132 ハロウィン
「ハロウィンデス」
「ハロウィンだなぁ」
ガラテアが大きなカボチャを持って、俺の膝の上に座ってきた。
10月の最終日となれば、ハロウィンだ。
それをやりたいという事だろう。
「衣装は作ったのか?」
「沢山ありマス」
「皆の分も?」
コクンと頷くガラテア。
それだったら、コスプレベントの日として開催するか。
仮装は全面的にオーケーで、飲酒はテントサイトだけってルールを決めて告知を出す。
以前に、ドールの撮影会を主催したお客さんにも連絡を入れた。
人形仲間にはカメラ仲間が居て、カメラ仲間にはコス仲間が増えると聞いたので、広めてくれるだろう。
ガラテアが用意した衣装は、オーソドックスな物が多い。
魔女風、ゴースト風、悪魔風などなど。
それらを皆に割り当てて、俺はカボチャを被ったジャックオランタンの様だ。
ただ、気になったのが、手に持つ小道具が無い。
魔女の箒とか、ゴーストのランタンとか、悪魔のトライデントとか、カボチャの鎌とか。
ガラテアは、細かい所にも気を配る事があるから、あえて用意していないって事だよな。
「どうしてなんだ?」
そう訊ねたら、ガラテアはスライムを抱えた。
そして、また俺の膝に座る。
なるほど、スライムと一緒に皆でイベントをしたかったんだな。
その意図が分かって、彼女の頭を撫でた。
スライムは、ウチにとって大切な家族だけれど、お客さんの前には出ない様に、常に隠れるか待避所へ行ってもらっている。
遊び好きな彼等からすると、外が賑やかなのにひっそりとする時間が長いのは、辛い事があるかもしれない。
そして、普段は表に出られないのなら、特別に大丈夫な空間を演出したら良い。
その為の、ハロウィンか。
モンスターのコスプレをして、スライムを抱えて歩くのは、全然自然な事だよな。
ゴリラカートを作って、そこに乗ってもらって曳き歩くのも良い。
よし、それだったら、クリスタルゴーレムも出そう。
ヨーロッパのカーニバルだと、竹馬を足に着けて巨人の行列をする事もある。
それを真似していると言い張れば、いけると思う。
こういう時は、恐る恐るしないで、堂々とした方が良いのだと思う。
10月最終の日曜日。
ハロウィンイベントの日だ。
幸いにも空は秋晴れで、寒く無い程度に身体を温めてくれる。
空気が乾燥していた、仮装もしやすい陽気だ。
仮装してくれるお客さんも、沢山来てくれた。
撮影会を主催してくれたお客さんの口コミ力のおかげだ。
「いや~、マスターさん、凄いですね。それと、トリックオアトリート!」
工夫を凝らした衣装を着けたドールを抱えて、お客さんが挨拶にみえた。
カボチャ頭の俺にその合言葉を言えば、大人も子供もお菓子がもらえる。
カボチャのクッキーやマフィン、スコーンにフリーズドライスナックと、カボチャづくしで無制限に配っている。
魔法の鞄をフル活用だ。
ゴリラカートの様にした木箱を曳きながら、交代でスライムを乗せて敷地内を練り歩いている。
「わぁ、写真良いですか?」
「どうぞ~」
「ありがとうございます。それじゃ、トリックオアトリート!」
今回、写真撮影をどうしようかと思ったけど、商業利用しなければオーケーにした。
スライムもゴーレムも自然に溶け込んでいるから、疑問に思う人は、まず合成や加工を疑うはずだ。
ただ、ウチの家族は美人さん揃いなので、撮影の時は一言声をかけてからを徹底してもらう。
盗撮は、厳禁です。
ガタゴトとカートが揺れ動くと、フルフルとスライム達はご機嫌になる。
皆と遊べて楽しいか。
うんうん、良かった。
おっと、ゴーレム達、リアカーのデコレーションが雰囲気出ているな。
うん、俺を乗せて練り歩きたいのか。
よし、良いぞ。
スライム達も一緒だ。
危なくないように、ゆっくり頼む。
コア達も紐を付けてバルーンみたいにフヨフヨと浮いている。
ナイトメアなアリスのコスプレをしたガラテアが、順番に持ち歩いているようだ。
ウサギ達は、包丁をイメージしたアクセサリーを首から下げている。
ガラテアと一緒に、撮影の人気者になっていた。
この日は皆で盛大に楽しめた。
これは、恒例行事にしても良いな。
スライム達もクリスタルゴーレム達も凄く喜んでいたから、俺も嬉しかった1日だった。




