139 家の改築
レイナスとウサギ達が、改まって俺に話があるそうだ。
どうした?
「マスター、落ち着いて聞いてちょうだい。子ウサギ達にも、そろそろパートナーが必要だわ。異世界に旅立つ時期になったの」
「えっと、それはつまり、ウチを出てゆくって事か?」
ウサギ達を見ると、力強く頷いている。
……そう、……なのか。
たしかに、スモモとキラリ以外で、新しくペットは現れていない。
そして、兄弟姉妹で番になるのもまずいだろう。
この前、皆で異世界に行こうとした時に、外で他のウサギの気配を感じたのだとか。
「もう戻って来ないってわけじゃ無いわ。スモモとキラリはこのまま一緒なのだし、旅立ちを祝ってあげましょう」
「えっと、それじゃあ、クリスタルゴーレムの何体かと一緒に行動してもらうか。外は危ないかもしれないからな」
「それはダメよ。彼等の自立を認めてあげましょう」
そ、そうだな。
保護者同伴でパートナー探しは、無しだよな。
ウサヒト、ウサジ、ウサミ、ウサヨ、ウサコ、こっちに来てくれ。
皆、大きくなって、つやつやフサフサだな。
ずっとこうして撫でていたいけど、皆もパートナーは欲しいもんな。
怪我とか病気に気を付けてくれ。
そうして、レイナスにウサギ達用の魔法の鞄を用意してもらって、旅立ちを見送った。
彼等はもう、子ウサギでは無いのだ。
魔法の鞄は、リュック状でハーネスをスナップボタンでパッチンと留めるタイプだ。
これならウサギ達でも扱える。
ニンジンと、もしもの為の回復薬と、ラキ特製の丸薬を沢山持たせたから、きっと無事に帰ってきてくれる。
ウサギが巣立つと、家の中が広く感じるな。
現在の家は、畑の山と管理棟のある場所との中間の辺りにある。
今まで地上階は3LDKで、地下をこっそり作って居住スペースを広くしていたけど、これからは地上階を大きくするつもりだ。
ウサギ達がパートナーを見つけて帰って来るんだから、家の方も広くして準備したい。
今現在、家では53人が生活している。
俺と、レイナス、ガラテア、天狐、ラキ、アミリアとマミリア、エルフ達46人の合計53人。
その全員分の部屋を用意するとなると、間取りを決めるのが大変だな。
「家を改築しようと思うんだけど、部屋割りの希望はあるか?」
「マスターの寝室はもっと広くするべきね」
レイナスの発言に、皆がうんうんと頷く。
「それだけで良いと思うぞ」
ラキはおそらく、体育館みたいな物を想像しているな。
広い空間でごろ寝する感じで。
「いや、皆は個室とか欲しいだろ?」
そう言ってみても、きょとんとされる。
特にエルフ達は、全く理解が及ばないといった顔をしていた。
「マスター殿、我々は夜の見張りを交代でするのが普通でしたので、1人で寝るのは落ち着きません」
そういえば、エルフ達は地下の部屋でも5~6人グループで寝ていた。
放浪生活が長かったから、そういう習い性になっているのか。
「それじゃ、エルフ達は少人数部屋のが良いのか」
「そうしていたただけると、嬉しいです。できれば10人は寝られる広さが欲しいです」
そうか、それは考慮しよう。
「妾は服を着ずとも外で昼寝がしたいのじゃ。工夫してたもれ」
いや、どういう工夫だよ。
「ああ、そうだぞ。アタシも露天風呂に入りたいって思ったぞ。ウサギ達が羨ましかったんだ」
「そうね、やっぱり夏でも露天風呂に入れると嬉しいわね」
できれば俺もそうしたい。
あまりオープンになり過ぎずに、閉塞感も覚えないように作る方法はあるだろうか?
フィールド型のダンジョンだと、地下構造を作っても疑似太陽や疑似的な空を設置はできない。
洞窟型のダンジョンだと、各フロアにとか疑似太陽や疑似空とかを作れるが、何か物足りない。
やはり、自然の空の下で入る温泉は別物だと思う。
この問題を解決するべく、何かヒントはないか、建築家の都築さんに連絡をする。
そうしたら、いくつか資料を送って貰った。
それを参考に家を改築する。
まず、直線が50mの流れる温泉プールを作る
その並びに、温度の違う温泉を3つ作る。
丁度良い温度の39℃と、熱めの44℃と、冷たい20℃にした。
これらの3つは1辺が10m程度で作る。
この露天風呂の周りにデッキを作り、昼寝をしたり食事をとったりできるようにする。
更に、これら全体を囲む様に、居住用の建物を作る。
上空から見ると、砦とその中庭といった感じだ。
外側からは中庭が見えない様になっている。
コアのサポートをフルに使って、周囲の高所からは覗けない様に気を配った。
どんな望遠カメラを使っても、大丈夫になっている。
居住用の建物は、広いというより長いといった感じで、個室から10人前後が生活するのに適した部屋等を用意できる。
各部屋には、キャットウォークならぬスライムウォークを作り、自由に出入りをして掃除をしてもらえる様にした。
廊下が直線的で長い作りになっているが、スライム達がポヨポヨと競争したりしているのを見ると、和む。
なかなか良い感じじゃないだろうか。
パートナーを探しに出たウサギ達が帰ってきて子供が生まれたら、毎日運動会になりそうだな。
そう考えたら寂しさが薄れて、今からその時が楽しくなった。




