしたら良いか混乱するぞ」
「それじゃったら、鬼なぞ決めずに交代でしたら良いじゃろ」
かくれんぼというより、隠れて何かをする遊びになった。
そうなると、秘密基地として考えたら良いかもしれない。
それで考えてみた。
「マスター殿、食料の備蓄はどれ程必要でしょうか?」
「相手の進行ルートは早めに絞っておきたいですね」
「罠でもって、どれだけ遅延行動が有効かも考えたいですね」
エルフ達は、本格的な基地作りと考え始めた。
そういえば、男子は秘密基地に武器を置くよな。
あと、草を縛って足を引っかける罠を作ったり。
ただ、そういう攻めな感じは無しで。
「遊びだからな」
「はい、遊びの中から、実践を学ぶのですね」
「そうなると、あえて弱い部分を作った方が良いのかな」
「マスター殿は、我々の弱さを気にかけてくれているんじゃないかな?
生き残るには逃げ方の練習も必要だよね」
なるほど、そうかって顔つきで、エルフ達は純粋な瞳を俺に向けてきた。
誤解を解いて、秘密基地とは何かを話す。
エルフ達は長い間放浪生活だったから、俺が思う秘密基地めいた物を作るのは日常だったみたいだ。
「マスター殿は、罠を使って施設の設備を作ってもいますし、罠で何か遊べないでしょうか?」
「アイススケートって見たんだけど、ああいう滑るのは楽しそう」
「スキーっていうのも面白そうだったね」
成る程、滑る系の罠で、何かアクティビティを作るのは楽しそうだ。
ウインタースポーツには多いので、そのヒントを探る。
とりあえず、滑る床を設置したら、スモモとキラリはフィギュアスケートの真似をし始めた。
はは、上手いな。
6回転ジャンプ3捻りか。
競技が違ってきちゃうぞ。
ただ、これはこのままだと、転んで骨折する人は出るよな。
「マスター、これだぞ。ボブスレーだ。これが良いぞ」
そういえば、ラキはウサギ達の作ったウォータースライダーを堪能したんだよな。
滑る床を、長~い滑り台状にして、山の斜面を滑り降りるのは良いかもしれない。
まずは、全長200m程でやってみた。
段ボールに温泉セメントを塗って、そりを作る。
乗ってみると、勢いが良すぎて、カタパルトになった。
危うく地面に激突しそうになるも、転移でなんとか難を逃れる。
ラキはエルフ達と飛距離を競っている。
空中で姿勢制御ができるのか。
でも、そういう遊びじゃ無いんだが……。
滑る床の滑り台を作っている時に気が付いた。
滑る方向を設定できる。
すると、どうなるか。
平らな場所は自動で進むし、上りも可能。
スピードに気を付けたら、安全なローラーコースターになる。
良いんじゃないか?
キャンプ施設がある周りを、ぐるっと囲む様にして、コースを作る。
上りはゆっくりと、下りはけっこう迫力があった。
安全の為、ダンジョンオブジェクトの檻を活用して、柵で全体を囲う。
これなら、万が一にも外に飛び出る事は無いし、誰かが途中で入って来る事も無いだろう。
良い感じにできた。
始めは短い距離の物を運用して、徐々に長い距離の物を開発してゆく。
そうすれば、お客さんの飽きもこないと思う。
最終的には、山の敷地全体を、ぐるっと1日かけて回るような物も作りたいな。
春の山桜の時期とか、秋の紅葉の時期とか、凄く人気になりそうだ。
後日、滑るコースターにスライム達が列を作っていた。
皆、順番を守って遊んで、偉いな。
え? 違う? どういう事だ?
乗り降りをする場所を見た。
その場所だけは、危ないので滑らないようになっている。
そこで、中央に大きく丸印が描かれている。
そして、滑るコースターをトレイに乗って一周してきたスライムが、丸の中心よりで止まった。
また、別のスライムも一周してきて、先のスライムを押し出す。
そしてまた次が……と、より丸の近い位置で止まれるように競っていた。
それも、2つのチームに分かれているみたいだった。
これは、カーリングか?
そうか、真似して遊んでいるのか。
じゃあ、どっちが勝つか、観戦させてもらうぞ。
その日は、とても白熱したゲームになった。




