130 エルフ達の服を買う
エルフ達が家族になる。
ウチで栽培している特大松茸は、エルフにとっての森の秘宝と言えて、遠く懐かしい故郷を思い浮かべる物だった。
それが育つ土地で生活したいと言うので、受け入れたのだ。
さて、異世界のエルフは、どういった種族なのか。
力は強いが鬼人ほどじゃ無い。
魔法は巧だが魔人ほど上手く無い。
細工は得意だがドワーフほどじゃ無い。
身のこなしは軽いが獣人ほど素早く無い。
そんな器用貧乏な種族の様だ。
そして、彼女達の代表イーズは、女王と名乗ったが、それはハッタリだったみたいだ。
女しか生まれなくなった事から、安住の土地を求めて分かれた年若いグループ団の代表という扱いらしい。
他種族と交渉するには、女王という事にした方が通りが良さそうなので、そう名乗ったという。
彼女達の外見的特徴は、笹の葉の様な大きな耳だ。
それ以外は、地球人と変わりは見えない。
非常に美人ぞろいではあるけれど。
なので、彼女達もウチで働いてもらう事にした。
そうなると、日用品が大量に必要になる。
特に、衣類は直ぐに必要だろう。
そういうわけで、買い出しに行く事になった。
人数が多いから、サイズとか気にしないでまとめて買ってしまえば良いと思った。
けれど、日本の暮らしを知ってもらう為にも、回数を分けて、エルフ全員に買い出しを経験してもらう事にする。
俺は自動車免許を中型まで持っている。
家族が増えたので、冬季に遊びに行けるようにと、15人乗りのマイクロバスを買ってあるので、この機会に活用する事にした。
エルフを4つのグループに分けて、代表のイーズは毎回同行する感じにする。
「マスター、『ら・しーむ』の洗礼かしら?」
「ああ、まさにうってつけだと思う」
出入り口の全面にガラスを使った明るい店舗。
大量生産された、様々な衣類に寝具。
日本の風俗を知るのにうってつけだろう。
女性の買い物なので、レイナスにも同行してもらう。
エルフ達は、まず自動車に驚いていた。
生贄の檻かと怯えた者もいたけど、宥めて乗せる。
山道を進む時は緊張でいっぱいだった彼女達も、なだらかな道に出たらリラックスできた様だ。
「マスター殿。このマイクロバスというのは快適ですね。私も操縦できるでしょうか?」
「あー、免許が取れないと外ではダメだな。機会があったら、水晶のダンジョンサイトに練習場を作ってみるよ」
そういうと、イーズは嬉しそうにほほ笑む。
よく食べて、良く寝たからか、今日は朗らかな様子だ。
ら・しーむに到着すると、エルフ達は店舗を見て驚き、そして何故か俺を崇め出す。
「マスターが作ったとか、勘違いしているみたいよ」
「流石はマスター殿です。この様な立派な神殿をお持ちとは」
どんどん危険な方向へ勘違いしそうなので、しっかりと訂正する。
あと、無暗に外で過剰に崇めないようにとも厳重注意。
「世を忍ぶ、仮の姿ですね。わかります」
わかって無いけど、納得はしてくれたみたいだ。
さて、皆で連れ立って入店すると、非常に目立つ。
エルフ達には、レイナスやラキ達の服で着れる物を貸しているが、素材が美人ぞろいだ。
レイナスも含めて、13人の美女の集団がやって来るのは、ある種異様といえるだろう。
「い、いらっしゃいませ!」
店員さんは、一瞬驚きで言葉がつまるも、その動揺は長く見せなかった。
流石はプロである。
「大量購入になると思いますけど、大丈夫ですか?」
「はい、平気ですよ。ありがとうございます」
言質は取った。
衣類を1からそろえるとなると、かなりの量になる。
ある程度はエルフ達で交換しながらシェアしてくれるだろうが、インナーはそうもいかないだろう。
また、靴だって個人の足のクセが出るから、シェアは厳しい。
上から下まで、中も外も全部となったら、1人頭数万円分は必要になる。
更に言えば、布団類も必要だ。
日中は暑い日もあるが、夜になると急に冷える日が増えている。
油断はできないだろう。
会計は、3つあるレジの2つを占領する事になる。
時期的に込み合うセール期間中じゃなくて良かった。
今回の分の金額は、40万円を超えた程度となり、店員さんにも1仕事終えた安堵がみられた。
「本日は誠にありがとうございました」
「ああ、いえ、こちらこそ、ありがとうございます。あと30人分以上必要なので、もう3回来ます。よろしくお願いします。大量購入ですから」
「ひゃい!?」
店員さんの声が裏返った。
その後、キャンプ場との往復をしている間に、他のら・しーむから在庫を運んできてくれたらしい。
エルフ達全員に服が行き渡ってよかった。
ブックマークの登録件数が5000件を超えました。
応援ありがとうございます!
今後ともよろしくお願いいたします。




