128 怪しい集団の正体は
水晶のダンジョンサイトへマントを纏ってフードを深くかぶった怪しい集団が侵入して来た。
侮られない様に、魔力を通常の100倍放出しながら対応する事にする。
レイナスとラキも付いて来るそうだ。
「当然ね」
「ワクワクするぞ」
アミリアとマミリアの双子は魔力値は高いけれど、あまり戦闘力が高くないので、お留守番。
「「力が及ばず申し訳ありません」」
そして、ガラテアは――
「抹殺しマス!」
俺でもわかる程の怒りを放っていた。
テーブルとか食器棚とかが、カタカタ震える程だ。
まって、まだ穏便に対応する路線だからね。
「マスターにここまでの苦しみを与える者は抹殺するべきデス」
いや、面倒ごとだけど、苦しみってほどじゃ……って、魔力を放出して纏うのに、イメージしたピンチの場面の事か?
そう言えば、ガラテアはコアを取り込んでいるから、俺とイメージの共有ができるんだよな。
それを感じ取っちゃったかぁ。
「ガラテア、それはあくまでイメージだ。実際にそこまで苦しめられていない」
「しかしそうする必要を相手はもたらしまシタ」
「そうだとしても、落ち着け。ほら、今はコア達のサポートで感覚を掴んだから、ピンチをイメージしなくても魔力を纏えるぞ。だから、もう大丈夫だ」
それでも、ガラテアの怒りが収まりそうにない。
ここは、逆に幸せな感じをイメージしてみようか。
ガラテアが好きな物は、お茶と裁縫とカブトムシ。
刺繍でカブトムシ柄のコースターを作るのは、きっと幸せな時間で、穏やかな雰囲気に包まれて――
「落ち着きまシタ」
良かった。
それで、さっきからドアの影に隠れている天狐は付いて来るんだろうか?
「わ、妾は、今日もまだ何もしていないのじゃ。叱らんでたもれ」
俺とガラテアの放出する魔力に中てられて、怯えていた。
な、なるほど、魔力を纏うと、こういう効果があるのか。
天狐はお留守番だな。
後で慰めておこう。
そして、ウサギ達。
やる気満々だね。
むやみに突撃とかダメだよ?
我慢してくれる?
できるか、ヨシ。
ああ、コズミンがフォローしてくれるのか。
じゃあ、お願いするよ。
ドタバタしたけれど、双子と天狐が留守番で、後は皆で怪しい集団の対応に向かった。
▽▼▽
そこでは大勢の人物が気絶していた。
魔力を纏う程度なら、威圧感があるだけだと思ったんだ。
まさか、それが気絶させる程のプレッシャーになるとは思わなかった。
俺達は、集団のちょと離れた所に転移した。
すると、即座に、集団の大勢が気絶しだす。
その中でも、何人かは気丈に意識を保っていたけれど、俺達が距離を縮める毎に、1人また1人と倒れていった。
「っくぅ、もはや、これまで……」
こっちは何もしていないのに、最後の1人も気絶する。
「えっと、誰か魔法とか眠りの毒とか使った?」
……誰も使って無いか。
「ちょっと弱すぎだぞ」
「拍子抜けね」
「おもてなしの必要がありませんでシタ」
えっと、倒れているのは全部で46人か。
そのまま転がしておくわけにもいかないし、新しく部屋を作って隔離しておこう。
風邪をひかない程度の室温で、床を足の延ばせるバスタブ型に掘って、温泉を流し込んで、そこに並べて寝かせる様に全員を転移っと。
服やフードは脱がせないで良いだろう。
どうせ、後で洗う必要があるんだから。
コズミン、汚水処理のできるスライムを呼んで、ここを掃除しちゃおう。
さて、夜も遅いから、俺達も帰って寝ようか。
そして、次の日。
10時位に集団の何人かが目覚め、周りの者を起こし始める。
全員気が付いた様なので、皆で隔離部屋へ行って話を聞いてみる事にした。
コア達に相手集団の状態をサーチしてもらって、気絶しない範囲で魔力を纏う。
「それでは、改めまして。天樹の森キャンプ場・水晶のダンジョンサイトへようこそ。今回はどんなご用件ですか?」
「ひぃ! う、噂を聞いた。魔物が出ないダンジョンがあると。だったら、住めるかと考えてここまで来た」
実入りが無いダンジョンって事で、そう考えたのか。
住めない事は無いけど、周りの街からは遠いみたいだから、不便だと思うけどな。
「あんた達は何者なのかな?」
「人に訊ねるなら、まず自分が名乗るのが筋ではないか?」
「人の家にやってきたら、まず自分が誰かを明らかにする方が筋だよね?」
「うぅっ、わかった、もっともだ。我々が悪かった。怒りを鎮めてくれ」
何人か気絶しちゃったので、魔力の放出は抑える。
すると、温泉でビショビショになったマントとフードを脱いで、彼女は自己紹介をした。
「神聖エルフ大国が女王、イーズ・エルフィーズだ」
彼女以外の者も、マントとフードを外す。
全員エルフの女性だった。




