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114 フリーズドライに挑戦

「「お話がございます」」


 魔人帝国トラキスの連絡要員である、アミリアとマミリアが話しかけて来る。

 

 彼女達は、身長が160cm無い程度で、メノウの様な深い緑色の髪をミディアムボブにした美人双子だ。

 2人は息がピッタリで、喋る言葉はよくハモっている。

 

「おやつが足りなかったか?」


「「そちらは増量を希望いたしますが、例の件です」」


 たまに、おやつの量で喧嘩するので、たっぷり食べさせているが、甘い物は別腹でもっと欲しいようだな。

 今日は、みかんの寒天ゼリーを食べさせつつ話を聞くと、魔人帝国との交易についてだった。

 

 ウチの農作物をそのまま異世界に持ってゆくと、とんでもない騒動になりかねないから調整が必要だ、となった。

 それで、どんな方法が良いかと意見の交換をしあっている。

 

 今回双子が言うには、魔法の鞄に入れても時間と共に傷むので、長期保存できる様にはならないか? との話だった。

 リレー形式で輸送のテストをしたが、その結果はかんばしく無かった様だ。

 

 ダンジョンに近い者には新鮮な物が手に入り、遠い者には傷んだ物しか手に入らない。

 これは騒動案件だな。

 

 日持ちさせるには、ガンガンに塩や砂糖に漬けるか、カリカリに焼くか、カサカサに乾燥させるか。

 そんな所だろうか。

 

 冷凍輸送もできるが、その人手は肉類を輸送するのに使われているので、農作物に回す余裕は無いらしい。

 また、冷気レンガを使って冷凍輸送したとしたら、ゆっくりとだが肉類を担当している人達の職を奪う事になるだろう。

 これは避けたい。

 

 それならどうするか?

 今回は、チャレンジしたい事があったので、それをやってみる事にした。

 

 まず初めに、料理を用意する。

 

「アミリアとマミリアは、晩御飯は何が良い?」


「「……うどんです」」


 うどんを作る事になった。

 暑い中で熱いうどんをすするのも良いものだ。

 調理は、水晶のダンジョンにて行う。

 

 クリスタルゴーレムを転移させ、麺を打つ。

 重量に物を言わせた、コシのある麺になった。

 

 つゆは、野菜をたっぷり煮込んだ物を、給食用の大鍋で作る。

 これから大量に調理する機会があるだろうと、他にも沢山業務用の調理器具を揃えている。

 

 人間が使うと非常に巨大な鍋も、身長が3mを超えるクリスタルゴーレムなら、小鍋に見えた。

 

 こうして今すぐ食べる分はできたが、今回はこれから先がある。

 

 ダンジョン内に、マイナス40℃程の極寒の部屋を用意する。

 そこへ器によそったうどんを入れ、冷凍する。

 

 完全に凍ったら、命を奪う系の『減圧』トラップで、気圧を0よりも低くする。

 そうして凍った水分を昇華させれば、フリーズドライの完成だ。

 

 さて、本当に成功しているのか、さっそくお湯を注いで試してみよう。

 

 香りは風味ヨシ。

 麺や具はしっかりと味があり食感もヨシ。

 スープはコクがあってヨシ。

 

 うん、美味い。

 

「アミリアとマミリアはどうだ?」


「「ツルツルしこしこです」」


 はふはふ言いながら、同じタイミングで麺をすする双子。

 

「「先日の物とそん色の無い味でした」」


 それは良かった。

 

 フリーズドライだったら、色んな物でできるし、ウチのキャンプ場の方でも売りやすい。

 定番の汁物でも良いし、変わり種も面白そうだ。

 

 例えば、ブドウのフリーズドライ。

 

「「サクっとしていて、フワっとしているのに、味が濃いです!」」


 双子も気に入った様だ。

 

「その大粒の方は私が食べようとした物ですよ、マミリア」


「アミリアの方が既に多く食べています。これは私が食べるのが当然です」


 ああ、喧嘩を始めてしまった。

 

「喧嘩をする悪い双子には、ケーキのフリーズドライが無くなるぞ」


 そう言って、イチゴショートのフリーズドライを取り出すと、双子は言い合いを止めてキラキラとした瞳を俺に向けてきたのだった。



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